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深夜4時。人によっては早朝とも言えるこの時間まで俺は眠れず起きていた
恋人の元貴も作業で未だ起きてるみたいで元貴の部屋の明るさとパソコンを打つ音だけがこの静かなリビングに残った
死にたい。なんというか….もう夜に呑まれたとかではなく普通に生きていたくない
どんなに楽しい活動をしてても頭の隅に常時その思考が巡ってる
夜になるとそれが強く出るだけ。
藤澤「元貴はこんな頑張ってくれてるのに俺は何してるんだろう…」
ピアノを弾いてる?そんなの、誰にでも出来る。
誰にでも優しい?そんな人間沢山いる。
ほんわかしてて穏やか?悪く言えばマイペースだ
コメントを沢山読んでも全てが綺麗事や嫌味に聞こえてしまってすぐに閉じる
無理矢理にでも寝てしまおうとベッドに向かおうとするが、金縛りのように全く体が動かない。鋼のように重たい
ーガチャー
藤澤「…?元貴、どうしたの?」
突然元貴の部屋のドアが開いて、スウェットにメガネという俺にしか見せない姿でリビングに出てきた。
大森「……………」
元貴は何も言わずにキッチンでお湯を沸かし、マグカップに注いだ。あぁ、作業用のコーヒーかな
藤澤「ごめんね、やってあげればよかった」
こういう時に俺がササッと作って部屋に持って行ってあげられたら…。元貴の作業は少しは捗ったかもしれない
ごめん。ごめんね。本当に死にたいや
ージュワッー
藤澤「あちっ、!え…?」
急に自分の手が熱くなって我に返る。目線を落とすと俺の手には温かいココアの入ったマグカップが握られていた
隣を見ると何気ない顔で自分のコーヒーを飲んでいる元貴。
嘘だ。こんなの、あってはいけない。俺は何もしてないのに…なんでこんなことしてくれるの、、
藤澤「なんでっ….」
自分がやってあげられなかった悔しさと元貴の優しさで何も言えずにいると俺の頭に心地よい刺激が与えられた
藤澤「ぁ……」
俺の頭を静かに撫でる元貴。何も言わず、俺の顔を見る訳でもない。ただコーヒーを飲みながら当たり前のように撫でてくれる。
その手は少し大きくて何よりも暖かくて人を安心させる俺の大好きなもの。
今の俺は少しの刺激で涙腺崩壊してしまうから既に俺の目からは1粒の涙が流れていた
藤澤「やめてよ…俺に優しくしちゃ…..駄目だよ…(泣)」
それでも元貴は俺から手を離さない。もはや苦しいけど一定のリズムで撫でられ続け、俺の意識が飛んだ
ー大森sideー
大森「ん〜、今日は終わらないかもな…笑」
俺は夜になると曲作りに専念するようになる。歌詞やメロディーが浮かびやすいからだ
でも今回の曲はアレンジを多く入れているため、時間がかかった
大森「コーヒーでも飲んでもうひと頑張りしますか…..ん?」
ドアの隙間を覗くとまだ明かりが付いているリビング。明かりって言っても、豆球になってるけど
大森「涼ちゃん、、いつもならとっくに寝てるのに。……….きっと気分落ちたな」
別に珍しいことじゃない。涼ちゃんは元々そうなりやすい体質だし。
そんな彼を支えるのが俺の仕事だ。
大森「しゃーない、行ってあげよう」
ーリビングー
藤澤「…?元貴、どうしたの?」
ドアを開けて様子を伺うと、案の定涼ちゃんはソファーの上で膝を抱えて座っていた。
いつもはスマホをいじるかテレビを観るかしてるから俺の中で”きっと気分が落ちた”から確信に変わった
キッチンへ行き、ポットでお湯を沸かした。その間にマグカップを2つ。1つはコーヒー、もう1つはココア
気分が下がってる時は甘いものが正義だ。
藤澤「ごめんね、やってあげればよかった」
お湯を注ぎ混ぜてると、ソファーから弱々しい声が聞こえた。
いいんだよ、謝らなくて。そういう時は”ありがとう”でいいんだよ。
2つのドリンクが完成してソファーに持って行くと、俺に気付かずボーッと焦点の合わない顔で今にも泣きそうにしてた
大森「もっと甘えてこいよ….ばか」
ージュワッー
藤澤「あちっ、!え…?」
涼ちゃんの手にマグカップを握らせると熱さで我に返った。
俺は”ありがとう”を期待して自分のコーヒーを飲んだが涼ちゃんはそのマグカップを握る手が震えていき
藤澤「なんでっ….」
あ〜あ、やっぱダメか。頭のどこかでは分かってたから無言で涼ちゃんの頭を撫でた
とりあえず今はこの子を落ち着かせるとこからだ。
頭を撫でてやると泣きそうになりながらも目を細め気持ちよさそうにする。
でも次第に震えた声で
藤澤「やめてよ…俺に優しくしちゃ…..駄目だよ…(泣)」
大森「っ、、、、、」
俺は怖かった。やめてなんて本音じゃないことは分かってるけど、あまりにも自分を犠牲にしすぎだ
自分の優しさが自分の枷になってるって、なんで気付かないかな
俺はずっと涼ちゃんの頭を撫で続けた。泣いてるけど俺に素直に撫でられてる涼ちゃんが愛おしい。
ちゃんと、俺は涼ちゃんに恋してるよ
大森「あ….寝た」
ふと隣を見ると背もたれに身を委ねて気持ちよさそうに眠ってる涼ちゃん
大森「なんで俺の肩じゃないの…」
委ねた相手がソファーってことに嫉妬しながらも涼ちゃんをそっと抱き上げ寝室まで運んだ。
このことも起きてきたらきっと
“ごめん!ほんとにごめん”
なんて言うのが脳内再生されるがまぁいいだろう。
俺は自分の他に涼ちゃんという繊細で壊れやすい心をこれからも守っていこうと思う
大森「絶対死なせないからな…」
ボソッと言った”死にたい”という独り言を聞き逃しはしないよ。