テラーノベル
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「ふぁ〜あ…うぅ…」
吸血鬼の少女は目を覚ます、近頃の朝は少し肌寒い。
春になって少ししか経たないからだろうか。
いつもの質素なドレスに着替え、 ドレッサーの前に立ち、水色の髪を三つ編みに結う。青白い肌に健康的な色をした練り白粉を塗り込む、これで少しは人間に見えるようになっただろうか。なんせこのオルフェン王国は吸血鬼と言うだけで一般人からの殺害すら許可されている。世知辛い世の中だ。
確かに15年前、吸血鬼達による反逆が行われ、多くの人がこの世から去った。だがそれと同時に吸血鬼も人間の手によってほとんど虐殺されたのだ。どちら側にも大きな影響があった、最悪の事件。わたしには関係無いと信じていたが…これも吸血鬼としての一種の業なのだろうか。
「レイ〜?いるかしら〜?」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。レイの今いる工房の主であり雇い主、男爵令嬢アルテリア・メディソンだろう。
「あれ…お嬢様、こんな朝早くにどう…しましたか…?」
レイがドアを開けながら言う。アルテリアは持ち前の赤毛混じりの白髪を自慢げに払い除けながらアルテリアが口早に言う
「ふふ、それはね〜…魔術兵団から装備の依頼が来たのよ! 」
アルテリアが自慢げに言うが、レインが首を傾げたまま口を開く。
「魔術…へいだん?ですか?」
「あぁ、レイはまだ知らなった?その名の通り、魔術で戦うことを得意としたオルフェン国直属の兵団なんだけど…そこから魔導具作成の依頼が来たのよ。」
「へぇ、この魔導具工房にですか!喜ばしいことですね…!」
レイは安堵したような声で言った。だが魔術兵団からの依頼が来た事の誇らしさから来た声色ではなかった。なんせメディソン工房の資産状況は毎月赤字なのだ。まぁメディソン男爵家は伯位も高くなく、有名でもない。工房だけで食い繋げていけるだけでも幸運な方なのだ。
「ふふん、やっぱり私の工房の凄さが国に認められたってことよね〜♪」
アルテリアが自信に満ちた表情でいうと、レイが何かを思い出したような顔で戸棚に近づく。
「そういえば、急ですが日頃の感謝を込めての贈り物があるんです。」
アルテリアが少し驚いたような表情で口を開く
「あら、レイが贈り物だなんて珍しいわね。 」
レイはやけに自身があるように口を開く
「どうですかこのネックレス、ペリドットという素材なんですよ、ペリドットは光を反射してよく光りますから、これでお嬢様をいつでも見つけられるんです。 」
「な…なによ!そんなに迷子になんてなったこと…」
「あります」
やけに食い気味にレイが口を挟んだ
「ま…まぁいいわよ、…ありがとう…?でいいのかしら…」
「…はい、こちらこそ、いつもありがとうございます」
──────あぁ、この生活も、わたしの種族をお嬢様が知ったら崩壊してしまうのかもしれない。どうしてもそれがわたしにはこわいのだ。
そんな心を誤魔化すようにレイは口を開く
「そ…そういえば、食材の在庫が切れていました、わたしが買い出しに行きましょうか?」
アルテリアは少し悩むような仕草をし、口を開いた
「うーん、私が行こうかしら、買いたいものもあるし、レイは留守番でいいかしら?」
「はい、承知致しました。お嬢様。 」
アルテリアが支度をして出かけると、レイは工房で準備を始めた
「よし、お嬢様が居ないうちに練習でもしましょうか。」
その時、何か妙な匂いがする、魔導具が壊れでもして焦げたのだろうか──違う、これは……爆薬の匂いだ。
「…えっ?」
『ドゴォォォン!!!』
「ふんふふ〜ん♪たまにはお買い物ってのも悪くないわね。 」
アルテリアは街中で買い物をして上機嫌だった…が。
街中の連絡用の魔導具から街
全体に響くような音で声が聞こえる
『─────皆さん。現在メディソン工房にて滅んだはずの吸血鬼が発見されました。
私達の生活を一度奪った、あの忌まわしき吸血鬼に生き残りがいたのです。
現在その吸血鬼を匿っていたとされるアルテリア・メディソン男爵令嬢の捜索が行われています。生死は問いません、見つけ次第至急受け渡しを。』
放送がブチッと切れる。
「……え?吸血鬼………?」
「な…なによ…冗談よね…?」
アルテリアの声が自然と溢れ落ちる。
吸血鬼?誰が?もしかして…レイが?嘘でしょう?誰か嘘だと言ってちょうだいよ。
「あれ…もしかしてメディソン男爵令嬢じゃない?」
「本当だ、あの娘が吸血鬼なんて薄汚い存在を匿っていたのか?」
「あいつは俺達の幸せを奪った吸血鬼なんてものを隠していたのか?だとしたら処刑で済むのか…?」
「え…あ…」
何で?レイは今までずっと隠していたの?
私はそこまで頼りなかったのかしら…?
アルテリアが立ち尽くしていると、ところどころから石が飛んでくる。
「あいつは極悪人だ!殺してしまえ!」
「そうだそうだ!死んで罪を償え!」
「そうよそうよ!裏切り者など死んでしまえ!」
その頃はレイは、何とか自身を殺そうとする魔術兵団から逃げたが、身体はボロボロだった、腕は折れ、目は剣で斬られ、身体はもう血まみれだった。
あぁ、痛い…わたしは、なんのために歩いているのでしょうか。
ふしぎ、人間はみんな大嫌いだったのに。いつもわたしを虐めていたのに。
『あの人』だけ話していて普通だった。なんだか自分に寄り添ってくれている思えて嬉しかった。
あの人、今はどこにいるのだろうか。
あの人の名前、なんだっけ。
あの場所の名前、なんだっけ。
あの後───何があったんだっけ。
あぁ、また見つけられなかった。
もう、疲れてしまいました。
こんな所にいたくない…あの人の所にいきたい…そうだ…逃げてしまえばいいんだ
ちょうど、暖かいところがあるんだし。
午後7時、女は新聞を読みながらコーヒーを嗜んでいた
「吸血鬼がメディソン工房で発見…ね。」
「吸血鬼を匿っていたメディソン男爵令嬢は市民から暴行を受け、気絶した所を火刑に処され、吸血鬼は魔術兵団が工房を襲撃したが逃げられ、最終的にはメディソン男爵令嬢が火刑に処されている前で事切れた…か。
随分と胸糞の悪い話だ。」
吸血鬼と人間は…どこからこうなってしまったのだろうか。
─────つづく
あとがき:どうも、琴音です。今回はこのノベルを見て下さりどうもありがとうございます。感想や推しポイントなどなど、教えてくれるとありがたいです。
#ファンタジー
コメント
1件
読み終えました…第1話からもう胸がぎゅっとなりますね。レイが「ペリドットのネックレス」を贈る場面、ああいう日常の優しさが後にくる辛さを際立てていて、とても切なかったです。「この生活も、お嬢様が知ったら崩壊する」という心の声が痛くて…。アルテリアが放送を聞いたときの絶望、そしてレイが逃げながら「あの人」を想うシーン、静かな筆致なのに感情が溢れていました。続きがすごく気になります…!