私は叶わない恋をしました。
私には好きな人がいます。
でも、この恋は一生叶うことはありません。
だって、同性の先輩後輩の恋なんて気持ちが悪くて反吐がでそうでしょ?
私が堕ちたのは多分、あの時だと思う。
気持ちが不安定になり、学校にいけなくなった頃、誰とも連絡が取れなかった私に会いに来て話を聞いてくれて、話をしてくれた。
誰も伸ばしてくれなかった手がいきなり目の前に現れた感覚だった。
先輩はキラキラしてて、みんなに慕われてて、でも体が弱くて、特徴を挙げればきりがない程憧れる。小説の主人公のような人だった。
「大丈夫?」
「はい」
「今日ねぇ____」
「そうですか」
「こんにちは!」
「こんにちは」
「これ、楽譜!元気になったらまた部活戻ってきてね」
「ッ頑張ります」
「…私が来るのは嫌?」
「ぇ?」
そんな人が私に声をかけてくれる、気にかけてくれるだけで嬉しいのに、口が言うことを聞かなくて、自分の意思が消え失せたように口が独りでにパクパクと言葉を並べる。
「いや、じゃない」
そう、嫌じゃない。嬉しいの。大好きな人に毎日会えて。気にかけてくれて。だから伝えて。嬉しいって。ありがとうって。
「別に嫌じゃない。」
そんな同じことしか言えない私を見て、微笑みながら「そっか」って答えてくれた先輩が大好き。
憧れやただの感謝じゃない。勘違いなんかじゃ言い訳ができないくらいに先輩が好き。
でもきっと、優しい先輩でも思うよね。『気持ち悪い』って。『勘違いだ』って。笑っちゃうよね。
暫く日が立ち、先輩は3年生私は2年生になった。
学校にもある程度行けるようになり、先輩にも上手く話すことができた。
「いつもの菜乃葉ちゃんだね」
「お陰様で元通りです」
「元気になってよかった」
「先輩のおかげです」
「あの時は酷いこと言ってごめんなさい。」
「うふふ、気にしなくていいよ」
あの笑顔を崩してしまうのはあまりにも勿体ない。
私のせいで、全てが崩れるのは見たくない。
「3年生は最後のコンクール、2年生は最大限3年生をフォローするように。」
コンクールを近くしてピリついていた私たちを宥め、雰囲気を明るく変えてくれた先輩はやっぱり好き。でもこれを人に吐き出すことで周りから嫌われるのは私だけじゃなく、先輩も。
だからこの恋は、この愛はどこにも渡せないまま、私の心の中で沈んでいく。
コンクール後先輩達からのコメントを頂く。皆、思い出を並べていく中、1人、周りへの感謝をひたすらに語る人がいた。優愛先輩。私が大好きな、愛している先輩。コップから溢れる気持ちは止められない。
「先輩、この後時間ありますか?」
「うん、あるよ」
「先輩、私優愛先輩のことが好きです、」
「私も 」
「違う、先輩とは違う意味で」
「、それは」
「愛してます。恋愛の意味で」
「勘違いだよ」
「勘違いじゃ、ありません」
「絶対に?」
「はい」
「その愛はきっと私より恵むべき人がいる」
「私の好きな人は優愛先輩です。どんな先輩でも、私はこの愛は先輩に恵みたい」
先輩は優しいから。きっと言わないけど思ってる。気持ち悪いとかなんでとか辞めてよとか。こんなところまでひっくるめて愛を恵みたい。先輩からの愛を恵んでほしい。
「私は_____」
叶わない恋はこれでおしまい
Fin