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アヒル
青い薬をのむ◁
月が……
月が満ちている……
「月がきれいだ…」
青年――ナツキ・スバルがぽつりと呟いた。そんな、ひどく間の抜けた感想しか出てこなかった。
彼がその場所に迷い込んだのは、いつの、どこの、どのような絶望の果てだったか、もう判然としない。
ただ、ひとつだけ確かなのは、彼の記憶が『夜のコンビニの帰り道』を最後に、ぷっつりと途切れているということだ。
久々に家から出て、コンビニで夜食のカップラーメンを買って帰る途中だった。自転車の気分じゃなかったので徒歩で。
そしてその途中、ふと夜空を見上げて『外、けっこう寒いな』と思ったことまで覚えている。
それなのにーー気づいたときには、もう既に、彼はこの『店』のボックスシートに座っていた。
手元には、持っていたはずのコンビニの白いビニール袋が無い。窓の向こうを見遣ると、そこには彼の実家がある住宅街の景色がなかった。ただ、どこまでも、どこまでも広がる 真っ黒な闇。星ひとつない暗闇の海が、ガラスの向こう側を完全に閉ざし、世界がそこで終わりを告げていることを示していた。
そんな果てのない闇の中、ただ一つ。満月だけがぽつりと浮かんでいる。
静かに輝く白い光が、かすかに辺りを照らし出し、まるで闇に取り残された唯一の灯火のようだった。
「なんだここ……」
辺りを見渡す。
テーブルの上には、メニュー表らしきものが置かれていた。
だが、それはただの板だった。表紙も文字もなく、つるりとした感触だけが指先に伝わる。
ファミレスにしては、なんとも奇妙だ。
いや、そもそも。
窓の外に広がるあの闇といい、ぽつりと浮かぶ満月といい、ここは本当にファミレスなのだろうか。
そんな疑問が、今さらのように頭をもたげてきた。
これ以上考えていても、答えが出る気はしない。
とりあえず、店員を探すことにした。
最初に目についたのは、自分の席の近くに設置されたドリンクバーだった。
「……ドリンクバーか…って、なんだこれ」
そこには見たことも聞いたこともない名前のドリンクが並んでいる。
『月の涙』『ペンギンソーダ』
『黒い酒』『ガラスシロップ』などなど。
「酒って…こんなん未成年飲酒多発待ったなしじゃねぇか……」
と、未成年飲酒の容認派のドリンクバーを眺めていると、
「あら、新しい人?」
不意に、後ろから声がした。
思わず肩を跳ねさせ、慌てて振り返る。
そこには、一人の美少女が立っていた。
月明かりを思わせる銀色の髪が、静かに揺れて。
コメント
1件
あ〜〜〜!!!これRe:ゼロの二次創作だよね!?!?😭💕 スバルが異世界じゃなくて謎のファミレスに迷い込んじゃうのめっちゃ新鮮でドキドキした〜〜!!「月の涙」とか「ペンギンソーダ」とかメニュー名が既に不穏すぎて怖いのに銀髪の女の子が出てきた瞬間のゾクゾク感やばかった…続きが気になりすぎるよ!!✨