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どうか彼らにとって花火大会が

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どうか彼らにとって花火大会が

1 - どうか彼らにとって花火大会が

♥

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2025年05月05日

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iris 様 .


自己解釈 .


桃赤 .










赤 side .









2024 . 9 . 20




_ ヂリリリ ッ



うるさく鳴る時計をみつめる

時計を止める。

結局今日も寝れなかったな

鏡越しに映るしらけた顔。


赤 「よかったー」


この顔が変わってなくてよかった。

これが俺だから。

まだ 俺は俺を見失ってない。


_ ピコンッ


赤 「おはよー 桃くん !」

桃 「お 赤ーーー!!」

桃 「おはようーー!!」

赤 「朝から元気だね笑」

桃 「今日はいい調子ーー!!」


ああ、かわいいなあ、

狂ってしまいたい程 かわいくて 愛おしい

画面越しでも 愛おしいのは 何故だろう

でも そんな彼だからこそ


赤 「っ… 。」


こんな恋じゃ叶わないなんて苦しいなあ、

心の奥が圧迫されて萎縮して

石みたいに固まって動けないような

それを取り繕わなきゃやっていけないような

上手く笑わなきゃいけないような

苦しい苦しい恋。

君の右隣じゃなくて

左隣には立たせてくれない ?

心臓がある大切な左側を

俺に守らせてはくれない ?


赤 「っ笑」


まあ期待しただけ傷付くだけだけど。

夜になってもう寝なきゃいけない時間。

昨日寝付けなかったから今日寝ないと

学校でばれちゃう

でもどうしよう例えば

明日君に連絡をして返信が 来なかったら

既読だけついて、返信が無かったらどうしよう

そのとき俺はどうする ?

そのとき俺はどうなる ?




2024 . 9 . 21


またうるさく鳴る時計をみつめて止める。

結局、今日も寝れなかった。

昨日寝付けずに夜中に送った


「また明日ね」


まだ既読も返信もない。

学校の支度しないと、と

重い鉛のような体を持ち上げる 。


支度が終わった頃には 

既読もついて返信があった。


桃 「赤 おはよう!!」

桃 「今日って持ち物あったよね!!?」

桃 「持ち物なんだっけ!!!」


朝から元気でかわいい彼のメール


赤 「桃くんおはよ!」

赤 「進路希望調査表じゃない ?」

桃 「うっわ それだ 天才」

桃 「神すぎ ありがとう!!!!!‎」

赤 「いいえー笑笑」


喜びより先に安堵がきてしまった俺は

ほんと だめだなぁ


桃 「てかさ、赤」

赤 「んー?」

桃 「最近さ、なんかあった?」

赤 「え?笑」

赤 「なんもないよ?笑笑」


ああ 君が知ってしまう。

ちゃんとちゃんと笑わなきゃ

ただでさえ不利な立ち位置なのに

こんなとこ知られたら絶対…. 、


赤 「どうしたの?桃くんこそ急に」

桃 「ん、いや勘?笑」

赤 「勘なの?笑」

桃 「じゃあ 俺そろそろ支度するね!」

赤 「りょうかい!」

桃 「また 学校で!」

赤 「うん、またね!」


朝のメールが終わるのはいつも彼から。

俺は いつまでも続けたいから

いつも 前日に支度は終わらせてる。

でも 会話が終わってから鏡をみて、ひとつ。


赤 「っ、」


自分の頬に両手をあてて

口角を無理矢理あげてみる。

大切が 壊れないように 失わないように

見失わないように。

幸せになれますように。って

底なしの 不安なんて押し潰して

口角あげて笑おうよ 明日の俺。


赤 「っ”、ぅぅ、」


こんな声なんて出すなよ

笑い声 出せよ

ほんと、何やってんだよ、俺。








学校からの帰り道を毎日歩いてる道を

俯き気味にいつも通り歩く 。

なんか、今日手繋いでる人たち多いな 。

浴衣着てる人も沢山いるし、


赤 「あ、そっか」


今日花火大会か、

暗い夜に咲く色鮮やかな花。

空に楽しそうに舞っている花火を

綺麗と思いたかったけど、

俺には無理だ。

どうしようもなくなって

いつの間にかその場を離れてた。

家に帰ってた。




もう、君は俺の呪いだよ。

あきらめなきゃ、忘れなきゃいけないのに

忘れてって 言われたのに

あのときの無造作な電信音が

頭の中で鳴り響いて鳴り止まない。





































__ 1年前 2023 . 9 . 21




彼氏の桃くんから電話がかかってきた。

その日は花火大会の日で

” 行けなくなった “ って

その日に連絡がきたから

ちょっと怒ってた。そんなとき。

まだ何かあるのかと少し怒りを含みながら

応答に指を動かす。

はじめに鼓膜を鳴らしたのは

桃くんの呼吸。

荒くて乱れてて苦しそうな呼吸。

なにかがおかしいって思った。


赤 「桃くん?桃くん?どうしたの?」


焦りを含みながら問いかける

この問いに対して彼からの答えはなかった。


桃 「っは 赤っ、」

赤 「!!桃くん!!」


長らく声がきこえなかった

桃くんの声をきけて少し安心する。


赤 「ねえ どうしたの!!?」

赤 「何があったの!!?」

桃 「…、」

赤 「ねえ 桃くん!!」

桃 「…ごめん、っ笑」

赤 「は… っ、?」



_ッ ツーツーツー



赤 「ねえ 桃くん!!桃くん!!!」

赤 「うそ なに どうしたの!!?」

赤 「ねえ、ねえ!!!!」


頭で考えるよりも先に

体が桃くんの家に向かってて、

着いたときは

桃くんの家は警察やら人やらで囲まれてた。

人混みを掻き分けて叫びながら

桃くんの家へ入ろうとする。

入ろうとしたけど止められる。


赤 「ねえ!!桃くん!桃くん!!」

赤 「何があるの!!何があったの!!?」

赤 「ねえ 答えてよ!!!」

赤   「桃くんっっ!!!!!!!」


家に向かって叫んでも

君は答えてくれない。

君の声すらきこえない。


答えを求めてない人に

残酷な 無慈悲な 現実を教えられる。







__ 「少年が親からの虐待で心肺停止」













 
















































_ ツーーー




赤 「ぁ、ああ、」




なんで




赤 「なんで?」



赤 「なんで 桃くん」



赤 「なんで なんでよ」




無造作に鳴り響く君の心音

画面に映られた心臓の鼓動の動きは

ただなんもない静かな海のよう。

それが俺に現実を突きつけてくる。

無駄に大きい病室の中

鳴る心音の音が煩わしくて

怖くてそれを紛らわせるかのように

俺の泣き声が鳴り響く。

誰もいない病室の中

布で顔を覆った君に縋り泣く。

警察の方が病院に着いたあと渡してくれた

彼の文字がかかれた 小さな紙きれ 。






彼は父親に虐待をされていたらしい。

母親は味方でずっと一緒にいたけど

その日はひとりで実家に帰っていた。

そんなとき彼奴が桃くんを

殴って 蹴って

挙句の果てに首を絞めて殺した。

数え切れないほどみえる痣。

焼かれるようについてる火傷の跡。

首についてる 生々しい傷跡。

それが全てを物語ってる。



















































































” 幸せな花火大会にできなくてごめん “



小さな紙きれに書いてあった 

たったひとつの

それだけの言葉。

いつもより雑にかかれてて

汚くてでも桃くんの字で

あたたかくて優しい 

彼の人柄を表すような 

文字がかかれてある紙を

優しく握って彼に泣きつく。











ねえ俺どうすればいいの?

どうすればよかったの?







































赤  「っはぁ、」



思い出さないようにしていたのに

毎日君の幻想をみるくらいに

俺はもう狂っているのに

こんなにあの日のことを鮮明に思い出したら

もう俺、なんもできなくなっちゃうじゃん








夜に咲く花の音と

人々の歓声が鼓膜を震わせる

小さな紙きれを読んで 

頬に雫があたって

もう我慢できなくなった。



























もう孤独な暗い夜は嫌だよ桃くん。





































































































































とうとう俺は本当に狂ったんだと思った。

ただの都合のいい幻だと思った。




赤  「っぁ 桃、くん…っ?」

赤 「ねぇ、桃くんなの?」

赤 「ほんとに 桃くんなの…っ?」

桃 「…、」

桃 「、笑」

赤   「!…っ」

赤 「ぁああ…っ!」




彼の笑顔をみた瞬間

彼に とびついて 抱きついた 。

あの笑顔は

優しく受け止めてくれるあの笑顔は

世界で一番愛おしい

桃くんの笑顔だ。




赤 「ごめん、ごめんっ、!!」

赤 「気づけなくてごめんっ!!」

赤 「頼れるような彼女になれなくて、っ」

赤 「ごめん…っ 、」

桃 「俺こそ、」

桃 「黙ってて ごめん、」

桃 「彼氏なのに黙って先いって」

桃  「ほんと、っごめん、」

桃 「辛い思いばっかさせてごめん…っ、」

赤 「…っ じゃあ」

赤 「お互い様だね…、っ笑」

桃 「っ、笑」

























縄をかけた首 

地面から離れた足

真っ暗な視界。





ああ 君は迎えにきてくれたんだね。





足元にある紙きれのそばには

ひとつの写真がおちていた。



















































_ ヒラッ









 












2022 . 9 . 21 花火大会























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