リクエスト作品
[ほのぼの124×380]
リクエストありがとうございます!!
もう1つのは別で書きます!
順番左右して申し訳ないです!
順次書いていってますのでお待ちください!🙇
124×380
ほのぼのデートのお話。……ほの、ぼの…?
お付き合いして…ないねギリ。
でも今後進展していくんだろうなぁ…って感じの距離感です。
ゲームが途中で終わった世界線で、2人とも丸くなって落ち着いてます。
大丈夫な方はどーぞ!
俺は今日、何故かあのクソ女と出かける。
しかも公園という俺たちらしからぬ場所。
…そもそも出かけること自体意味分からない。
事の発端はあのゲームが終わり、現実に帰ってきて約1ヶ月後の事。
その日の天気は悪かったらしい。天気予報なんて見ずに外出した俺は傘なんて持ってる訳もなく近くのコンビニに入った。
そこも傘は売り切れで、とりあえずタバコだけ買った。
正直気が滅入っていた。雨だし傘ねぇし、何よりあのゲームの事をずっと引き摺っていた。
だから俺はコンビニの前で雨に打たれながら買ったばかりのタバコを吸っていた。雨に打たれたら、この気持ちも少しは楽になるかと思って。
すると急に雨が止んだ。目の前には誰かの足。誰だと思い顔を上げると、あの女が立っていた。
「……あんた、まだそんな顔してんの」
「………関係ねぇだろ。」
「あたしもだよ。………あのゲーム、忘れらんないよね」
驚いた。あの女が、あの生意気なクソ女が弱音を吐くなんて。しかも俺に。
その日を境に少しずつ会うようになり、そうしてるうちに次第にわだかまりのようなものは減って行った。
そんなある日、あいつが急に言い出した。
「…ねぇ、いつまでも過去に縛られんの嫌だ。1回ぐらいさ、普通っぽいことしてみない?」
「普通ってなんだよ。」
「あたし達が出来なかったこと。例えば…公園に行くとか。」
そいつにしては珍しく無邪気に言うから。まるで公園なんか行ったことないみたいに言うから。
「……はぁ、仕方ねぇな。」
こうして俺達は公園に行くことになった。
そういう訳で俺はこの市内でもそこそこに広い公園の入口で待ってるわけだ。
特に見るものはないが手持ち無沙汰にスマホを見てると、セミが来た。
「ごめん、遅れた。」
「……」
「…ナムギュ?」
セミを見て正直びっくりした。だってそいつは黒のロングスカートを履いていたから。
こいつと外で会ったことはそれなりにある。
が、スカート姿なんて見たこともなかったし、履くなんて思ってなかった。
セミの不信気な目線で我に返る。
なんだ、これじゃ俺が意識してるみたいじゃないか。
「……んでもねぇ。行くぞ。」
誤魔化すように公園に入っていく。
会話はポツポツと、たまに交わす程度。
でも気まずいと感じるには俺たちは一緒にいる時間を過ごしすぎたらしい。むしろこのぐらいが心地良いとまで感じる程度になっていた。
でも、1つだけ。俺は普通が分からない。
こいつが言う普通がなんなのかが分からない。
「……おい、普通ってなんだよ。俺には分からねぇ。」
「………そんなの、あたしもだよ。でも、こうやって一緒になにもせず歩くだけで充分なんじゃない?」
……あのゲームでいがみ合っていたとは思えない平和な時間。
あのゲームでは、見ることも無かったこいつの穏やかな表情。
これが、普通なのか。
しばらく歩いたとこで、適当なベンチに座る。少し先の平地で遊んでる親子を見ながらセミが話しかけてくる。
「ねぇ。ゲーム途中で終わったけど、なにが1番怖かった?」
「んだよ急に」
「いいじゃん。せっかくのデートなんだし本音話そう。」
「は?!デートじゃねぇよ!」
「あーはいはい。それで?」
ニヤニヤしやがって腹立つ。でもそれもあの時とは違う…言葉に出来ねぇけど、慈愛が見えるような、そんな顔。
仕方ねぇから答えてやる。あのゲームはもう終わった。こいつともそれなりに時間を過ごしてきた。少しぐらい本音を話してもいいだろって、柄にもなく思ってしまった。
全部こいつのせいだ。
「……全部、怖かった。」
「…。」
「でも俺は人に命をかけるのが1番怖かった…と思う。兄貴やミンス、ギョンスと、お前。こいつらに俺の命もかかってるんだと思うと怖かった。」
俺は自分が生きるためならなんだってするつもりだった。でもそんな中での[近代五種]は怖くて堪らなかった。知らねぇやつに自分の命が握られてるのが、自分じゃどうしようも出来ないのが怖かった。
「そういうお前は。」
「……あたしは、………マッチゲーム。」
それを聞いて初めに浮かんだのは、ミンスが俺たちに乗せられこいつを裏切ったシーン。
あの時のこいつの顔は、あんま見てねぇけど絶望してたと思う。
俺は生き残るのに必死だし、その時はこいつに対しても嫌悪感しか無かったからなんとも思ってなかったがこうして現実に戻ってきて、日々を過ごしてたら……なんていうか、人としての罪悪感は少しだけある。
「……死ぬのも怖かったけど、なにより裏切られたのが怖かった。あの時、誰かがあたしを引っ張ってなきゃ、そのまま死んでたと思う。そのぐらいには。」
こいつの過去に何があったかは知らねぇ。
ただ、こいつは裏切られることに対しての恐怖心が人よりあるのは、ここ数日で気付いた。それを聞こうとは思わねぇけど。
「……ならお前、俺の事嫌いだろ」
セミの方を向いて聞くと、セミもまた俺の顔を見る。その表情はやけに自信気だった。
「ふっww今更聞くの?嫌いだったよ。でもそれはあんたもでしょ?」
「っは。」
当たり前だと鼻で笑ってやる。それを見てニヤッとしてまた前を向くセミ。
嫌いならなんで。
「なんであの時俺に声掛けたんだよ」
「んー…。あのゲームを知ってる人に初めて会ったから。」
「は?それだけ?」
「……あんたこそ、なんで誘いに乗ったの」
「それは……。お前が、見たことない顔して言うから。」
「っは?」
「……あのゲームの事は忘れられねぇけど、会えば会うほどお前の事知ってって毒気が抜かれたっつーか…。悪くねぇって思ったんだよ。」
「なにそれwあたしの事好きじゃんww」
「はぁ?!す、好きじゃねぇよ!!」
「でもそれはあたしもだよ。…あのゲームを知ってる人に初めて会ったからって言ったけど、それプラスね、あんたを見かけた時、知りたいって思ったんだ。だから声かけた。」
「……は」
「1人で抱えてくには怖くて、誰かに聞いてほしかったっていうのもあるけど。でも多分、あそこで見つけたのがあんたじゃなかったら声かけてないと思う。」
んだよ、それ。そっちの方が俺の事好きじゃねぇか……。
「あ、ナムギュ、あそこソフトクリーム屋ある、行こ。」
少し顔を赤くしたセミが逃げるようにソフトクリーム屋へ走る。
少し遅れて俺も追いかけるが、さっきの言葉が頭から離れない。
俺以外だったら声をかけてなかったって……そんなの、俺だったから声をかけたって事だろ??
「ナムギュ、何食べる?」
「え……普通のでいい」
「そ。すみません、バニラ2つください」
なんでそんな普通な顔してられるんだよ。
意識してんの俺だけか?
いや、だったらなんで顔赤くしてたんだよ。
なんでもない時間を過ごし、太陽が沈んできた頃。湖が見えるベンチに座り、沈んでいく夕陽を見る。
こいつと並んで座って夕陽を見る日が来るなんて思いもしなかった。
「ねぇ、賞金何に使ったの」
「返済」
「それ以外で」
それ以外って言われてもな……。
ゲームが終わって山分けになった賞金で借金はどうにか出来た。
どうにかしてからは……。あそこでの出来事がトラウマになって、残った金をなにに使うかなんざ考える余裕無かった。
「……なにもしてねぇよ。そういうお前は。」
「あたしも使ってない。…使い道が分からない。」
チラ、と見たセミはどこか寂しそうな顔をしていた。
「………普通の事に、使えばいいんじゃなねぇの」
「…!!」
だから気づいたら柄にもなく、そんな事を言っていた。
セミは驚いた顔でこちらを見る。なんとなく気まずくなり目を逸らし湖を見る。
「っぷは!w」
「は?なに笑ってんだよ!」
「だって、あんたからそんな言葉が出るなんて思わないじゃんw」
それ言ったらお前だってそんな顔して笑うなんて思ってねぇよ!
「はぁ、でもそうだね。じゃあ次はカフェ行こうか。」
「いんじゃねぇの。」
「いんじゃねぇのって、あんたもだけど?」
………はぁ?!?!
「俺もかよ!行くって言ってねぇだろ?!」
「でも来てくれるでしょ?」
「ぐっ……」
勝ち誇ったような顔をするのが腹立たしい。
なんか、なんか俺こいつに弱くなってねぇか?!絆されすぎだろ!!!
「そろそろ帰ろ。」
セミが立ち上がり歩き出したから、俺も釈然としない気持ちのまま歩き出す。
誘われて満更でもねぇ俺がいるのがムカつく。
「じゃ、今日はありがとね。」
「…おう」
改札を通ろうとして、思い出したように振り向きニヤニヤとした顔を向ける。
嫌な予感しかしねぇ。
「ね。あたしあの時のあんたは嫌いだったけど、今のあんたは嫌いじゃないよ。じゃーね」
それだけ言うと人混み紛れて改札の先へ行った。
なんだ、なんなんだあいつは!!
あいつと出会ってから、会うようになってから俺は振り回されてばっかりだ。
胸はドキドキしてるし、嫌いじゃないと言われ嬉しいと感じてるのも認めたくない。
それに、次会うのが楽しみだなんて……絶対に認めねぇ。