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本当はこんなはずじゃなかったんだけどな。
たまに心臓が痛くなるから、”一応” 病院へ行ったんだ。
大森『歳だ歳だ〜笑。老化じゃん笑』
なんて元貴にからかわれながら、ほんの軽い気持ちで。
それがさ
医者「…….癌…..です…」
藤澤「え、?」
ほんとに笑えちゃう。
先生もびっくりしてた。よくここまで耐えられましたねなんて。
不整脈だとか腫瘍だとかステージなんたらだとか難しい言葉ばっかり。
医者「入院か、在宅か。どちらを希望しますか…?」
険しい顔で聞いてくる。
要するに病院で最善の治療をするか、特に何もしないで家で死ぬか。その2択ってこと。
嫌。元貴を一人になんて出来ない。
入院したって、「もう手遅れ」なんて言葉がちらっと聞こえた。
だからこの答えに迷いは無かった
藤澤「お家に帰ります」
藤澤「ふぅ…..」
家の扉の前に着いた。
少し息を整えて。大丈夫、いつも通りでいい。
彼に勘づかれないように___
ーガチャー
藤澤「ただいまぁ」
大森「おかえり。遅かったじゃん」
玄関までお出迎えしてくれる元貴。
エプロン着てるから、きっと料理してたんだろう。
藤澤「いい匂い。何か作ってるの?」
大森「お前が遅いから夜ご飯作ってあげてんだよ」
藤澤「ふふ笑。そっか、ありがとう」
僕が遅くて心配したのか寂しかったのか。
少しぷりぷりしながらキッチンへ戻っていく。
その後ろ姿がやけに寂しそうに見えたのはきっと自惚れ。
もういいや。元貴が居ると何もかも忘れちゃいそう。
うん、忘れていよう
藤澤「わ〜おいしそー!」
大森「…..でしょ」
少しドヤ顔で言う元貴。
机の上には僕が好きな料理ばっかり
藤澤「めちゃくちゃお腹すいた〜!早く食べよ!」
大森「うん。涼ちゃん箸配って」
藤澤「りょーかいっ」
お茶を注ぐ係、配膳係と自然に役割分担をしながら準備を整える。
“いただきます”
藤澤「ん!おいしー!」
大森「なら良かった」
唐揚げとサラダと味噌汁。
僕はこのメニューが元貴の手料理の中で1番好き
大森「そういえばどうだったの?病院。結構長かったやん」
藤澤「…あ〜えぇっとね」
一瞬箸が止まった。
頑張って頭をフル回転させて都合のいい嘘を考える
藤澤「….低、、血圧なんだって。お薬貰ったから、それ飲めば大丈夫!今日病院混んでてさ〜、色々遅くなっちゃったんだよね」
大森「ふーん。」
二人で再び料理をつついた。
沈黙が暫く続いたけど、上手く誤魔化せたかな
藤澤「あ、そうだ元貴」
大森「ん?」
藤澤「明日からさ、旅行に行こうよ」
大森「は?」
新幹線のチケットを見せると、尚困惑した様子で僕を見つめた
大森「何言ってんの、?明日も明後日も仕事だよ」
藤澤「いや〜…さ。最近全然2人の時間作れてないじゃん?いっぱい頑張ってるし、ファンの皆もスタッフさんも若井も許してくれるかなーって。あ、スタッフさんと若井には話通してあるから!」
スマホのトーク履歴を見せる。
3日間の休みを快諾してくれたスタッフさん達には頭が上がらないな。
お土産たくさん買って帰ろう
大森「そんな弾丸で行ったことないし…。何を準備したらいいの?出発時間は?行先は?」
珍しくパニックになっている元貴を微笑ましく見ていると、突然頭を叩かれた
藤澤「いてっ。も〜なにすんのよ」
大森「ニヤニヤしてないで早く準備しなきゃ、!ってか色々聞いてんだから答えてよ!」
大きいスーツケースに2人分の荷物を詰めていく。
現地調達するから、なるべく少なめで。
藤澤「わ〜、楽しみだね!」
大森「……ほんとに行くんだ、」
元貴はまだ信じきれていない様子だった。
当たり前か。
いつも忙しそうだったから、たまには休ませてあげないとね。
だって元貴、俺か若井が言わないと自分からは絶対に休まない人だから。
藤澤「…よし。明日朝早いしもう寝よ〜!ご飯作ってくれてありがとね!おやすみ」
大森「…….おやすみ、なさい…」
僕の….ううん。
僕らの幸せな旅が、明日から始まる。
その中に”覚悟”なんてものは無い。
それでも元貴が隣にいれば何も怖くなかった。何も考えず、今はおやすみなさい