テラーノベル
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俺は生きてきた中でこんなにも綺麗な人に出会ったことはなかった
これほどに美しい人なんて
この世に存在するわけがないとまで思っていた
あの日ドアから入ってくる彼を見るまでは
初めて会った日から俺は彼を好きだったのかもしれない
けど名前も何も知らない
ただ
カフェで会う赤の他人。
それ以上もそれ以下でもない
友達になりたいとも思わない
こんな綺麗な人が
俺の穢れによって汚れてほしくないから
それに友達止まりになるだろうから
仲良くなってもきっと彼には
彼女さんができて幸せな家庭を築く
それを見送るのもいい
ある意味幸せだけど
それは俺自身が許せないと思うから
俺が隣にいたらと後悔するくらいなら
そもそも出会わなきゃよかった
そう思うくせに
ほら今もこうやって彼のことを考えてる
話したこともないただ見つめてるだけなのに
こんなに胸が締め付けられるなんて
俺知らなかったよ。
でも知らないまま生きてるよりかは
多少の痛みを負うのも人生だから
仕方のないことなんだと、思う
なんでだろうね
どうしてここまで惹かれるのかわからない
自分でさえもわからない
この恋心はいつ焦がれて炭になって消えゆくのか
その日が来るのを待ち侘びてる俺がいるのに
まだこの甘くて感じたことのない
感情を知りたいと思う俺もいる
矛盾してることだけはわかるけど、
なんでそう思うのか
…何にもわかんない。
彼の声も聞いたことないのに話しかけられたらなんて思う
そう少し勝手に落ち込みながら
いつも飲むブラックコーヒーを飲む
いつもよりほろ苦い気がした
コーヒーに映る俺の顔は
どうにも元気がなさげに見えた
虚な目をしていた。自分でもびっくりするくらいに
「はぁ、」
ため息はコーヒーに溶けていく砂糖みたいに沈んでいった
ブラックコーヒーに砂糖なんて初めて入れる
けど今日はいい
苦いのにはもう飽きたんだ
そろそろ甘いものが欲しい
ゆっくりと銀色に光るスプーンで混ぜて
ざらざらとした砂糖がどんどん渦巻いて溶けてゆき甘くなっていく
飲んでもないのに甘さで痺れそうだ
コーヒーよりも苦いこの現実を砂糖で誤魔化してるみたいな
そんな後ろめたい気持ちにまた蓋をして
俺はまだざらつく砂糖を溶かすようにくるくると
無心でただ、コーヒーを混ぜる。
「あの」
すると
誰かに話しかけられて意識がすとんと降りてくる
くるりと声がした方を向くと
彼がそこに立っていた
さっき話しかけたのは彼のようだった
こちらを少し不思議そうに覗き込んでくる
彼から話しかけられた
彼だとわかった時、耳にやけに反響する彼の声
うるさいくらいに
飲んでもいないのに口の中も頭も甘くなって真っ白になっていく
「は、はい?」
震える声で返す
彼は微笑んで
「ブラックコーヒーお好きなんですか?」
君の笑顔はブラックコーヒーに溶けていった
砂糖よりも甘かった
コーヒーが飲めませんを見てたら思いついたパロです。
今週は結構予定詰め詰めなので更新遅れるかもです、
それではまた。
蝉の抜け殻さん
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コメント
1件
わあ、素敵な読後感でした……!「見てるだけで」というタイトルが、もう切なくてたまらないですね。主人公が彼を「綺麗」と繰り返す視点の純粋さと、自分を「穢れ」と卑下する心の距離感に胸を締め付けられました。コーヒーに砂糖を溶かす仕草が、苦さを誤魔化したいけど甘さに慣れたくない――そんな恋の始まりの疼きを体現していて、すごく巧い描写だなと。最後、彼の微笑みが「砂糖よりも甘かった」で締める余韻が、これから始まる物語の予感としてはたまらないですね。続きを待ちわびています!