『大切な君を救いたい』の番外編です。
桃side
意識が浮上し瞼を開けるとカーテンの隙間から指す眩しい光に目をしかめた。
横のベッドを見ると赤がすやすやと眠っている。
昨日は青の記録によると、躁状態がひどく目を離すとすぐに玄関へ向かい大変だったらしい。
スマホを開くと青からのLINEが数件。
青「お昼頃に向かうね」
俺は今日休みだから来なくていいと伝えたが数少ない休日でちゃんと休めるようにと青なりに気を使ってくれた。
時刻は9時半。
退院直後は睡眠剤を飲まなきゃ寝れないほどだったが改善され、今は寝すぎなほどだ。
昼夜逆転を防ぐため赤を起こそうと体を触ろうとすると、気になる傷が見えた。
首が引っ掻いたような傷で赤くなっている。
夜顔を合わせた時に無かったし睡眠中に付けたのだろう。
悪夢から足掻いていたのか、ただ単に自傷したくなったのか、本人に聞いてみないとわからない。
桃『あか、起きて』
赤「…」
桃『朝だぞー』
赤「…ぅ、」
軽く体を揺さぶるとゆっくり瞳を開き俺の目を見てくれた。
最近目を合わせられるような状態じゃなかったから嬉しい。
桃『おはよ』
赤「…ぉはよ、」
桃『気分はどう?』
赤「だいじょぅぶだよ、げんき、!」
桃『そっか、朝飯食えそう?』
赤「ねぇ、おしごといきたい」
最近は躁状態になると仕事に行きたがる。
健全な人なら休職中な中、いきなりその日だけ仕事へ行けるとは思わないだろう。
昨日も仕事へ行きたいから外へ出ようとしたのか。
赤「ねぇ!ももちゃん!」
桃『んー、もうちょっと良くなってからね』
赤「いじわる、もうげんきだし」
桃『そんな急いでもまた辛くなっちゃうだけだ』
赤「…んぅ!!ぅ゙ぁッ!」
赤「うぅッ…!なぁんでッ、!泣」
桃『大丈夫大丈夫、』
今日は些細なことで傷つく日だろうか、涙を流しながら軽い癇癪を起こしている。
赤「うぅ…ぐすっ」
〈ぼりっ〉
桃『ちょ、赤それやめよ』
泣きながら首を引っ掻きはじめた赤の手を握る。
きっとむしゃくしゃした感情を治めるためにやっていたのだろう。
無意識でやっていたようで本人も若干驚いていた。
赤「ぐすっ、うぅ、ッ」
桃『しんどいなぁ、』
赤「おしごとッ、!」
桃『…向こうで話そ?』
ここに居たらなにもできないからとりあえずリビングへ向かおうと赤の手を引いた。
・
お互いトイレや洗顔を終えリビングのソファーに座る。
赤はずっとウロウロしたり出勤用のバックを探したり忙しそうだ。
桃『あかーなんか食べる?』
赤「たべない、!」
桃『赤、今日は仕事いけないよ』
赤「なぁんでッ、いかなきゃ、!」
桃『今は心を休めるために休んでんの』
赤「ん゙ぅーッ、!」
桃『こっちおいで、アニメみよ』
隣に座らせ赤と俺が見てるアニメをつけるがイライラと焦りが治まらないのかずっと首を触ったり、爪を噛んだり、頓服を飲ませたが中々落ち着かない様子だった。
赤「くすり、もっと、!」
桃『だーめ、もうすぐ効いてくるから待ってて』
赤「ぅう、」
〈がちゃ〉
赤 びくっ、
青「やっほー」
桃『来るの早、、』
青「暇だったからね~」
青「赤くんおはよ!」
赤「…、」ぷい
桃『今めっちゃ機嫌悪い』
青「なるほどね、笑」
青は昨日のこともあってすぐに理解してくれた。
・
青side
昨日はどこかに行きたかったらしくて見張ってないと目を離した隙にすぐ外へ向かってしまった。
なんとなく心配で今日も桃くんの家にきたんだ。
ももくん達とテレビを見てダラダラと過ごしていたら12時を過ぎていた。
青『お昼ごはんは?作ろうか?』
桃「あー、お願いしよっかな」
青『はーい』
ここへ通い始めて2ヶ月、もう桃くんのキッチンには慣れっ子で冷蔵庫を開けば僕が買い貯めした具材が入っている。
パスタにしようと鍋に水を貯め火にかけた後、具材を切り始めた時、手元の包丁を奪われそうになる。
青『ぁっ!』
パスタを計っている時にトイレへ向かった赤くんが帰ってきたことに気付かなかったため対応が遅れてしまった。
包丁をお互いが強く握り、赤くんは自分の胸に突き付け、僕は反対側へ力を入れる。
青『赤くん、離して、?』
赤「やッ、!」
赤「しにたいの、ッ!!!」
赤くんの声を聞いて何事かと桃くんが来てくれた。
桃「危ないから離そうな」
流石に桃くんの力には敵わないのか赤くんの指が包丁から離れていく。
赤「もぅ゙ッ!うぅ!」
桃「向こういこうな」
桃くんに手を引かれグズりながらもキッチンから離れていった。
僕がもう少し力が弱ければ赤くんは…。
久しぶりに心臓がバクバクした。
いや、今も動悸が激しくクラクラしそう。
青『はぁぁ、ふっ、はっ、』
桃「大丈夫大丈夫、深呼吸して」
いつの間にか僕の傍に来た桃くんが握っていた包丁をしまい僕に声をかける。
青『はぁっ、ふぅ、』
桃「こっち見れるか?」
桃くんの顔を見ると優しい柔らかい表情をしてくれた。
桃「ん、見れたな」
青『もぅ、大丈夫、』
桃「休んでな俺作るから」
青『え、でも、』
桃「いま赤薬で寝てるから見守っててあげて」
青『分かった、ありがとう』
・
桃side
青の代わりにパスタ作りを再開する。
どんなパスタを作ろうとしたのか聞いてなかったがピーマンが出てるしナポリタンだろ多分。
手際よく作り終え3人分盛り付ける。
桃『できたぞ~…って寝てるし』
赤の隣ですやすやと眠りに落ちていた。
責任を負いやすい青だから少なくとも今日中はさっきの事を引きずるだろう。
起きた時に食べさせてやろうと作ったばかりのパスタにラップをかけ俺一人で食べる。
食べ終わった皿と調理器具を洗っているとソファーの方でモゾモゾと動く青が見えた。
青「んぅ~、」
桃『おはよ』
青「おはよ、ごめんね休みなのに、僕が休んじゃって…」
桃『気にすんな』
桃『パスタ作っといたから食べるなら食べちゃいな』
青「ありがとう、」
パスタを食べる青を見たあと赤に目を移すとすやすやと寝息を立てていた。
液状の少し強めの薬を飲ませたため深く眠りについている。
青「薬、聞いてるみたいだね」
桃『そうだなぁ、ただ副作用がまだ心配』
青「そっか、よく見とくね」
・
赤が起きたのは夕方だった
赤「やぁっ、ぅ、」
青「やだねぇ、」
桃『どしたー?』
青「手が震えるみたい」
桃『やっぱ副作用出ちゃうかー、』
赤「や、、」
桃『大丈夫、少ししたら治るからな』
震える手を握りながら落ち着かせると5分程度で震えは治まった。
桃『震えだけ?吐き気とかない?』
赤「ない、大丈夫」
桃『寝てスッキリした?』
心做しか表情が緩くなった気がする。
赤「なんか、久しぶりによく寝た気分」
桃『悪夢は?』
赤「多分見てないよ」
桃『そっか、良かった』
桃『飯食えそう?青が作ってくれた』
青「ほとんど桃くんが作ったけどね」
赤「食べようかな、」
少しずつ食べ始め、ゆっくりだが完食してくれた。
その後も症状が落ち着いてアニメをしながらゆっくり過ごしているとあっという間に日が落ちた。
桃『酒飲みたい』
青「急だね」
赤「飲んだら、?」
桃『えー、俺一人で飲むのー、』
桃『青も飲も??』
青「いや、赤くんいるし…」
桃『割かし落ち着いてるしそんな酔いつぶれるまで飲まんから大丈夫だろ』
赤「俺の事気にせず飲んで飲んで」
青「じゃあ、飲もっかなぁー」
数十分後、UVERで頼んだ 酒とつまみになりそうなおかずが届き机に並べる。
青「こーやって飲むの久しぶりだね」
桃『そうだな、赤も食べたいの食べろよな』
青「桃くんの奢りだから食べよ〜赤く~ん」
赤「うん、!」
それから話しながら食べたり飲んだり、今はマリカをしている。
桃『おい!甲羅当てたのだれだよ!』
青「ぼくでーーす笑」
赤「…!」
集中しながら頑張ってプレイする赤を見て副作用が悪く出てないことを知り安心した。
桃『青負けでちゅね~』
青「ぐぬぬ、赤くんにも負けるなんて…」
赤『ふふふ、』
桃青「笑った!」
笑顔を見たのは何ヶ月ぶりだろうか、
ずっと苦しむ姿しか見れていなかった。
青「赤くん桃くんもう一回!!」
桃『えー?赤どうする?』
赤「また勝っちゃうもんね〜!」
案外こういった何気ない”楽しい”が赤の病状を良くするのかもしれないな。
コメント
2件
ほっっっっっとに大好きです((引 素敵すぎる作品ほんとにありがとうございますm(__)m
このシリーズ大好きだから最高すぎる! 赤くん笑ってくれてよかった〜 素敵な作品ありがとうございます!