「ふう…。」
なんとか少年を眠らせる事に成功し、とりあえず自分の店に運ぶ。
少年は睡眠薬などの耐性があるのだろ
う。
子供だからと普通のものより比較的効果が薄い睡眠薬を射っても眠らなかった。
少年を店の裏の部屋に運び、ベッドに寝かせる。
このベッドは、時々仮眠を取るのに私が利用しているものだ。
『ぅ”…、ぁ』
少年は酷くうなされているらしい。
鋭く刺すような目は瞼で閉じられ、1粒、また1粒と水滴を零した。
「………貴方も、あの世界が嫌なのね。」
そろそろ、店を開く時間だ。
少年が起きぬよう、ゆっくりと部屋から出ていく。
そして、部屋の鍵を閉めた。
店の開店カードをひっくり返す。
すると、早速今夜1人目のお客様がやってきたようだ。
「…あら、珍しいわね。」
「こんな早い時間に来るなんて。」
1人目のお客様はマフィアのボスをしている。
昔関わりがあり、商談や連携任務などを行った覚えがある。
「いらっしゃい。」
〈アキラ……、じゃなくてセイラ〜、いつもの。〉
風楽奏斗。
黒いスーツに身を包み、ボスとしての風格を擬人化したような、そんな人だ。
だが、店に来る時は昔からの関わりがあるからか、気は抜けている。
例えるならば「チャラ男」だろう。
「はいはい。」
「…て、名前間違えるなんて、ご法度よ。」
〈ごめんごめん…、いつもの癖で。〉
「…今日、あの人は来ないの?」
〈ん?あぁ、闇商人の事?〉
「ええ。」
〈今日は来ないかなあ、多分ね。〉
「そう。」
「はい、どうぞ。」
〈…これ、僕が頼んだ物のじゃないんだけど?〉
…あからさまにイラついた顔してるわね。
「ちょっと、勘違いしないで頂戴。」
「新作カクテルを出したいんだけど、味がどうかなって。」
〈あぁ、なるほど。俺で味見させようってわけね。〉
「まあ、そういうこと。」
〈んじゃ、いただき〉
ガタンッ!!!!バンッ!!!
その音とともに裏の部屋のドアは吹っ飛び、あの少年が物凄い速さでこちらへ来る。
その時…。
パァンッ!!!!
銃声が店内に響き渡る。
奏斗が警戒して発砲したようだ。
〈アキラ、この子は?〉
「さっき襲ってきた子なんだけど、部屋から出ちゃったのね。」
「……奏斗、分かっていると思うけど殺すのも、撃つのも無し。」
「もう汚れ仕事はごめんなんだから。」
〈…分かった。〉
そう言って彼は銃をスーツの内側に入れる。
「…どうしたの?」
「ここは店よ。」
「暴れるなら外でやりなさい。」
「今貴方が見た通り、貴方を殺すことは無いわ。」
『…、俺は任務がある。』
『聖来…いや四季凪アキラ、お前を抹消することだ。』
〈…少年、とりあえずこれ飲めよ。〉
そう言ってココアを少年の方へ投げる。
…彼なりの優しさなのだろうか。
『…ふざけないでよ。』
『飲むわけないだろ。』
〈まぁ、そりゃそっか。〉
マフィアのボス_風楽奏斗。
風楽奏斗の1番怖いところ。
それは。
〈僕、うるさいの嫌いなんだよね。〉
自分に何の得もない事に巻き込まれること。
奏斗はゆっくり立ち上がり、銃を少年へ向ける。
『…やる気?』
「ちょ、奏斗!!!」
「殺さないでって言ったじゃない!!」
〈え〜…、そんなん構ってらんないよ。〉
〈アキラも、困るでしょ。〉
「そ…、れは…………。 」
「でも!!!!!!」
ガチャ…、チリンチリン………。
《やほ〜、セイラさぁん!》
《……て、何この状況!?!?!?》
〈あ、闇商人だ。〉
『……ッ。』
コメント
2件
めっちゃ良いとこで止まる!続き気になる!!最高です!