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さくらside
放課後、教室の窓から聞こえる部活の音が少しづつ大きくなるころ。
私はカバンを閉めながら隣の席をチラッとみた
柾哉「さくら、今日も一緒に帰る?」
当たり前みたいに言うその声。
柾哉はスマホをポケットにしまいながらいつもと同じ顔で笑った。
「うん」
それだけで胸が少し軽くなって、同時に少し苦しくなる。
この関係が崩れたらどうなるんだろう。
下駄箱までの短い距離。
他愛もない話をして笑って、沈黙でも気まずくない。
2人でいると不思議と安心できた。
「文化祭、もうすぐだね」
そう言うと、柾哉は「だね」とだけ返して空を見上げた。
柾哉「さくらは、どの模擬店回りたい?」
その質問が、“一緒に回る前提”みたいで嬉しくなる。
でも、はっきり言われたわけじゃなくて
「……柾哉は?」
確認するみたいに質問を返した。
柾哉「俺は、さくらが行きたいところ」
ずるい言い方に胸が高まる。
でも笑って誤魔化すしかなかった。
ここから一歩踏み出したら、今の関係が壊れてしまう気がしたから。
柾哉side
さくらは多分気づいてない。
俺がどれだけ言葉を選んでいるのか。
どれだけ「当たり前」を装ってるか。
隣を歩く距離は近いのに、手を伸ばせない。
それは多分、関係を壊したくないから。
ーー今のままでいい。
そう言い聞かせないと、口が勝手に本音をこぼしそうになる。
さくらが笑うと、それだけで今日が上手くいった気がする。
……でも本当は、友達のままでいたいわけじゃない。
さくらside
文化祭準備が始まって、放課後の教室はいつもより騒がしかった。
美咲「柾哉、ちょっといい?」
クラス委員の美咲ちゃんが、自然すぎる声で柾哉を呼ぶ。
柾哉「うん、今行く」
そのやり取りを、黒板の前でポスターを貼りながら聞いていた。
ーーなんで、胸がざわッとするんだろう。
柾哉「ちょっと話してくるね」
柾哉がそう言ったのは、私に向けてだった。
「……わかった」
笑えたと思う。
でも多分、少しぎこちなかった。
教室を出る直前、美咲が柾哉の袖を引くのが見えた。
それだけなのに、頭の中が嫌な想像でいっぱいになる。
その日から、柾哉は少しだけ忙しそうになった
一緒に帰れない日が増えて、LINEの返信も前より遅くなった。
柾哉「ごめん、今日も一緒に帰れない」
「うん、大丈夫」
大丈夫なわけないのに、そう言うしかなかった
ーーもし、美咲が好きだったら
ーーもし、私が一歩踏み出していたら
考えるたびに、“何もしなかった自分”が嫌いになる。
柾哉side
最悪だ。
美咲に呼び出されるたび、さくらの顔が曇るのがわかる。
でも、「さくらが好き」なんて言えるわけない。
美咲に呼び出される理由をさくらに説明すればいいだけなのに、
避けられるのが怖くて、自分から近づけない。
俺は、臆病者だ。
さくらside
その夜、スマホに届いた一通のメッセージ。
“柾哉、もしかしたら美咲といい感じらしいよ”
クラスメイトからの急なメッセージに指が動かなくなった。
信じたくない。
でも、否定できる材料もなかった。
ーーこのまま何も言わなかったら。
私たちの関係は終わってしまうかもしれない。
次の日の朝。
教室に入ると、柾哉はもう席にいた。
目が合いそうになって、反射的に目を逸らした
ーー今まで、こんなことなかったのに。
柾哉「おはよう、さくら」
いつも通りの声。
それが逆に、胸に刺さる。
「……おはよう」
短く返して席に座る。
それ以上、言葉が続くことはなかった。
一瞬戸惑ったような顔をした柾哉に気づかないふりをした。
放課後。
柾哉「今日、一緒に帰ろう」
柾哉のその一言に心臓がぎゅっと縮む。
でも、私は決めていた。
「ごめん、今日は用事があるから。」
嘘じゃない。
“距離を置く”っていう用事。
柾哉「そっか、」
柾哉はそれ以上聞いてこなかった。
優しさなのか、諦めなのかわからない。
帰ってく柾哉の背中を見送りながら胸の奥がじわじわ痛くなる。
ーーこれでいい。
ーーこれ以上、期待はしない。
そう思わないと涙が溢れそうだった。
柾哉side
明らかにさくらの様子がおかしい。
目を合わせてくれない。
会話が続かない。
「俺、なんかした……?」
生憎の天気の空に寂しく響いた。
答えは出ない。
でも、胸だけがざわざわする。
距離を詰める勇気はなかったくせに、離れていくのは苦しかった。
ーー引き止めたい。
でも、理由がわからないままじゃその資格すらない気がした。
その日の夜。
スマホにさくらから一件の通知が届いた。
“しばらく、今までみたいに一緒にいるのやめたい。”
短いけどはっきりとした文。
画面を見たまま何も返せなかった。
さくらside
文化祭準備の放課後。
教室には私1人だけだった。
脚立に乗りながら黙々と壁に装飾を貼る。
ーー本当は、1人になりたいわけじゃない。
けど、柾哉と顔を合わせる勇気が今はなかった。
テープを貼り直そうとしたその時。
柾哉「…さくら?」
背後から聞こえた声に心臓が跳ねる。
振り返ると教室の入り口に柾哉が立っていた。
柾哉「まだ作業してたんだ。」
「手伝っていい…?」
断る理由なんてなくて、私は小さく頷いた。
「……ありがとう」
2人で並んで作業をする。
距離は近いのに、心は遠い。
前なら、こんな沈黙も平気だったのに。
テープを切る音だけがやけに響く。
柾哉「……さくら」
柾哉が少し迷ったように声を出す。
柾哉「距離置きたいって、なんで?」
まっすぐな質問に手が止まる。
「…柾哉が、他の人と仲良くしてるの見て」
柾哉「美咲?」
名前を出されて小さく頷く。
「邪魔かなって思ったの」
そう言うと、柾哉は驚いた顔をした。
柾哉「それ、誤解だよ」
はっきりした声。
柾哉「文化祭の相談受けてただけ」
顔を上げると柾哉と目が合う。
柾哉「さくらが避けてる理由がそれなら、」
まっすぐ私を見たまま柾哉は続けた。
柾哉「俺、寂しかった。」
その言葉に胸が熱くなる。
柾哉「避ける理由、知りたかった」
「でも、聞くのも怖くて」
ーー同じだった。
「……私も」
小さな声。
「好きって気づいたら、今の関係壊れそうで」
言ってしまった瞬間、空気が止まる。
柾哉は少しだけ目を伏せてから、静かに言った
柾哉「俺もだよ」
柾哉の声は低くて、真剣で、逃げ場を防ぐみたいに、まっすぐだった。
柾哉「……だから」
一歩近づく気配。
言葉の続きを、息を止めて待っていた。
柾哉「俺ーー」
その瞬間。
美咲「柾哉!委員の仕事手伝ってほしい!」
勢いよく扉が開いて、美咲の声が教室に響き渡る。
柾哉「……今?」
美咲「うん、ステージの最終確認してほしくて」
私の方をチラッと見る柾哉。
柾哉「……わかった。すぐ行く」
柾哉は美咲ちゃんにそう言って、私に向き直った。
柾哉「さくら、さっきのーー」
「いいよ」
柾哉の次の言葉より先に言った。
「文化祭、もうすぐだもんね」
笑えたかどうかはわからない。
柾哉「……ごめん」
それだけ言って、柾哉と美咲ちゃんは消えていった。
静かな教室に残ったのは、言われなかった言葉と期待してしまった心だけだった。
柾哉side
最悪のタイミングって、こういうことを言うんだと思った。
今ならちゃんと伝えられると思ったのに。
さくらの「いいよ」が優しすぎて余計に苦しかった。
今すぐ伝えたいのに。
さくらは、俺の言葉を待ってるのに。
さくらと会えるタイミングは文化祭当日まで来なかった。
さくらside
いつもより騒がしい校舎。
笑い声、呼び込み、音楽。
楽しそうな模擬店は沢山ある。
けど、私の目は自然と柾哉を探していた。
ーーあの日の続きを早く知りたい。
期待と不安が同じ大きさで胸に残る。
柾哉と会えないまま時間は進んでいった。
正確に言うと、忙しそうな柾哉に話しかける勇気がなかっただけ。
校舎の騒がしさが少しづつ小さくなっていく。
楽しかったはずなのに、胸の奥が落ち着かない
ーーあの日の続きを、まだ聞いていない。
柾哉「……さくら」
後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると、少し息を切らした柾哉の姿。
柾哉「探した」
それだけで、胸がいっぱいになる。
「……私も、ずっと探してた」
その言葉に、柾哉は小さく笑った。
一瞬の沈黙。
でも、前みたいに怖くはなかった。
柾哉「準備の日さ」
柾哉がゆっくり話し始める。
柾哉「言えなかったことあって」
視線がまっすぐ私に向いた。
柾哉「本当はもっと早く言いたかったんだけどさ」
一拍置いて言葉を続けた。
柾哉「俺、友達のままでいられなくてもいいって思った」
いつも以上に真剣で、優しい声。
柾哉「離れる方が、よっぽど怖かった。」
誰もいない廊下に2人っきり。
柾哉の言葉だけが私に届く。
柾哉「好きです」
短くて、まっすぐな言葉。
逃げ道はもういらなかった。
「……私も」
声が震えたけど、ちゃんと続ける。
「好きだよ。」
「避けたのは、失うのが怖かったから。」
柾哉がほっとしたみたいに笑う。
柾哉「じゃあさ、一緒に怖がろう」
その言葉に、なぜかすごく安心できた。
「うん」
小さく頷くと柾哉の手が目の前に出た。
今までは触れるか迷ったけど、
今度は迷わなかった。
指先が重なって、ぎゅっと握られる。
静かな校舎はいつもより暗い。
でも、私の世界は前よりずっと明るかった。
久しぶりの恋愛系でした!!
最近、短編で書くメンバーが偏ってるなって思うんですけどどうですか?
書いてほしいメンバーいたらぜひ教えてください!
どんなリクエストでもチャレンジしてみます!
♡×500で次出します!!
それじゃあまたね〜🐉
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