テラーノベル
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時は遡り、10年前のうちは居住区。
木ノ葉の外れ、夕陽の差し込む水辺。
「火遁・豪火球の術!」
幼い声が必死さをまといながら、両手で印を結ぶ。
サスケの口元からぽっと小さな火が吐き出された。
しかしそれは形を保てず、すぐに消えてしまう。
「くそっ……」
悔しげに眉を寄せ、唇を噛みしめる。
頬には小さな焦げ跡、手には小さな火傷と擦り傷。
それは、必死に練習した証だった。
後ろからその様子を見ていた父・フガクは、無言のまま背を向ける。
「……やはり、イタチのようにはいかんか…」
その言葉を残して、足音だけが遠ざかっていった。
──比べられることには慣れていた。
けれど、悲しくないわけじゃない。
悔しくないわけでもない。
なぜ父はいつも兄ばかりに目をかけ、自分を見てくれないのか。
うつむき、拳を握りしめる。
僅かに瞳が揺れたその時──背後から聞き慣れた声が響いた。
「…サスケ」
顔を上げて振り向くと、優しい眼差しの少女が佇んでいる。
「ミズノ…」
彼女はそっと微笑み、サスケの手を握った。
「こっちにきて」
彼は手を引かれ、近くの木陰に腰を下ろした。
ミズノはポケットからタオルを取りだし、サスケの頬の焦げ跡を丁寧に拭く。
そしてサスケの手を両手で包み込んだ。
「いい…こんなの、すぐ治る」
彼は顔を背け、ミズノから手を離す。
「小さい傷でも痛いでしょ?
それにばい菌が入ったら大変だよ!」
怒りと心配が入り混じった瞳に見つめられ、サスケは戸惑い目を伏せる。
渋々、両手を差し出した。
ミズノがその手をもう一度包み込むと、あたたかいチャクラが流れ込み、傷が癒えていく。
「もう痛くない?」
サスケは視線を落としたまま、こくんと頷いた。
「……術をフガク様に見てもらってたの?」
彼の瞳が曇る。
「兄さんは…一回で出来たんだ。だけど俺は…」
サスケの声は悔しさに震えていた。
燃えては消える炎のように、彼の努力はまだ形を保てない。
そんなサスケを前に、ミズノは首を横にふる。
「イタチお兄様と比べる必要なんてないよ。
サスケはサスケなんだから」
彼女の声はふんわりとあたたかく、こもれびのように穏やかだった。
その大きな瞳は静かで揺るがない。
「出来るか出来ないかじゃなくて…諦めないで頑張ってることの方が、ずっとすごい」
ミズノの言葉は、サスケの胸の中の悔しさと悲しみをゆっくりと溶かしていった。
「アカデミーでいつも一番なの、私知ってるよ。
それに毎日修行してることも。
だからね、サスケはもっと強くなる。
術も次は絶対に成功する!“姉さん”が保証するよ!」
自信たっぷりな笑みで言い切るミズノは、少しお姉さんぶっていたけれど、彼を信じる気持ちがまっすぐに伝わってくる。
サスケの胸の中に、知らない感情が広がった。
嬉しくて、苦しくてどうしていいかわからない。
思わず声を荒げた。
「……あ、当たり前だろ!俺は強いからな!
お前に言われなくたって、次は絶対成功させてやる!」
顔を赤らめて、視線を逸らす。
強がる口調のサスケを、ミズノは少し大人びた表情で見つめる。
優しく目を細め、安心したようにそっと彼の手を離した。
──それから一週間、サスケは毎日欠かさず術の修行に励んだ。
合間にふと現れるミズノ。
「頑張ってるね。サスケ、お腹空いてない?
おにぎり作ってきたの!一緒に食べよう!」
「……別に減ってないけど、作ってきたなら食べる」
「素直じゃないなぁ…はい、おかかのおにぎりだよ!」
彼女が差し出したおにぎりを、サスケは照れくさそうに受け取り、一口頬張った。
ほんのりしょっぱくて、香ばしい。
あっという間に1つ食べ終え、2つ目に手を伸ばす。
「やっぱりお腹空いてたんじゃない。
“姉さん”はなんでもお見通しなんだから。
あと、お団子も作ってきたんだ!
サスケのお団子は、いつも通り甘さ控えめにしてあるよ!」
「…二歳しか違わないだろ…姉さんでもないし」
サスケの声が聞こえてるのかいないのか、ミズノはニコニコしながら包みを広げた。
串に刺さった少し不恰好な三色団子が、四つ並んでいた。
「……いつも通り、変な形の団子だな」
「!!ま、まだ練習中なの!細かいこと気にしないで黙って食べなさい!」
耳まで真っ赤にし、眉を吊り上げるミズノ。
(甘いものは好きじゃないけど、こいつが作ったのは…食べられるんだよな)
そんなことを思いながらも口には出さず、サスケはおにぎりを黙々と食べ進めるのだった。
──早朝、サスケは再び父の前に立っていた。
深く息を吸い、印を結ぶ。
「火遁・豪火球の術!」
轟音とともに生まれた炎は大きく、力強く、真っすぐに吹き出した。
フガクは、ほんの僅かに眉をあげた。
しかしすぐに表情を戻し、一言だけ発した。
「……さすが、俺の息子だ」
そしてそのまま背を向け、歩き去っていく。
サスケは誇らしげに笑みを浮かべ、父の背中を見つめていた。
ふと、彼女の顔が浮かぶ。
「見たら…喜ぶかな…」
口元を緩めながら思わず溢れた言葉にハッとし、なぜか耳元まで熱くなった。
(なんであいつに……!?)
慌てて頭を振る。
(俺は、兄さんに追いつく為に…強くなる!)
目標を掲げ、力強く拳を握りしめた。
──必死に強がるその胸の奥で、名も知らない感情が小さく芽吹いていたのだった。
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世利里🗝️🫧🖤(サブ垢)
チャクラ宙返り