テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
💛side
昔からよく同じ夢を見ていた。僕にそっくりの人が、こちらをのぞきこんで、微笑んでいる夢。その夢を見た日は、小さい時には怖かったんだけど、なんでかあったかくて、安心した。夢の中のその子は、僕と一緒に成長していって、二週間に一回くらいその子と会うのが小さな楽しみだった。
最近になってくるとその子と話せるようになって、ミセスのこととか、次の曲のこととか、新しくできた友達とか、今はまってるめっちゃ美味しいスイーツの話とか、いっぱい、おしゃべりした。
その子はいつも楽しそうに微笑んでて、僕ばっかりがしゃべってたけど、どの話もケラケラ笑ってくれて、そんなその子が大好きだった。
だから熱い風と、誰かの声に目が覚めたとき、ここは本当に夢の中かと、思った。燃えさかる炎の中にその子が立っていた。そしていつも通り優しく微笑んで、そのまま消えてしまった。
夢をみていたようなのに、なぜか胸が苦しくて、痛くて、心にぽっかりと穴があいてしまったようで、そのまま若井と泣きわめいた。泣き虫だけど、そんなに激しく動揺することはめったにない若井が、ほんとに苦しそうに取り乱すのを見て、また苦しくなった。
いつのまにか泣き疲れて寝てしまったらしい。周りには、いつもの夢の中と同じ、緑の宝石が咲く花畑が広がっている。
あの子は、スズは、どこだろう。
花畑を歩き出す。まさか、もう会えないのではという不安が広がってきて、頭をブンブンと振る。
「りょうか、」
後ろから聞こえた、聞き慣れた声に反応して、勢いよく振り向く。そこにはいつも通り、スズが立っていた。
「スズ!」
急いでかけ寄っていく。
「どうしたの?大丈夫だった?」
言い終えるよりも先に、スズが抱きつくのを受けとめた。あったかくて、優しいハグだった。
「りょうか。」
「うん、なに?」
「ありがとう、俺達は、りょうかのおかげで、戻ってこれそう。」
「…何の話?」
スズがそっと腕を外して目線を合わせる。その顔は少しだけぬれていて、右手で僕の頬に触れた。
景色が揺らいでいく。もうすぐ夢が覚めてしまうらしい。
「もう…会えないの?」
スズが困ったように笑ってうなずく。そして、泣き笑いのような表情になりながら、ゆっくりと笑った。
「お別れだけど、ずっと見てるよ。きっとまた、会えるから。」
別れを拒むように首を振る僕の頭を包んで、額をくっつけ、ささやくように言った。
「…だぁい好きだよ、りょうか。」
目に入ったよく見慣れた天井に、夢が覚めてしまったことに気づいた。あれ?僕病院に戻ってきてる…?あれは、全部夢…?
看護師さんやお医者さんが次々と出たり入ったりして、僕も退院の準備を始める。なぜかあの子の手のぬくもりがいまだに残っていて、思い出せばまた視界が滲んできた。
手続きなど諸々を済まして、病院を出た。向こうにマネージャーさんの車が止まっている。昨日は大変迷惑をかけてしまった…、まだ仕事も残ってたのに。とりあえずしっかり謝罪しとかなきゃ、結局何が原因かはわかんなかったけどね。
車のドアを開けて謝ろうとして気づく。
「あれ?若井?」
後部座席には若井がすでに乗り込んでいた。
「おはよ、涼ちゃん。早く乗りなよ。」
そういわれてスタッフさんに謝罪と感謝と言いながら、若井の隣に乗り込んだ。
「…涼ちゃんさ、今日朝何があったか覚えてる?」
若井がぼそりと呟くような声で言った。
「…僕若井の部屋にいたはずなのに、病院に戻ってきてたんだけど…」
「他には?」
「僕とそっくりの子が、…炎に焼かれてしまったこと…」
「…そう…だよね。、あれは夢じゃ、なかったよね…?」
若井の声が震えていることに気が付く。
「俺さ、あんなに大事だったのにっ、急に跡形もなく消えちゃって…、信じられなくなってる、もしかしたら俺の夢だったんじゃないかって疑っちゃってさ、起きたら涼ちゃんも元貴もいないから、どこから現実だったんだろうって、」
若井の目からぽろぽろと涙が流れていく。
「でも…涼ちゃんが覚えていてよかった。やっぱり、夢じゃなかったんだ。」
「…若井が言ってるのって、スズのこと?」
「ぇ、…、なんで知ってんの…?」
「僕が夢でね会ってた子なんだよ。すっごく優しくてね、綺麗な子。」
「…そ、っかぁ、っそっかぁ…、そんなところで、会ってたんだね…」
また、若井の目から零れ落ちる。つられて僕も鼻がつんとした。きっと夢じゃない。だって、あの子の笑い声が、泣いた顔が、手の感触が、まだ残ってる。
いつかまた、会えるよね
夢のようだけれど、夢と言ってしまうには勿体ないような、静かで短い、あなたへの愛の物語
~終~
まだバッドエンドじゃあ、終われません🤭