今日も白い空だった。
濁ったような、何かを隠しているような空。
そして、そこに君はいた。
あの日と同じベンチに座り、小さなオレンジ色の花を手に。
仏「……それ、今日の花?」
英「はい。今日は、私から」
仏「……ありがと。受け取っていい?」
英「もちろん」
フランスは花を受け取る。
釣鐘型の、小さくて、オレンジがかった花弁。柔らかくて、優しい色。
仏「……これ、なんて名前?」
英「サンダーソニア。可愛いでしょ」
仏「うん、可愛い」
小さく笑い合う。ほんの一瞬、何かがほぐれた気がした。
仏「……で、花言葉は?」
英「“祝福”、“望郷”、……それから、“あなたの幸福を願う”」
仏「……他には?」
イギリスの指が、ぴくりと震える。
英「……“助けて”」
その言葉を聞いた瞬間、フランスの目から笑みが消えた。
仏「……なんだ、それ」
英「花言葉ですよ」
仏「そういう意味で選んだのか?」
英「さあ。……ただの偶然です、多分」
仏「また“多分”かよ」
英「……」
仏「本当は、意味込めたんだろ。ならちゃんと言えよ。“助けて”って」
英「言えたら、苦労してないんですよ」
仏「言えよ! なんでそんな花、選んで、笑って渡せんだよ!!」
英「うるさいなッ……!」
仏「うるさくもなるだろ!」
英「だったら、なんで来るんですか! 毎日毎日、黙って心配して、優しくして、何も聞かずに花を受け取って……そんなことされるから、余計に言えなくなるんですよ!!」
仏「……だからって、そんな渡し方、ないだろ!!」
英「じゃあどうすれば良かったんですか! “私は辛いです”って、正直に言えばよかったんですか!?」
仏「そうだよ!」
英「……言えるわけないでしょう!?!?」
その叫びは、あまりにも鋭くて――痛かった。
まるで、本当にどこか切り裂かれたような声だった。
英「……助けて、なんて、言えるわけないっッ……今さら……」
仏「……だったら、今言えよ。ここで、言えよ。僕はいるだろ、目の前に」
英「それが一番、怖いんですっっ……!!」
イギリスは肩を震わせたまま、突然立ち上がる。
仏「…待てよ」
英「来ないでください!!」
仏「待てって、あっ、イギリス!!」
英「もうやめてください! 優しくされると、私の何かが壊れるんですッ!」
そのまま、駆け出した。
仏「……ッ、イギリス!!」
フランスも、咄嗟に追いかける。
花を片手に、叫びながら走る。
仏「待てよ! 逃げんなよ、お願いだから!!」
空は相変わらず白く、どこまでも、嘘みたいに晴れていた。
ベンチの上に、ひとつ、ちぎれた
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