ドウシテ
ー ー ー ー ー
「あぶない!!」
そんな声と同時に瓦礫が降ってきた。
あっと思う間もなく押し潰され、俺の意識は真っ黒に塗りつぶされた。
次に目を開いた時、真っ先に自分の異常に気が付いて言葉を失った。
「……ぇ…?」
魔法が、俺の持つ力が使えない。
愕然とする俺を見て、らだおくんは何事かを悟ったらしい。すぐにコンちゃんに連絡をとり、俺に休養を指示した。
俺は、特別じゃなくなった。
ただの人間と変わらない存在になった。
運営は、らだおくんがの役に立てる“特別”の集まりだから、俺は運営を辞めざるを得ないんだって思った。
その情報はいつの間にか国全体に広まっていて、俺は…というか多分、俺だけじゃなくて国のみんながそう考えたんだと思う。
特に、国籍を入れたばかりの新人は穴が開いた運営の座に目を光らせて、これでもかとアピールを繰り返した。
そうしたら、らだおくんがキレた。
「ねぇ、みっともないからやめて?俺、みどりを運営から外すつもりないから」
いや、なぜ?
無言の圧をかけるも、当の本人は素知らぬ顔でアスレチック施設のある方へ向かってしまったから理由も分からず仕舞い。
「…なんでアイツが」
そうすれば当たり前だけどヘイトは俺に集まる。どこかではらだおくんに対して俺が駄々を捏ねまくって、運営の座に縋り付いているせいで枠が空かない。なんて噂も流れていてもう散々。
そして、次第に俺も俺が嫌になった。
みんなが羨ましくて仕方なくなった。
運営の一人として認められたい。
前みたいに、こんなくだらない心配も無い状態でみんなの側で笑っていたい。
それだけなのに…
「運営にゴミ混じってんのウザいわ」
「緑色とか言うやつキモくね?」
「無理言って運営の座譲らないってマ?」
「ガチ、早く消えろって感じ」
そうして、先週から俺への“お誘い”が来るようになった。
最初は、らだおくんにお願いされたペンのインクを買いに行っていた時。
「ッ!?」
真横から伸びてきた手に引き摺り込まれて、状況を理解するよりも前に目の前に火花が散った。
鼻血が出ていて、困惑したまま呆然と見上げるとまたすぐ衝撃に襲われる。もう、悲鳴を上げる暇もないくらいに。
「お前がいつまでもあの方の迷惑になるからだよ。無能な上に察しも悪いんだな」
「…ヴ」
「可哀想に、俺たちがあの人の心を代弁して差し上げるんだ」
「…」
「らっだぁさんの、御心を…!」
「〜ッ!!」
デタラメだって分かってた。
…でも、もし彼らの妄言がちょっとでも本当だったら?らだおくんが、少しでも俺を面倒だと思っていたら?
怖かった。
万が一、肯定されてしまったり、悩むような素振りを見せられたら俺は死んでしまう。
だから相談も否定も抵抗も…何も出来ないままズルズルと今を過ごしている。
「……俺ハ、イラナイ?」
ー ー ー ー ー
next?→100♡
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