お題メーカーから「彼は誰」ついでに冒険小説
坂道をこえると、そこには森があった。沢山の木が沢山生えていて辺りを見渡しても変わらない背景。森に入ると、小鳥のさえずり、春風の音、そして風になびく草。何もかもが美しくて、うっとりしてしまった。しばらくして私は我に戻り、周りを見渡した。熊もいなく、ほっとしたとき、視線を感じた。後ろを振り向くと、小さい少年がいた。話しかけようとしたとき、瞬く間に消えてしまって、混乱した。少年が…消えた?私は自分に幻覚だ、と言い聞かせそのまま前へすすんだ。次はさっきよりも大きい野原に出た。風が気持ちよくて、このまま寝っ転がりたい気分だった。だが、まだ視線は感じる。いっそこのまま勢いよく走ったらついてこないだろうか。いや、相手は少年。子供だから体力は有り余っている。さらに、少年がいるかなんかわからないのに。まさか、森の仙人だったりして。私は誰にも気づかれない程度の声でクスッと笑うと前を向いた。
(まだ目的地は先だ)
私は野原に足を踏み出そうとしたとき――――
「きぁ!」
足元が崩れていった。当然間に合うことなく、私は飲み込まれていった。あ、もう終わるんだ、と思って目を瞑った。
「危ない!」
男の子の声がして、私は恐る恐る目を開くと前にはさっきの少年が私の手を掴んでいた。私は思いっ切り力を振り絞り地面に足をついた。
「あ、危なかったぁ…」
私はふぅ、と息をつくと、隣にいる少年のことを思い出した。
「あ、君!さっきはありがとう!お名前は?」
「え、あ」
少年はいきなりで動揺しているようで、私も言い方は悪かったと思って言いなおした。
「ごめんね、私は美紀、貴方は?」
少年は目を大きく広げ、拳を握りしめた。
「ぼ、僕は…和斗」
「いい名前だね!」
わたしはにっこり笑ってみせると、和斗は泣き出した。大きな涙が溢れていく。
「ご、ごめん!なんかやっちゃった?」
私は子供を持ったことがないし、子供の扱いが上手くないため、結局その少年を泣き止ませるのに丸一日かかった。丁度ご飯の支度をしていると、少年は涙目になりながら私にぽつりぽつりと話しだした。
「僕の…苗字は…広瀬」
私はびっくりした。なんてったって私も広瀬だから。
「ぼ、僕は…君の子供…」
「どうゆうこと!」
思わず大きな声をあげてしまったため、少年はびくびくおびえていた。
「ご、ごめん!んで…どうゆうことか、話せる?」
「う、うん…あ、あの…美紀さん?は…ぼくの母さんで…記憶喪失になったんだよね」
そう…私が旅に出た理由は記憶を取り戻すためだった。
「父さんが亡くなって…ショックで母さんは…」
「ごめんね、全部…全部思い出した」
私は母でこの子は父との子供。父はひき逃げされそのまんま。私はそのショックで記憶喪失。
「ごめんね…今度は私…お母さんと暮らそうよ。本当にごめんなさい。謝って許してもらえるとは思ってないけど…」
「ううん…許すよ。僕ずっとまってんだ。」
『頼むよ…美紀!』
「!!」
男性の声が聞こえた。これは…私の旦那、四季弥の声だ。
「うん、わかったわ!四季弥…天国で見守っててね」
コメント
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今回もめちゃくちゃ良かったよ!!!! 森だ〜!!野原だ〜!!わーい!!(?) おっ?!人の気配がするだと…?!! でも…消えた?消えただと… え?!!そういう事だったの? もしかしたら、幸せになれるかも…(?) ってか!夫さんも見守ってくれてる… 次回も楽しみに待ってるね!!!!