テラーノベル
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優香が彩純の出生のいきさつ……圭一と優香の出会いを話してから何日かが過ぎた。
優香の話を聞いて、何か思うところがあったのだろうか?
三人は将来に向けて以前よりも活動的になった。
彩純は前々から考えていた女子プロレスラーになることを決め、インディー団体の入団試験を受けた。
見事「女子高生プロレスラー」としてデビューすることになり、夏休み期間にデビュー戦を行う予定だとか。
姫乃は高校の学園祭で行う演劇の脚本を買って出たという。
なんでも、将来は漫画の原案者や作家を目指そうと考え出したとかで、脚本作りはその第一歩だと。
香宝は以前よりも真剣に料理に取り組むようになったらしい。
高校を出たら、香港で料理修行をすると言っている。
なぜ香港なのかは、理由は定かでないが。
* * *
ある日の夕方、彩純は優香に連れられてビル街を歩いていた。
「ねぇ、叔母さん……いったいどこ行くの?」
長年、優香を叔母さんと呼んでいたクセで、彩純今でも「叔母さん」と呼んでいる。
彩純自身は、優香のことを「ママ」と呼ぶことに抵抗はないのだが。
「…………。」
「ねえ、叔母さん。」
「…………ここよ。」
「何ここ?」
優香が彩純を連れてきた場所は、かつて優香達の職場であったセントラルビルから徒歩数分の古めかしいビル。
そのビルの横から階段を下りた半地下の階の一角にある、小さいショットバー。
十数年前と変わらない、渋さをたくわえた分厚い木の扉を開けると、老齢期の男のバーテンダーがグラスを磨いていた。
オールバックにまとめた髪と、綺麗に整えた口髭を蓄えているところは、色が白くなったことを除けば、やはり十数年前と変わらなかった。
「いらっしゃいませ……。」
オレンジ色の照明が照らす薄暗い店内。
バーテンダーは直立不動のまま、横目で優香と彩純を見た。
一瞬驚いたような表情をしたと思うと、何も語らずに何かをし始めた。
「…………彩純、座りなさい。」
「え?ここに?」
優香が指さすカウンター席に彩純が座ると、優香は彩純の横、左側の席に座った。
「なんでここに来たの?てか、私がこういう店いるの色々マズくない?」
「…………ここね、圭一と初めてデートした場所。」
「…………え?」
「あなたが座っている椅子……あの日、圭一が座っていた。」
「…………。」
「お待ちどうさま……。」
バーテンダーは、スライスしたパイナップルを差したオレンジ色のカクテルを、優香と彩純の前に差し出した。
「何これ……?」
「…………お嬢様、それはミリオンダラーというカクテルです。坊っちゃん……いえ、花崎圭一様が、そちらの奥様と一緒に飲んだ一品です。」
彩純に一通り説明すると、バーテンダーは奥に引っ込んだ。
「これが……パパと叔母……ママとの思い出なんだね。」
「…………。」
彩純はオレンジ色のカクテルを面白そうに見つめていた。
* * *
時は遡ること四年前。
難病を患っている麗奈は、病院のベッドの上にいた。
治療の甲斐なく、余命いくばくもない状態だった。
「麗奈……。」
「…………優香……彩純は?」
「……学校。まだ午前中。」
「…………そう。」
「……麗奈、話しておくことはない?」
「……そうね……優香、あんたとは子供の頃から喧嘩ばかりだったけど……最後にお願い。」
「……何?」
「彩純のこと……よろしくね……圭一さんが残した……私達三人の子供。」
「………。」
「とにかく、無事に……幸せに生きて……彩純……。」
「心配しないで……。私と圭一の子供、大切にするから。これからも……。」
「そうね……私達同じ血を持ってるから……。」
「……そうじゃない。」
#『彼』の行く末
鐘寺 実昼
375
#オリキャラ
霰❄️
61
79
#短編
QuartoMew
105
「……え?」
「……麗奈、何も気付いてない。」
「……何を言ってるの?」
「……代理母じゃない。」
「……え?」
「あの時、医者には事前に手を回しておいた。」
「……な、何を……。」
「……麗奈の受精卵、すぐに捨てた。」
「……………。」
「……彩純は、私と圭一が普通に作った子供。あなたは母親でも何でもない。」
「……う、嘘……。」
「……子育てお疲れ様。」
「…………ゆ、優香ぁ……。」
「…………。」
「……いつも、本当に……ウザかった。……目障り……昔からね。」
「……ちゃんと母親やってたことだけは褒めてあげる。」
「……あ……優香……。」
「……じゃあね、麗奈。……さようなら。」
おわり
コメント
1件
読み終わりました……最後の最後で、こんなに重い真実が来るとは思わなかったです。 優香がずっと飼い♡♡♡にしてたような、あの静かな復讐がぞっとしました。 でも、彩純があのカクテルを「面白そう」に見つめたシーンが、救いにも感じられて。 何も知らないままでいるほうが幸せなんだろうな、とも思いつつ…… この終わり方、すごく考えさせられました。 お疲れ様でした、柿の木七味さん🥀