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お宝袋は収納して、次は吊戸棚のほうを見ていく。
金属の胴鎧やヘルムに籠手といった防具がごろごろと無造作に置かれている。
特に変わった物はないみたいだ。
もう一つの吊戸棚にも防具関係がほとんどで、隅っこの方に黒い布袋が置かれていた。
さっき収納した袋と感じは同じなので、これもおそらくマジックバッグだと思う。
おもて裏を確認するが何も書かれていない。俺は黒い布袋の中に手を入れた。
「――うわっ!?」
出てきたのは、宝石が散りばめられコテコテに装飾された金の王冠。
持った感じはずっしりと重い。
おいおい、いったい何キロあるんだ?
とても実用的とは思えない代物だ。観賞用だったとか?
あと似たような金の杖も出てきた。
ベビー用品なんかもあるなぁ。
黄金のガラガラにミスリル合金製のゆりかご。
「…………」
これ、いるのか?
純金製ポッポちゃんオマル、蓋つき。
どこに金をかけているのやら……。
極めつけはコレだな。
金の髑髏。――信長か!
いや、これで酒を飲んだかどうかは知らないが……。
これもなんちゃら帝国の宝物庫から持ってきた物なのかな? (バルタ大帝国です)
雑多に置いてあるところを見ると、使うに使えなかったんだろうね。
かといって鋳つぶすには少々もったいなかった……と。
結局、残ってんじゃん!
それで困って次 (俺) へまわしたと。
まあ、市場には出せないし。下手なところに流して出所を探られても面倒だったんだろうね。当時は。
ちなみに、インベントリーにしまっておいた『お宝』のほうには各種鉱石がゴロゴロ入っていた。
あとで鑑定してみたところ、
『ミスリル鉱石』の他にも、『オリハルコン』・『アダマンタイト』といった異世界を代表する超金属 (レアメタル) もちらほら混じっていた。
これら金属の特性や、どういった利点があるかはガンツに聞いてみないとだな。
一緒に入っていた金塊や各種宝石のほうもありがたく。
さてと、大体こんなものかな。
マクベさんにはどう説明したものか?
……まあ、隠すような事でもないかな。
今更だしね。 ――全部話そう。
俺は机のところまで戻ってくると、上に出していた化粧箱を元あった引き出しにしまった。
そして机の前の椅子に腰掛けながら入口の近くで丸くなっているシロを呼んだ。
「なぁシロ。これらの品々は日本から召喚された人が残したものみたいだ。そしてこの手紙には俺が全部もらって良いように書かれている。せっかくだから、もらえるものはもらって有意義に使いたいと思うんだ」
シロは俺の目を見てコクリと頷く。
「それでなんだが、この件も含めて俺たちの事をある程度マクベさんに話してもいいかな? マクベさんならきっと大丈夫だと思うんだ」
そのように話していくと、シロは尻尾を振って何度も頷いている。
「そうかそうか、分かってくれたか」
お座りしているシロの頭をやさしく撫でてあげた。
「それじゃあ、マクベさんに報告しに行きますかね」
そう呟きながら俺は椅子から立ちあがった。
秘密部屋を出た俺とシロは、みんなが居る洞窟の入り口付近に戻ってきた。
メアリーはぐっすり眠っているようで、ミリーと並んで毛布に包まっている。
「ただいま戻りました。コリノさんもすみません、護衛を任せてしまって」
「おかえり。なにか収穫 (お宝) はあったかい」
「はい、いろいろと。それについて話しがあるのですが、一緒に来てくれませんか?」
「んっ、そうなのかい。私はもちろん構わないよ。よし、行ってみようじゃないか!」
マクベさんはそう答えるとすぐに立ち上がった。
ここで待っているあいだ、結構ウズウズしていたのかもしれない。
――とても嬉しそうだ。
今回はシロを残して二人で秘密部屋へ向かうことにした。
松明を片手にどん突きまできた。
まず、門松について軽く説明したのち岩スイッチを引く。
引き戸をスライドさせて中に入ろうとしたのだが……、
マクベさんは未だ門松を観察している。
「これは見事な……」とか、「ぜひ店の前に……」とか、
松明を掲げ、自分のアゴを指でつまみながらブツブツ言っている。
まぁ目は引くよね。立派だし。
「………………」
埒が明かないので、マクベさんに声を掛け部屋の中へと進んだ。
するとマクベさん、またまた立ち止まると、
「おおっ、これは素晴らしい! こんな所に」
とか言っているし……。
(今度はなんだよ?)
振り向くと、どうやら本棚にくぎ付けのようだ。
「これは幻の……」とか、「全巻揃っているのはまさに奇跡だ……」とか、
「………………」
まあ、しょうがないか。
しばらく付き合ってあげることにした。
「そんなに良い物なんですか?」
す る と、
「いいも何も、――――――――――――――――――――――――だから、――――――――――――――――――――――――とても素晴らし物なのだよ!」
「さらにだね、――――――――――――――――――――――――であって、――――――――――――――――――――――――も真っ青な代物なんだよ!」
30分程熱く語られてしまった。 ……やれやれ。
続いて引き出しから例の化粧箱を取り出し机の上においた。
す る と、
「おおっ、おおおぉおおお! これはマホガトレントの化粧箱。しかも、この大きさなら白金貨級だよ~」
マクベさんは机にへばり付いて化粧箱を観察している。
そこで俺は質問を……、するのをやめた。話が進まないので。
化粧箱を開けてみた。
「こ、ここ、これは大変だ。しかも12枚も!」
あらっ、――そっち?
この宝剣はどうなのよ? ――ねぇ。
まあ、金貨は俺も興味がある。生前コイン収集も趣味にしていたし。
俺はその金貨について聞いてみた。
この金貨はその昔、この大陸一と謳われたバルタ大帝国の大金貨だそうだ。
使われている金の比率も高く特筆すべきはこの厚さだという。
歴史的価値や希少性を考えるならば、王都のオークションに出品すればこれ1枚で50万バースはくだらないだろうとのこと。
それが12枚もあるのだ。
「頭がどうにかなりそうだよ」とマクベさん。
(ふ~ん、そうなんだ)
「でも、これなら鋳型を作って偽物が出回るんじゃないですか?」
チチチチチチチ!
マクベさんは人差し指を左右にふる。
「ゲンは魔力があるよねぇ。試しにこの金貨を一枚握って魔力を通してごらん」
俺は言われたとおり、金貨を握って魔力を通した。
すると、どうだろう。
握りこんだ拳の上に二頭の馬を模った紋章が浮かび上がるではないか。
「…………」
「ハハハハハッ、どうだい凄いだろう。この金貨には今は失われた技術が使われているんだよ」
この金貨、まじでスゲー!
――1枚はキープしておこう。
さて、まだ奥にも部屋があるんだよなぁ。
そこで俺はマクベさんが壊れるまえに話をすることに決めた。
マクベさんを椅子に座らせ、俺は机を挟んで前に立つ。
そして机に入っていた羊皮紙を示しながら説明していった。
「じつはですね、俺とシロは……………………」
一通りの話を終え、質問があれば随時受付ますので気兼ねなくお尋ねくださいと言っておいた。
マクベさんは理解を示してくれた。
ただ、異世界や転生などに関しては未だ理解が及ばないようである。
それにシロが聖獣フェンリルだというと……。
「……………………」
しばらく固まってしまったが、
「なるほど、思い返してみれば……」
自分なりに納得しているようだった。
それにマクベさんが言うには、この羊皮紙に書かれている人物に心当たりがあるようだ。
この国の始まりを示したとされる書物に『創国記』というものがあるのだという。
その中に記されている、初代国王と共に国を支えたとされる人物。
【龍殺しの英雄・クドウ】
おそらくはその人物ではないかと……。
ふ~ん、工藤ちゃん割りと有名だったんだ。
………………
俺はマクベさんと共に奥の扉へ向かった。
短剣をかざして、
「バルス!」
人前ではちょっぴり恥ずかしい……。
扉を押して二人で倉庫の中に入った。
(どうよ! このオリハルコンの剣とか…………)
(すごいよ! ミスリルのガントレット…………)
マクベさんは鎧や剣などをつらつらと見ていき、さっさと部屋を出ていってしまった。
こっち系には触手が動かないようである。
「………………」
べつに、寂しくなんかないんだからね!
い、いいもん、ガンツがいるもんねぇー。
マクベさんは本棚に置いてある本に夢中だ。
俺はその間に、倉庫に置いてあった武器や防具をすべてインベントリーへ収納した。
あとの机や椅子、ベッドにクローゼット、そして門松などはそのまま残すことにした。
マクベさんのお気に入りの本は本棚ごと収納している。
そして秘密部屋を出ようとする際、
「これらは全てゲンに託されたものだ。だからゲンの好きにするといい」
マクベさんはそう小声で言うと、みんなのところへ戻っていった。
「あら、帰ってきたのねぇ。おかえり~」
手を上げてカイアさんに答えていると、シロが出迎えるようにすり寄ってきた。
「シロも待たせたなぁ」
頭を撫でてあげる。
いろいろ話をしたいところだが、まだ旅の途中なのだ。
今日も俺が夜半過ぎまで、そこからはコリノさんが朝までと夜警の割り振りをする。
俺はシロを連れて洞窟の入口付近に陣取り腰を下ろす。
「ブルブルブル」
床で寝ていたお馬さんがあいさつしてくる。
洞窟の外は雨があがったらしく、シーンと静まりかえっていた。
この調子いけば明日はなんとか馬車を走らせることが出来るだろう。
するとここでメアリーが起きてきた。
どうやらオシッコのようだ。
用をすませると寝床には戻らず、こちらに来てしまった。
仕方がないので膝の上に座らせ毛布を掛けてやる。
水を飲ませ、「ゆっくりおやすみ」と言っておく。
………………
コリノさんが起きてきたので交代してひと眠りした。
翌朝。
シロに起こされた俺は表に出て身体を動かす。
うん、いい朝だな。
ゆっくり目の朝食を終え、地面の様子を確認したのち俺たちは洞窟をでた。
ぬかるみを避けながら馬車はゆっくり進んでいく。
………………
結構、慎重に進んできたのでタグ村に到着するのが夕方になってしまった。
しかし道中雨に降られたことを考えると、至って順調だったといえるだろう。
最後の坂を上りきると、ようやくタグ村が見えてきた。
そのまま馬車を伴って村にはいる。
まもなく日が暮れるということで荷降ろしは明日やることになった。
そして俺たちは村に一つしかない宿屋の前に到着した。
「いらっしゃいませぇー」
元気に迎えてくれるショートカットの女の子。
この宿の看板娘かな。
カウンターで宿泊代を払うとそのままテーブル席につく。
すると、すぐ女将さんがやってきて、
「こんなに大勢で来るとは思ってなかったから肉が足りないよ~。どうしよっか?」
確かに、この田舎の宿にそんな沢山の食料が有るはずがない。
それに、今回は特に人が多いから全然足りないだろうね。