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桃目線
仕事が一区切りついて、スマホを見るとるぅとから写真が来ていた。今日はるぅととお出かけしてるから、おおかたジェルのだろうと見てみる。
「っ」
そこには、クレープを両手に持って口いっぱいに頬張っているジェルが写っていた。頬にはチョコソースをつけて、不思議そうにカメラを見ている。 ・・・かわいい!チョコいちごにしたんかな、今度俺も買ってやろ。
早速ジェルにメッセージを送って、るぅとにお礼を送った。すぐに返事が返ってきて、ジェルが楽しそうなのが文面から分かった。早く帰ってきてほしい気持ちと楽しんでほしい気持ちが同時に出てきて
・・・困ったな、早く会いたい方が強い。
普段ならこの時間はジェルが『さとちゃん休憩!』って言ってきてくれる時間だ。 さすがに、一日離れるのも許さないほど狭量なわけではない・・・と信じたい。
『こつこつこつ』
『がやがや・・・』
ジェルの鞄に入れている盗聴器から、ジェルとるぅとの足音が聞こえる。他にも賑やかな電子音が聞こえてきた。どこか店でも入ったんかな。
普段、ジェルが俺なしで出かけるときは盗聴器から様子を見ている。もちろん、ジェルから許可はもらっているし、もはやBGMのような感覚だ。でも今回は、『俺の声聞いちゃダメ!』と可愛らしいお願いがあった。だから特注で、声だけをシャットアウトするものを作ってもらったんだ。盗聴器つけないでって言わないあたり、可愛いだろ?人から見れば監視でも、ジェルからすればそれはもう安心だ。実際、聞いてることでジェルのピンチ(ナンパなどなど)を察知できているし、その度に助けにも行けてる。助ける方法は、まあ・・・色々あるよね♡
でも、今日は声を聞いちゃだめだからちょっと寂しい。帰ったら教えてくれるかな。
「ジェール・・・」
呼んでも返事はなくて・・・まあ当たり前なんやけど。
俺は寂しさを忘れるために仕事に没頭した。その過程で、趣味のデザインをそれもジェル用に作ってしまったのに気づいたのは、ジェルが帰ってきてからだった。
「さとちゃん!お昼ご飯抜いたやろ!もう、俺がいないからって食べないとだめやで!」
「ジェ~ル・・・」
「わっ、抱きしめてもごまかされないからな!」
俺の腕にすっぽり納まるジェルを見て、一息ついた。あ~、これこれ。 ごまかされないと言いつつも俺の背中に腕を回して抱き返すジェルは文句なしに可愛い。
「ジェル、今日は何してたの?なんか嫌なことなかった・・・?」
「大丈夫、何にもなかったで!あ、そうや、」
ジェルが俺の腕をすり抜けて、何か小さな袋を持ってきた。なんだ、アクセサリー? ジェルは嬉しそうに袋から箱を出して、俺に差し出してくる。
「さとちゃん、今日ね、るぅちゃんと一緒にプレゼント買いに行ってたの」
「俺に?」
「うんっ」
開けると、そこにはシンプルなネックレスが入っていた。シルバーで、先にリングが2個ついてるやつ。早速つけて、ジェルの方を見る。あ、ジェルに着けてもらえば良かった。ジェルは俺が着けたのを見て、満足そうに顔をほころばせている。
「どう?」
「似合っとるよ、さすが俺」
「そこは俺じゃねーのかよw」
「選んだの誰だと思っとんの?」
「ふっ、そうだな。ありがとうジェル、大事にする」
リングの部分をもって、ジェルにお礼を言うと、ジェルは顔を赤らめた。そんなに似合ってるの?毎日着けるわ。
あ、そうそう
「ジェル、見て」
「これって・・・!」
「ジェルがいなくて、気付いたら描いてた。これ作ったら着てくれる?」
「うん、着させて!」
書き上げていたデザインをジェルに見せた。嬉しそうな顔で『着たい』と言ってくれるジェルを抱きしめる。私用で製品化するわけじゃないから、役員会に通す必要もないだろう。莉犬にお願いして作ってもらって、その時にるぅとに髪もセットしてもらおうか。 ジェルの髪を一房手に取って、長さを見た。長いのもかわいいけど、いつものジェルがいい。そろそろ切ってもらってもいいころだしな。・・・ふむ。
「そういやジェル、るぅとって何かバイトしてんの?」
「え?探してるって言っとたで?」
「ふーん・・・ジェルは、るぅとも家に来るの嬉しいよな?」
「うん、そりゃね」
決めた、るぅとを雇おう。ヘアデザイナーとして。会社にそろそろ一人専属が欲しかったところだ。まずはアルバイトとして雇用して、卒業したら正規に誘うか。もしかしたら勉強したいって言うかもしれないが、それならアルバイト期間を継続すればいい。
「さとみ、俺さとちゃんと一緒にいるのが一番好きやで?」
「ジェル、」
少し不安そうな顔で俺を見つめるジェル。俺がるぅとを囲うと思ってるの?そんなことしないよ、俺はここにはジェルがいれば充分なんだ。 抱きしめているジェルに軽くキスをして、ほほ笑んだ。
「んぅ、」
「ジェル、るぅとをバイトとして雇いたいなって思ったんだよ」
「っ!」
「ジェルが喜ぶからだけじゃねぇよ。俺もあいつの腕は認めてるし」
不安そうな顔から一気に、嬉しそうな顔になる。俺もジェルも、るぅとに断られるとは思ってない。あいつの夢は知ってるし、そのためにも俺の会社はちょうどいいはずだ。それに、あいつジェル好きだし。兄弟愛なら俺も止めんよ、うん。ちょっと妬くかもしれんけど、
「あと、これ着るときるぅとに髪頼もっか。そろそろっしょ」
「うん!」
「っし、じゃあ飯食いに行くぞー」
ご飯は基本、ジェルが作るから今日はない。たまには車でも出そうか悩んでいると、ジェルが抱き着く力を強くした。それに気づいたから、俺もまた抱き返す。
「どしたー?」
「ぁ、のね、」
「んー?」
俺としては、ジェルの姿を見て安心して腹ペコなんやけど・・・朝から食ってないのよ。それでもジェルが何か言いたそうにしているのを見過ごせない。
赤くした顔を上げて、ちょっと潤んだ目で恥ずかしそうに俺を見る。ちょ、ジェル、僕まだその顔妄想でしか見てないんで耐性ないんですよ。
「さとちゃん大好き・・・っ」
「っ、」
固まる俺から、ジェルはさっと離れて『外だよね?お腹空いたし行こ?』と言って手を引いてくる。なに、今の・・・。エッチなこと教えた時とはまた違う破壊力がある。
別に、ジェルは普段から俺に好意を伝えてくれるから、言われたこと自体は特段不思議はない、はずだ。なのに、ジェルの顔が違うだけでこんなに、
「ジェル、」
「なあに」
「好き、大好き」
「ふふ、知ってる」
ジェルはもう照れないのか、俺の手にほおずりしたまま返してくる。 だめだ、惚れ直した。心臓がドクドク言ってる。今日ジェルを出したくねえな・・・
ジェルが持っている手とは反対の手をジェルの腰にまわして引き寄せた。そんな嬉しそうにしないで、俺止まれなくなっちゃうから・・・くそ、嬉しい、
「ジェル、今日は俺が作るから・・・家で食べよ」
「さとちゃん作ってくれるの?美味しいから楽しみ~」
「ジェルの好きなの作ってやるよ、だから・・・」
「うん、家で食べよ?さとちゃん」
ジェルの返事を聞いて満足した俺は、漸くジェルから手を離した。 そんな寂しそうな顔しなくても、今日は全部俺が食わせてやるよ。
後日、ジェルのために作った服に喜んだころんから頬にキスをされて、皆がいる前でジェルにキスをした。恥ずかしがったジェルから平手打ち(めっちゃ軽いやつ)を初めて食らって、嬉しくなった俺が記念にケーキを買って更に怒らせたのには未だに皆からいじられている。
次回♡500
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