♡ありがとうございます‼️
START
ーーーーーーーーーーーーーー
🕸第2話:試練×忠誠
夜が明けても、倉庫の空気はまだ冷たかった。
ゴンは床に座り、腕の傷を無言で見つめていた。
包帯などない。だが、その肉体はすぐに再生を始めている。
異常な回復力。それもまた、彼の“異質さ”の一部だった。
「治り早ェな……化けモンかよ。」
フィンクスが呆れたように笑い、マチが針を片付ける。
彼女の糸は、既に試し切りすら通じなかった。
「筋肉の繊維が常人と違う。念で作り直してるような感じ。」
「つまり、“壊しても戻る”か。」ノブナガが呟いた。
「壊れねェより厄介だな。」フィンクスが吐き捨てる。
そんな会話を背に、ゴンは立ち上がる。
目の前にはクロロがいた。
その手には一冊の本――「盗賊の極意」。
「試練を与える。」クロロの声は静かだった。
「お前が“蜘蛛”であることを証明してもらう。」
ゴンは黙ってうなずいた。
「なにをすればいいの?」
「一人、試す。お前が誰よりも強いと、俺たちに信じさせる。」
クロロの指先が動く。
次の瞬間、倉庫の空気がねじれた。
現れたのは――ヒソカ。
赤色 の髪がゆるく揺れ、口元に笑み。
トランプを指で弾きながら、楽しそうにゴンを見つめる。
「やぁ……初めましてだね、ゴンくん♠。」
その声には狂気と甘さが混じっていた。
ゴンは一歩も引かない。
ただまっすぐ、彼の目を見据えていた。
「“試練”って、もしかしてこの人と……?」
「あぁ。」クロロは冷静に言う。
「ヒソカ、お前に任せる。」
「了解♡」
ヒソカのオーラが一瞬で変化する。
弾けるような殺気。空気が爆ぜ、倉庫の壁が軋む。
旅団の何人かが距離を取る。
ゴンは静かに息を吸った。
その瞬間、空気がひっくり返る。
放たれたオーラの色――七色。
強化、放出、操作、具現化、変化、特質。
すべての系統が、同時に存在していた。
ヒソカの笑みが深まる。
「あぁ……ゾクゾクする。」
目にも止まらぬ速度。
ヒソカの手首が動くたび、トランプが空気を切り裂く。
ゴンはそれを強化系の反射で弾き、操作系の糸で軌道を変え、
具現化した盾で受け、変化系の雷で反撃する。
それはもはや“戦い”ではなく、奇跡の演算だった。
ヒソカのトランプが頬を掠め、血が一筋流れる。
だが、ゴンの表情は変わらない。
「ヒソカ……俺、本気で行くよ。」
次の瞬間、空間そのものが歪む。
特質系の力――“円”が、まるで次元を折り曲げるように展開された。
ヒソカの姿が、目の前から掻き消える。
ゴンが拳を構える。
オーラが集中し、空気が爆ぜる。
「――“神速掌・万象”!!」
衝撃。
ヒソカの体が弾き飛ばされ、壁を突き破った。
だが、次の瞬間には笑いながら立ち上がっていた。
「やっぱり、キミは最高だね♡」
ゴンの拳はまだ震えていた。
怒りでも恐怖でもない。
ただ――戦うことの“歓び”。
クロロはその光景を見つめ、心の中で呟いた。
(この少年は、蜘蛛を壊す。だが同時に……新しい形に再構築する。)
ゴンが息を整え、振り返る。
「これで、“試練”は終わり?」
「あぁ。」クロロは微笑んだ。
「合格だ、ゴン。」
その瞬間、旅団の空気がわずかに変わった。
誰もが、目の前の少年を“仲間”として認め始めていた。
だが――その背後で、ヒソカだけが違う笑みを浮かべていた。
「団長。
この子、死ぬときは、ボクが殺していいよね♦︎?」
クロロは微笑みを返すだけだった。
倉庫の天井に朝日が差し込み、光が蜘蛛の影を伸ばしていく。
新たな“絆”が、血で結ばれるように。