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ここは
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「うたちゃーん!ここのブロックなんか変!バグだよ!」
凸さんがそう発言する。
彼がさした座標には、テクスチャが奇妙に引き裂かれた立方体が浮かんでいた。
バグを直すのは非常にめんどくさいため、とりあえず受け流すことにした。
「いやいや気のせいだって。凸さん老化すすんでるんじゃない?」
いつものように軽口を叩いて、とりあえず問題のブロックを見た。原因を探るためにコントロールパネルを開き、コマンドを打ち込んでみる。
あれ……? 何かおかしい。パソコンの画面に映るカーソルの動きと、僕の手の動きが、ほんの数ミリ秒だけ比例していない。
もしかして……僕の、ノウが、遅れて――
……!気がつくと、僕は眠ってしまっていたようだ。と言っても、ここは僕の部屋じゃない。上下も左右も分からない、真っ白な虚無の空間。バグったゲームの裏側に飛ばされたのか、それとも僕の夢の中か。現実的に考えれば後者だろう。
……突然、僕の視界の端に、ノイズ混じりのエラーログがポップアップする。
【繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ繧ィ繝ゥ繝シ】
文字化けして読めない。いや、読めないはずなのに、僕の脳が、そのエラーの意味を冷酷に理解してしまう。
……もしや、不具合が起きているのは…「僕」?
そういえば、昨日と比べて、僕のデータが、確実に少なくなっている気がする。おどみんのメンバーと笑い合って動画を撮った記憶のフォルダが、内部からパチパチと音を立てて消去されているような感覚。
どうしよう……。このままだと、
「僕は僕としての自我を維持できなくなる。」
システムが強制的に再起動をかけたのか、気がつくと、僕は元の僕の部屋に戻っていた。液晶ディスプレイの明かりだけが、暗い室内を照らしている。
……スマートフォンの振動に気づいて画面を見ると、おどろくさんからメッセージが来ていた。『うたいさん、最近上の空だけど大丈夫?』
僕を心配してくれる、いつもの優しい声が脳裏に再生される。僕は心配させるべきではないと判断し、キーボードを叩いた。
『大丈夫。さっき凸さんに言われたバグの事考えてるだけです(笑)』
と返した。相手はおどろくさん。多分これ以上の異常は気が付かないだろう。
とりあえず今日は眠ることにした。明日になれば、この不具合もパッチが当たって直っているかもしれない、なんて淡い期待を抱きながら。
翌朝、目覚めた瞬間に理解した。非常にまずい。僕の不具合が、暴走を始めている。
視界が激しく点滅し、部屋の壁紙がエラーコードの羅列に書き換わっていく。
「あ、あ――【繧ィ繝ゥ繝シ】縺ゅ€√€√≠縺√€√≠」
……やっぱり、駄目だ。言葉を発しようとしても、なぜか文字化けし言いたいことが伝わらない……。
大丈夫、この身体は僕の自我だ。僕にかかれば治すことなんてお茶の子さいさい……のはずなのに。
僕の身体が言うことを聞かない……。
「う、た、……【繧ィ繝ゥ繝シ】……っ!」
声が、自分の名前すら、ノイズに変わっていく。世界が、僕の意識が、真っ暗に塗り潰されていく恐怖の中。指先だけの感覚で、無心にキーボードを叩いた。
この世界のどこかにいる、僕を見ている「誰か」へ向けて、ログを放流するために。
『この最悪な物語を見ている観測者。僕が治せなかった僕の不具合。あなたなら、治せますか?』
――……。――……。
【白い空間】
どーもどーも。僕です。
…?僕が誰だって?……僕はうたい──
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