茈赫 百
月食バース
茈 赫 満月
百 欠け月
…簡単に言うと欠け月型は満月型の方2人と結ばれないと死んじゃうよ~ってやつです()
百side
俺は〝欠け月〟型だ。
身体の機能の1割程度しか働いておらず、病院からはほぼ出られない。
「…(外見)」
生まれてから17年間、外を走り回ったことも、歩いたことすらもない。
あと3年経っても俺と同じ、核のカラータイプである満月型を見つけなければ死んでしまう。
「…(俯)」
もうとっくに諦めているんだから、殺して欲しい。
春が来た。
桜の花びらが窓を開けていると数枚入ってくる。
「…誕生日、」
俺の誕生日は4月18日。
他の〝欠け月〟よりも早く20歳になって死ねるから当たりなんじゃないか、と最近になって思い出した。
親は、俺が〝欠け月〟と分かってからはすぐに施設に入れた。
お金がかかるからだ。しょうがない。
「…(桜 手弄)」
誕生日、と言ってもかと1ヶ月はある。
…さっさと死んで、他の困っている〝欠け月〟にこの病室を譲ってあげたい。
なんて、お医者様に言ったら怒られそうだ。
桜の花びらもほとんど落ちてきて、少し寂しく思ってきた頃、看護師さんがたくさん病室に入ってきた。
誕生日でもなければ、特別な手術がある訳でもない。
なんだろう。
「百くんっ、いいお知らせよ!(笑顔)」
…この看護師さんは〝満月〟だろうか、〝半月〟だろうか。
別にどっちでも、好きに暮らせるんだから羨ましいに変わりは無いけど。
「百くんのパートナーが決まったの!」
「ぇ、?」
話を聞こうともしていなかった俺の耳が、嘘みたいな言葉を拾った。
「百くんの綺麗な核の色にそっくりな〝満月〟が、2名!」
「…俺に、パートナー、?」
信じられなかった。
そもそも、同じような核が見つかる確率はほとんど無い。
見つかる前に死ぬ〝欠け月〟が8割なのだから。
「…ほんとに、?(泣)」
死ぬと思って、諦めていた。
無駄に生きるくらいなら、さっさと死んでしまいたかった。
「相手の方も快く承諾してくださっているの!今週中には会いに来れそう、って」
なんでだろう。
諦めていたのに、
「ぁッ、うぁっッ…(泣)」
「百くん…今まで良く頑張ったわね(頭撫)」
看護師さんたちが自分の事のように喜んでくれた。
たくさん、たくさん。
こんなに、生きることができるということが、嬉しいなんて。
数日後、約束の日が来た。
「百くん、パートナー候補の方と会っている時に何か困ったことがあったらナースコールをすぐ押してね。」
「はいっ、ありがとうございます(笑顔)」
あれから俺は自分でも自覚するほど、よく笑うようになっていた。
「頑張ってね」
「はいっ!」
「ふふっ…それじゃ、呼んでくるから(微笑)」
「はい…!(笑顔)」
今まで、お母さん代わりと言っても過言ではないほど、俺の世話をしてくれていた看護師さんが安心したような笑顔で部屋を出ていった。
1人になると一気に緊張してきた。
「…」
久しぶりに意味もなく窓の外を見る。
桜の花びらは全て落ちきっていて、緑色の葉が、こちらを覗きかけている。
_コンコンッ(扉)
「…!!はいっ」
部屋の扉が叩かれ、大きな声で返事をする。
扉が大きな音を立てて開かれるのと同時に入ってきたのは、なんだか怖そうな男の人2人だった。
?「…お前が百?」
百「はい、!」
怖い。
え、こんな人が俺のパートナーなの、?
殺されそうなんですけど…
?「…ほら、指噛むぞ。」
百「ぇ、」
?「さっさとしろ、2人とも噛まなきゃなんねぇんだから。」
百「でもっ、 」
指を噛む、ということは正式にパートナーとして過ごしていく、という事だ。
俺にとっては好都合でしか無いけど、この2人は本当に俺でいいのだろうか。
?「…俺らはお前で良いから。…お前がいいから。」
?「はい、薬指。」
紫髪の人が俺の左手を手に取った。
百「…ほんとにっ、?」
?「あ~、もうっ、」
そういって茶髪の方の男が口の中に俺の指を突っ込み、優しく噛んだ。
?「っ…、意識飛ぶなよっ」
百「…ぁ、」
薬指を噛まれた。
身体に不思議な感覚がはしる。
百「ふぇ、?」
?「…」
掴まれていた左手にも優しい痛みが走る。
薬指を噛まれた。
百「ぁ…、」
身体がはじめて自分のものだと分かった気がした。
指先に、足先に、感じたことの無い感覚がそっと、優しく宿っていく。
?「ちょっとは楽になったか?」
?「顔見た感じだいぶだな(笑)」
いまさっきまでのなんだか少し怖い雰囲気からはがらっと変わって優しい雰囲気を感じる2人。
百「…お名前は、」
?「茈」
?「赫」
素っ気ない態度で答える2人。
ちょっと寂しい。
百「…あの、ありがとうございます」
茈「別に…、俺らが勝手にしたようなもんだし」
赫「…」
…優しいんだろうな。
言い方は素っ気ないままだけど俺の事を心配してくれてる気持ちは伝わる。
看「百くん~、入るわね~」
軽く扉をノックして、看護師さんが入ってきた。
看「…百くん、もう契約したの、?」
俺の雰囲気がいつもと違ったんだろう。
少し顔を見られただけで気づかれた。
百「はいっ、!」
看「まぁっ…(目輝)」
すごく嬉しそうな顔をしている。
優しいな。
看「おふたりとも、百くんのこと宜しくお願いします(微笑)」
赫「…(頷)」
茈「…はい」
やっぱこいつらつんつんしてんな…
看「…メールの文章を見て想像してた方とだいぶ雰囲気が違って少し驚きました(笑)」
へ?
看「百くんの写真見て、一目惚れしてくださったんですよね?」
へ、!?!?
赫「…!!(照)」
茈「…そうですけど」
百「え、!?」
看護師さんがにこにこしながら俺を見た。
看「たくさん愛してもらってきなさいね」
百「…はいっ(微笑)」
数日後、俺は直ぐに退院が決まり、茈と赫の家に住むことになった。
茈「…今まで百のこと、ありがとうございました」
赫「…(礼)」
百「また顔見せに来ますね~(笑顔)」
看護師さんとお医者さん、皆さんに挨拶し終わり、早速おうちへと向かい始めた。
茈「…車、初めて?」
百「はいっ!」
赫「シートベルトちゃんとしめろよ」
駐車場に向かいながら話しかけてくれる2人はとても優しかった。
?「赫ちゃ~ん!こっちこっち~(手振) 」
大きい車…6人用くらいだろうか、の運転席に座っている緑髪の男の人がこちらに手を振っている。
赫「百、あっち」
赫さんに手を握られた。
なんだか嬉しい。
茈「…」
空いていたもう片方の手が茈さんに握られる。
嫉妬してくれたのだろうか。
ちょっと可愛い…。
赫「ありがと翠、助かったわ。(笑顔)」
茈「んじゃ百、車乗るぞ。」
赫さんと、翠さん、?が話している間に茈さんに手招きされて車のドアへ向かう。
?「わ~!この子が百くん?(目輝)」
?「かわいい~!!(笑顔)」
ドアが開くと、中には2人、男の人が座っていた。
車の座席
黈 翠
瑞 荷物
赫 百 茈 (後ろ三人乗り)
?「はじめまして!百くん!瑞って言います!!(笑顔)」
全員が車に乗ったあと、水色髪の元気そうな男の子が挨拶してくれた。
?「おれは黈ですっ、よろしくね(笑顔)」
1番前に座っている黄色髪の優しそうな子が続けて言ってくれた。
翠「運転担当の翠です(笑)」
運転席から、翠さんとミラーを通して目が合った。
この人もとても優しそうだ。
百「ぁ、えっと、百です、!よろしくお願いします…!」
緊張して上手くうごかない舌を一生懸命回して挨拶する。
こんなにたくさんの人と一気にはじめましてするのは、病院の学校ぶりだ。
黈「赫っちゃんと茈せんせいが一目惚れするだけあって可愛い子やね~(笑顔)」
瑞「黈ちゃんの次くらいにほわほわしてる(笑)」
車が動き始めてからの最初の話題。
…気恥ずかしい。
赫「うるせぇな…(笑)」
翠「照れちゃって~(笑」
全員とても仲が良さそうだ。
こんなところに俺が入って邪魔じゃないのだろうか。
茈「…お前すぐ自責思考にすんの辞めろよ。」
百「ぇ、?」
茈「…なんでもねぇよ、」
こまめに俺の方を見てくる茈さん。
心配してくれてるのだろうが少しやりづらい。
翠「…あ、5人でシェアハウスしてるの聞いた?」
百「ぇ、いや何も聞いてないですっ、」
新情報。
シェアハウスするほどの仲の良さ。
黈「実は俺も〝欠け月〟なんよ~(笑)」
百「え、!?」
さらっと黈さんが流しながら言う。
まさかの事実に少し大きな声が出てしまった。
瑞「瑞と翠っちーが〝満月〟で契約してんの!」
翠「赫ちゃんと茈ちゃんに言いにくいこととかあったら黈ちゃんに言いなね(笑顔)」
なんだか少し安心する。
〝満月〟とか〝半月〟だらけの人達ばかりだと思っていた。
茈「初めは俺と赫と瑞と翠で住んでたんだけど1年くらい前に翠と瑞が契約者見つけてきてきて黈が来た。」
なるほど…ほぼ俺と同じ状況ってことか。
百「黈さん、改めてよろしくお願いしますっ、!」
黈「うんっ!よろしくね~!百くん!(笑顔)」
仲良くなれそうで良かった。
翠「よし、着いたよ~!俺らで百さんの荷物運んじゃうから、赫ちゃんたちは先家入ってていいよ(笑顔)」
茈「まじ?さんきゅな」
百「ありがとうございます(礼)」
赫「っし、行くぞ~(手握)」
駐車場の時みたいに赫さんに軽く手を握られる。
すかさずもう片方の手を茈さんが握ってきた。
茈「…お前いまさっきから抜け駆けしすぎ。」
赫「早いもん勝ちです~」
拗ねてる茈さんと煽ってる赫さん。
…すごくかわいい。
百「ふふっ(笑)」
我慢してたのに笑ってしまった。
茈「…早く家行くぞっ(照)」
少し握る力が強くなった。
赫「ここが百の部屋な。」
茈「俺らの部屋ここの横だから、何かあったらすぐ呼べ。」
百「ありがとうございます(目輝)」
初めての自分の部屋。
全体的に桃色で揃えられているのは俺の核の色が桃色だからだろうか。
茈「部屋、気に入った?」
百「はいっ、とてもっ!(笑顔)」
病室とは違った全く雰囲気の部屋。
自分の部屋だなんて信じられない。
赫「んじゃ少し休んでろ。荷物もってくるから。」
百「ぁ、ありがとうございますっ」
初めての外で疲れているのがばれてしまったのか、赫さんに気を使わせてしまった。
茈「すぐ戻ってくるけど、何かあったら呼べよ。」
百「はいっ」
茈さんは心配性なのか、つんつんしてる割にはあまあまだ。
ふたりが部屋から出ていって、改めて部屋を眺める。
百「可愛い…(目輝)」
ほんとに可愛い。
漫画やアニメの世界の部屋みたいだ。
翠「そんなに気に入ってくれてるなら赫ちゃんたちも喜ぶよ~(笑顔)」
百「翠さんっ!?」
翠「急に入っちゃってごめんね、(笑)」
後ろをむくと俺の荷物を持った翠さんが立っていた。
翠「一生懸命選んでたんだよ~?看護師さんからできる限りの好み聞いたりして(笑)」
百「そうなんですかっ…!」
最初に怖そうな人って思っちゃったのが申し訳なくなっちゃうぐらい2人ともいい人だな。
赫「余計なこと言わなくていいんだよっ(照)」
茈「あとは俺らがするからリビング行っとけ(照) 」
翠さんはにこにこしながら茈さんと赫さんを見て、最後に俺を見ると、
翠「相手が赫ちゃんと茈ちゃんで良かったね(微笑)」
優しい笑顔でそう言ってくれた。
赫「ここに服とか入れるわ…って量少ねぇな」
百「ほぼ病院の借りてたので…」
茈「今度買いに行こうな」
百「…ありがとうございますっ」
いや俺甘えすぎじゃない?
大丈夫?
茈「お前、好きなもんとかないの?」
百「…」
好きなもの、なんて深く考えたことがなかった。
看護師さんに二択で質問された時ぐらいだ。
百「…桜」
ほぼ病院でいっぱいの記憶をめぐらせているとふと、桃色の花が咲き始めた。
赫「百って桜似合うよな」
茈「あー、看護師が言ってたわ、春になったら桜ずっと見てるんだろ? 」
好きだから見始めた、と言うよりは暇だったから、に近しいのだけれど。
百「すぐに散っちゃうんです。」
一生懸命咲いても、すぐに散っていく桜の姿が、俺みたいだな、と思ったことがある。
…いや、一生懸命生きたことなんて今までほとんど無いけど。
百「なのに、また次の春には咲くんです。どうせ散るなら意味なんてなさそうなのに。」
俺の考え方はきっと極端なのだろう。
自分でも少し歪んでるんだろうな、と思う。
赫「…百ってネガティブ思考になりがちだよな。」
百「ぁ…すみませんっ好きな物の話なのに…」
珍しく自分の意見を相手に素直に伝えていた自分に驚きながら、失礼なことをしてしまったな、と自分を責める。
茈「散るから綺麗、みたいなとこはあると思うけどな」
ぼそっと独り言のように呟く茈さん。
百「…」
そんな考え、したことも無かった。
赫「あ~、ちょっと分かる。その満開で1番綺麗な時の為だけに咲くみたいな。」
優しくして、感受性が豊かな人達はこんな考え方をするのか、と少し勉強になる。
百「…そうですね。色んな意味で桜が好きです。」
見えないのに、窓の外に桜があるような気がしてゆっくりと窓を開く。
そこにはただの住宅地の様子が広がっているだけだった。
赫side
アニメみたいな一目惚れだった。
翠と瑞をみて、俺らもちょっと探してみるか、と軽い気持ちで探し始めたのがきっかけ。
病院から〝満月〟宛に送られる支援のお知らせの紙からリンクに飛び、いろいろな〝欠け月〟の人たちを見る。
19歳で危ないからその子を拾う、なんて考えはしない。
たしかに可哀想だけれど、愛されないまま無理に生きる方が可哀想だ。
茈「…俺たちの核の色って桃色とか暖色系だろ?顔みて判断するより核から絞り込んでったが良くね?」
何となくただサイトを見ているだけの俺に茈が言った。
赫「たしかに。」
検索機能を使った。
茈「…桃色って優しそうな童顔の奴ばっかだな。」
赫「…」
そうでも無いと思うけど。
みんな拾われたいがために一生懸命いい顔を作ってるだけだろ。
なんて茈に言ったら軽く怒られそうなので黙っておく。
赫「…ぁ、」
にこにこ笑顔の奴らだらけのなかに真顔の、全てを諦めたような真っ黒い瞳の奴が居た。
茈「なんかこいつ特殊だな。」
茈も気づいてそいつの詳細ページへとぶ。
18歳。
重度の〝欠け月〟型。
家族は不明。
赫「…百」
茈「ふ~ん…おれこいつ気に入ったわ」
俺が先に見つけたけどな、と思いつつ俺も、と返事をする。
赫「こいつでちょっと考えてみる?」
茈「おう。…つーかそいつで良くね?」
え、と小さく声が漏れた。
茈がこんなに早く決めると思っていなかったからだ。
赫「…んじゃ病院にも連絡しとくわ。」
俺が先に見つけたのに、茈に主導権をなんとなく握られている気がして少しもどかしい。
こいつが承諾してくれたら、絶対俺のものにしてやる。
百side
荷解きも終わり、茈さんと赫さんも部屋から出ていった。
夜飯の準備が出来たら呼びに来るんだそう。
至れり尽くせりで申し訳ない。
百「ふぅ~…」
まだ自分の部屋とは思えない可愛らしい内装を見ながらベッドに腰かける。
昔看護師さんにもらったもこもこのピンクのパジャマを着てごろんと寝転がる。
契約者さんが優しい人でよかった。
少し心配性すぎる気がするけど。
百「…ねむ~…(目擦)」
病院にいた時は暇すぎてよくお昼寝をしていたからか、身体は睡眠体制に入りかけている。
百「…少しだけ…(目閉)」
そのまま眠ってしまった。
茈side
茈「百~、入るぞ~」
何回かノックしても全く返事が返ってこないので扉を開けて中に入る。
茈「…、!」
一瞬誰もいないのかと思ったが、ベッドの上に不自然な形の布団がおいてあった。
茈「…」
百「…(寝)」
いや寝顔可愛すぎんだろ。
は?
茈「…(写真 撮)」
後で赫にも見せてやろ。
茈「百、飯できたぞ(百 身体揺)」
百「ん、ん~…(眠)」
いやいや、と言うかのように顔を横に振る百。
数時間前のこいつと同一人物とは思えないほどに可愛いが加速している。
茈「…ほら、飯冷めるから(強)」
百「ぅん…、っ!?!?」
俺に気づいたのか一気に目を開いた百。
その反応が可愛い。
百「…すみません、寝てましたっ…」
茈「いや別に…」
あわあわと立ち上がっている百の頭には寝癖がついていた。
茈「…先行ってるから、落ち着いてから来い…飯冷めるのは知らん。」
このまま百と一緒にいたら襲いそうで怖い。
百side
茈さんも、赫さんも、
百「優しいなぁっ…」
長いので切ります
気が向いたら続き出す…()
コメント
4件
ありがとうございますm(_ _)m 📢🍍×🌸ッッッ神ッッッ✨ 月食バース?初めて聞いたけどすごい癖に刺さりまくりました!ww 📢🍍×🌸もいいけど🍵🦈×👑も気になるっ(♡~♡) 主様が気が向いた時まで待ちます!