テラーノベル
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数日後、元貴が寝ようとした深夜の時間帯。
ピンポーン
インターホンが鳴った。元貴が出ると涼ちゃんで、涼ちゃんらしく、一緒に寝たかったんだ。と言って部屋に入ってきた。
元貴は承諾して、すぐにベッドの布団を整える。
布団に入っても、すぐに眠れるような空気じゃなかった。
隣には涼ちゃん。
いつも通り穏やかな空気をまとっている。
流れのまま、藤澤は少しだけ息を整えてから話し出した。
「……あのさ」
一瞬だけ迷うような間。
「これ、元貴にしか言わないけど」
元貴は、「なに」と返す。
藤澤は小さく笑う。
「僕、若井のこと、ちょっと好きなんだよね」
さらっと言った。
でも軽くはない。
ちゃんと選んで出した言葉だった。
一瞬の沈黙。
元貴はゆっくり顔をしかめる。
「……え?」
理解が追いつかない、という顔。
「涼ちゃんほんと?」
うん、と小さく頷く。
「別に大げさな意味じゃなくてさ」
「気づいたら、目で追ってるっていうか」
「放っとけないなって思う感じ」
元貴は呆れたように息を吐く。
「あんなやつのどこがいいの?」
間髪入れずに出る言葉。
「ずっとニコニコしてるだけで、何考えてるか分かんないし」
「むしろ好きになるところある?」
藤澤は否定しない。
ただ、少しだけ優しく笑う。
「うん、元貴がそう思うのも分かる」
それでも、静かに続ける。
「でも僕はさ、あの“誰にでも同じでいようとする感じ”が、逆に気になるんだよね」
「無理してるの、分かるから」
元貴は眉をひそめる。
「無理してるように見えないけど」
「見せてないだけだと思うよ」
淡々と言う。
「だから余計に、気になる」
少しだけ間を置いて、
「……変かな」
と小さく付け足す。
351
419
ろと。
18,348
キヲヌイテ。
50
元貴は鼻で笑う。
「変だじゃない?」
即答。
「普通もっと分かりやすい方がいいでしょ。」
「なんでわざわざ若井?」
言いながらも、どこか納得していない顔。
藤澤はその反応に、少しだけ肩をすくめる。
「まあね」
軽く笑う。
「でも僕は、ああいうタイプ、嫌いじゃない」
その言い方はやわらかいのに、ちゃんと芯があった。
元貴はそれ以上何も言わない。
ただ、さっきより少しだけ考える時間が長くなっていた。
若井の顔と、藤澤の言葉が、頭の中で重なり始めていた。
少しの沈黙のあと、元貴は面倒くさそうに息を吐いた。
「……まあいいや」
寝返りを打ちながら、ぼそっと言う。
「応援しとくね。」
軽い調子。
本気で背中を押す気も、深く考える気もなさそうな言い方だった。
隣で藤澤は、小さく「ありがと」とだけ返す。
それ以上は何も言わない。
でもその声は、どこか少しだけほっとしていた。
元貴はそのまま目を閉じる。
会話は終わったみたいに静かになる。
少し間が空いたあと。
藤澤は天井を見たまま、ひとりで少しだけ息を吐く。
(……ごめん、若井)
心の中だけで呟く。
さっき言った「好き」は、半分嘘だった。
いや、“恋愛としての意味”では違う。
でも、気持ちが全くないわけでもない。
若井のことは、大切だと思っている。
友達としても、メンバーとしても。
放っておけないし、ちゃんと笑っていてほしいと思う。
ただ、ただ。
(元貴が、少しでも考えてくれたらいいなって)
それが一番の理由だった。
強く否定し続けている今のままじゃなくて、
ほんの少しでも“違う見方”を持ってくれたら。
そのきっかけになればいいと思って、あえてああ言った。
押しつけじゃなく、でも無関心でもない形で。
隣からは、元貴の規則的な呼吸が聞こえ始める。
もう寝たのか、それとも寝たふりか。
分からない。
涼架は目を閉じる。
(……うまくいくといいな)
誰にともなく思いながら。
その願いだけが、静かに部屋に残っていた。
コメント
3件
🐶さんすごい、mtpのおすすめに作品ふたつとも乗ってた、これからも応援してます!更新早くて中身も濃くて、ほんとに尊敬😭
うわ、涼ちゃん…!! さっきまであんなに平和そうな雰囲気だったのに、まさかのカミングアウト…でもそれが元貴への“布石”だったっていうのがめっちゃ胸にくるな…。「半分嘘」って呟くところ、ちょっと切なくて好きです。涼ちゃんの優しさがじわじわ刺さる回だった…!