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次の部活の日


「あすか、ちょっといい?」

「なぁに?香織。わたしだって忙しいんだからぁ、恋の相談以外は受け付けないよ〜?」

「そんなんじゃないけど…大事な話。」

「え〜ん大事な?そういう気分じゃないのに 」

「ちょっとだけなの…!お願いできない?」

「なんなのよ〜そんな必死に。

ま、最初から聞いてあげるつもりだったよ?香織の話はね。」

少し呆れたような顔をしながらも、あすかは私の話を聞いてくれるようだ。

あすかにはもう全部…お見通しなのかもしれない。私が何を考えて、何をしたのか。何をするのか。どうするべきなのか。

あすかはいつも…何考えてるんだろう。

よく考えると私はあすかのこと、全然わかんないや。


「…あのね。あすか、オーディションのことなんだけどーーーーーー」

「あっ、そういえばまだちゃんとお祝いしてなかったね?

おめでとう香織!友達としても副部長としても、全力で祝福するよ!!」

「…ありがとう。」

オーディションの話を切り出した瞬間、あすかの目の色が変わった気がした。

気のせいだろうか…

「なぁ〜に!元気ないじゃん!

わたくし田中あすか、香織様の元気をお守りいたす!」

「…ふふっもう、な〜に?それ。」

「あははっ」

確かにあすかの底抜けの明るさは、よく私を元気付けてくれる。

だけどそれは、私を不安にもさせる。

私が何を話してもいつも同じように、一切の動揺もせずカラッと対応。

同情もなければ怒りも…私はもっともっとあすかの本音が聞きたいのに。本当のあすかが知りたいのに。


あすかは私のこと…どう思ってるんだろう。


「…元気でた?じゃっ私はこれでーーー」

「まってあすか!!」

「ん?」

「あのね…私があすかに話したかったのは、麗奈ちゃんのトランペットのことなの。」

「ふーん。それで?」

「麗奈ちゃんの演奏、変だと思わなかった?」

「確かに練習の時の方が綺麗だったかもね?でもそれだけで変っていうのもねぇ。」

「ねえ、あすかはもう気づいてるんじゃないの?」

「なにが?」

「麗奈ちゃんのトランペット…微かだけど、細工がしてあった。見てみないとわからないような…」

「…細工ね…」

「あすか、私どうしたらいいと思う?」

「どうしたらって…香織は今まで通り普通に吹いてればいいんじゃない?私だって面倒事には巻き込まれたくないし。」

「うん。わかってる。誰がやったか心当たりとか…」

「ないよ。そんなものない。自ら犯人探しとか、香織らしくないよ。」

「…だよね。ごめんね私、つい。」


「私さ。」

「ん?」

「本当は気づいてたの。麗奈ちゃんの実力、こんなもんじゃないなって。

でもオーディション中も言えなかった。あの場で確認すれば結果は変わったかもしれないのに…」

「それは滝先生も同じでしょう?いいんだよ、部全体で決めたことなんだから。 」

「細工がしてあるって確認した時も…私言えなかった。」


「この事を滝先生に伝えれば、きっと滝先生はもう一度オーディションをやってくれる。今より正しい結果を出してくれる。

…わかってたのに、言えなかった。もう一度オーディションをしてくださいだなんて言えなかった。せっかくのソロを手渡すのが怖くて…しっかり審査したら麗奈ちゃんの方が上手いことなんて私が一番わかってて…」

「香織。」

「なのに私ったら…あすか、私はーーーー」

「香織!落ち着いて。」

「…ごめん」

つい感情が溢れ出て話しすぎてしまった。

あすか…引いてるかな。私が無理言って相談聞いてもらってるのに…


「香織は考えすぎかな〜。」


「どうでもいいじゃん?そんなくだらないこと。」

「くだらないことって…!」

「もう終わったことなんだよ。そんなに気にすることじゃない。」

「でも…ほんとにそれでいいの?あすかはそれでいいと思ってるの?」

「わたしは香織のソロ楽しみだよ?」

「楽しみとかじゃなくて…本当にこれで…」

「さっきも言ったでしょう?

部全体で決めたことなの。滝先生が決めたことなの。

滝先生について行くって決めたのは私達だよ?どう思うのも香織の自由だけど、文句があるなら滝先生にいいな?」

「文句…そうだよね、ごめんあすか。」

「…うん」

「私、ちょっと落ち着いてくるね。」

「わかった。」

取り乱しすぎた。

私、中世古香織がこんなにも感情に任せてあすかに相談をしたのは、滝先生に正しい判断をしてほしいからだろうか。麗奈ちゃんにソロを吹いてほしいからだろうか。

それとも、私がソロを吹いていい理由がほしかったからだろうか。


ほんと私…最低…

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