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最強な彼に愛されて

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最強な彼に愛されて

1 - 出会い

2025年03月14日

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《愛優said》


こんな偽りだらけの世界で 何が楽しくてみんな笑ってるのだろうか。


みんなホントの気持ちは心の奥底に隠して、何も無いようなふりをして笑っている。


そう思いながらふと、視線を正面にいる女の子二人に向ける。


あの子はこの前、隣の子の悪口を言ってたのにどうしてそばにいるの?

悪口を言うくらいなら一緒にいなきゃいいのに。



“信じても裏切られるだけ”


その思いが強くなっていったのはいつごろからだろうか。

信じたら裏切りの代償が大きいだけだからそんなことになるくらいなら人なんて信じない方がマシ。


どうせ、あの日みたいにみんな去っていくんだから。

私はただあの地獄のような日々から抜け出したかったからわざわざ家から少し遠い高校を受験したのに……。



「あーゆ!」



私の名前を呼ぶのは私の大嫌いな人坪谷 麻里奈つぼたにまりな


声を聴いただけで虫唾が走る。

少し高くて耳につく声で聴くだけでイライラしてくるような、そんな感じ。



ていうか、なんでここにいるのよ。

いつもはもう少し遅い時間に登校しているのに。



「なに?」



自分が予想していた以上に低い声が出て自分でも驚いてしまった。


でも、本当はもっと低い声は出る。だけど、元々私は声が高いからこれだけでもきっとコイツは驚いているはず。



「な、なによ。アンタ。生意気!」



坪谷は焦ったようにそう言うと私が持っていたカバンを奪い取り、横手にあった草むらに向かって放り投げた。


パサッ、と草むらにカバンが落ちた音が聴こえた。




あーあ……またか。

いつもいつも飽きないな……。


ショックとかそんな気持ちにはもうならない。

中学の時から続くこのイジメ。


慣れてしまって悲しいなんてことは思わないようになった。

本当に不思議だよね。当初は泣くほど辛かったのに。



「あの子かわいそー」


「中学の時も麻里奈に苛められてたらしいよ」



ヒソヒソと話されるのは、私の話。

チラチラと軽蔑したような瞳でこちらを見ながら同情するような声を聞いて私は心底苛々していた。


助ける勇気もないくせにそんなこと言わないでよ。

私の気持ちなんて分かるわけない。分かってたまるか。


私はイラつきながら無言で自分のカバンを拾うと、再び学校の方向に歩き始めた。


だからその時、坪谷がこっちを睨んでいることに私は何も気づかなかった。


私、水原 愛優みずはらあゆは この春から高校1年生になりました。


こんなクソみたいな高校は今すぐにでも辞めたいぐらいだけど、それは許されない。


親は私自身のことには一切興味が無いくせに勉強だけは口うるさいからだ。


そういうのはとても鬱陶しいけど……逆らえない。


だから、黙って何も言わずに従うしかない。

こんな苦しい世界からいなくなってしまいたい……そう何万回も思った。


でも、死ぬことはできなかった。

そんな勇気が私にはなかっただけ。こんな世界に未練なんて一ミリもないのに。


中学のときからいじめられて友達もできなくて地獄の日々を過ごしてきた。

何もしてないのにいじめられるなんてひどい話だよね。


仲が良かった子も私がいじめられてからはすっ、と離れていき、まるで何も無かったかのように私を無視し始めて、いじめる側に回ったんだ。


そのときの私の気持ちなんて誰にもわからない。わかるはずがない。


信じていたのに……助けてくれると思っていたのに……一瞬にしてその安っちい友情は壊れて、私は簡単に裏切られた。


所詮、みんなそういうもんなんだよ。


だから、そんな私の地獄の日々を変えてくれる人が現われるなんてこの時は思いもしなかったんだ。


ずっと、この日常が続いていくのだと……そう思ってた。




学校に着いてローファーを脱ぎ、靴箱に入れようとしたら、そこには大量の紙くずが入っていて開けた瞬間、ヒラヒラとやる気がなさそうに落下してきた。



“死ね”


“ブス”


“消えろ”



そういった内容……いわゆる悪口と言われる紙がたくさん汚い床に落ちている。


そこにいたほどんどの人がこちらの様子を伺うような表情でチラチラとみては、ヒソヒソと近くの友達と話している。


でも、もうこんなのは慣れっこ。

私はその場にしゃがんで落ちていた紙を拾うと、近くにあった青色のゴミ箱に全部勢いよく捨てて教室に向かった。


教室に入ってまず一番初めに自分のものがなくなっていないか確かめる。

幸い、今日は机にも椅子にも何もされてないみたいだった。


よかった……。


安堵して、私は椅子に腰を下ろしてカバンから取り出した教科書を机の中に入れようとしたけど、入らず中を覗くと、そこにもさっきと同じような大量の紙くずが入っていた。


はぁ……またか。

ほんと、懲りないよね。


そんな惨めな私を見て坪谷とその手下たちはキャハハと甲高く頭にキーンとくるような声で笑ってる。

私は机の中に入ってる紙くずを全て取り出して床に捨てた。


私の席からゴミ箱は遠いし、めんどくさい。

というより、もう捨てる気すら起きない。


こんなことしてなにが面白いのかな?

ストレス発散ってヤツですか。


ストレス発散ならもっと違う方法があるのに。

コイツらは本当にバカだ。学習しろよ。と心の中で言えない愚痴をこぼす。


それから憂鬱な一日が始まったけど、何とか全ての授業を終えて帰り支度をしていると3人の女の子たちが私の前に現れて強引に腕を掴むと近くの女子トイレに連れてきた。


何これ……なんで私は連れてこられているの?

こんなことされたのは初めてだった。


さすがに中学ではこんなバカなことしてくるやつもいなくて高校でも大丈夫だと思っていたのに。


女子トイレにリンチかよ。

普通、体育館の裏とかじゃない?


いや、ありきたりすぎるか。


こんな時でも異常なくらい冷静でいられる自分が少しだけ怖くなった。

私、いつからこんなふうに冷たい人間になっちゃったんだろ。



「なに?早く帰りたいんだけど」



イラついたように言葉を発する。

強気でいないと……弱くなりたくないから。



強いふりをしないと心が壊れてしまうから。


本当は家になんて帰りたくはないけどここはこうでも言っておかないと早くこの状況から抜け出すことはできないと思った。



「あんた、存在自体が鬱陶しいのよね」



真ん中にいたどうみてもリーダーでしょ?というような人が不満そうに眉間にシワを寄せて私を鋭く睨みつけてそう言った。


そりゃ、どうも失礼しました。としか言えないよ。

あいにく、私も存在したくてしてるわけじゃないんだよ。



「で?」



私が淡々とした表情でそう言い返すと 女の子の表情は先ほどよりも、もっと怒りに満ちたような表情へと変わっていく。



「あんたいい加減にしなさいよ!!あんたなんか生まれてこなければよかったのにね!大嫌い!!」




『うるさいわね。 あんたなんか生まなきゃよかったわ!』



『静かにしなさい! あんたなんかもらわなきゃ良かったわ!!』



二つの鋭い刃物のような冷たい言葉が私の頭の中にふつふつと蘇る。


思い出すだけで涙が出そうなくらいで、胸が一気に締め付けられて何度も刃物で刺されているような、そんな感覚に陥る。


やだっ……思い出したくないのに……っ。



「……ごめんなさい」



私はその場にいるのが我慢出来なくなって女子トイレから女の子たちの様子も気にしないでダッシュで教室に戻り、カバンを持ってローファーに履き替えて校門を出た。



思い出さなくていいのに。 あんなことはもう二度と。



封印して、生きていきたいのに。


どうして……思い出しちゃうのよ……!


「ハァハァ……っ」


学校から全力ダッシュをして 校舎が見えなくなるくらいまで来たところでついに酸素が切れて立ち止まった。



「思い出したくなんかないのに……っ。 もう泣きたくなんかないのに……っ」



そう頭では思っていても涙をコントロールすることが出来ず、乾いたアスファルトにポロポロと瞳から溢れ出た涙が零れ落ちて丸いシミを作る。



「お前、ほんと無愛想だよな!」



すると、突然、後ろから誰かの声が耳に届いた。



「うっせぇ」



一件、噛み合っていない会話に聞こえてもそのやりとりからは笑い声が聞こえてくるから不思議だ。



って、そんなこと思っている場合じゃなくて

人が来てしまう……!こんな情けない姿を赤の他人には見られたくない。



そう思って急いでどこかに隠れようとしたのに……



──……パシッ。



突然、誰かに腕を掴まれて動きを制されてしまった。



こんな涙でグシャグシャな顔、誰にも見せられない。 例え、赤の他人だとしても。



「お前、泣いてんの?」



この声……。


聞き覚えのある声はついさっき後ろから聴こえた声だった。

「うっせぇ」と口では毒を吐きながらもうっすらと笑っていた人だ。



「あなたには関係ないでしょ!!」



こんなの八つ当たりだと自分でもわかっている。

でも、誰かに当たらないと今まで何とか保ってきていたボロボロの心が壊れてしまいそうだった。


掴まれた腕を振りほどいて走って逃げようとしても男の人の力はやっぱり女の私よりは強くて振りほどけない。



「は、離してよ!」


何なのよ、この人。

さっさと離せばいいのに……!


だって、私たちは赤の他人なんだよ?



「どうせ、離したら逃げるだろ」



彼は落ち着いた声で表情を変えずに言った。


そんな当たり前のことを聞かれても困るんですけど。 離してほしいから、振り払おうとしていたのに。



「当たり前でしょ」


「だったら、離さねぇ」



は!?


この人、何様なの!?

まだ出会って数分しか経ってないのに。

でも、強引な人だから私が大人しく従うまで一生離してくれないパターンだ。


それなら、こっちにも考えがあるんだからね。



「わかりました。 逃げないですから、だから離してください」



私は大人しく従う……フリをした。


離してくれたら、その隙にダッシュして逃げよう。

そう思っていたのに彼はなかなか私の腕を離さない。


なんで……? 何で離さないの?




「バレバレなんだよ」




む、ムカつく……!

本当にさっきからなんなの!?この人。


言う事が上から目線すぎるんですけど。



「もう、分かりましたから!」



もうこの人には勝てない。そう察した。

さっさと帰るためには早く切り抜けたい。



今度こそ、彼はちゃんと私の腕から手を離してくれた。


その隙に逃げても、どうせこの人のことだから追いかけてきそうだし……逃げ道はないと考えた私は大人しく従うことにした。



「なんで泣いてるかは言いたくなかったら言わなくてもいい……でも俺から逃げんなよ」



「さっきも言いましたけど、 あなたには関係ないですから」



私は顔も見たくなくてずっと俯いていたけど

態度が大きくて失礼なことばっかり言う彼の顔を見てやると思って顔を徐々に上にあげて息を呑んだ。



だってそこにいたのは、 今まで見たこともないくらい整った顔があったから。



ダークブラウンの髪色に女の私でも羨ましがるくらいのきめ細かい綺麗な肌に切れ長な目にスッと筋の通った鼻、形のいい唇。



本当に息を呑むほど、言葉を失くすほど整っていて……正直驚きを隠せなかった。



これぞ“イケメン”だ。

それに加えて、彼はすらっとしていて身長まで高い。


177cmぐらいあるのかな?


でも……体が凍りついてしまうんじゃないかと思うほど冷たく荒んだ瞳をしていた。


まるで、何もかもに絶望したような、そんな目だった。


そりゃあ、一瞬びっくりしたけど 失礼なヤツには変わりないのだから何も思わなかった。


男の隣にいたニコニコとしていて見るからに愉快そうな人は彼には負けるけど普通にかっこいい。


そんな彼は私の方をみて、機嫌が良さそうにニコッと微笑んだ。


なんなの……コイツら……。

普段なら、こんなめんどくさそうヤツらとなんて絶対関わらないのに。



「ふーん、名前は……水原愛優?」



興味無いなら聞かないで欲しい。

そう心の中でボソボソと思いながらも……。



って、彼に名前を呼ばれたよね!?

何で教えてもないのに知ってるの!?



「そんな驚くなって。そこに書いてあんじゃん」



私が驚いていることに気づいた彼は私が肩から掛けているカバンをゆびさして言った。



彼にそう言われて気づいた。そうだった…。

カバンに自分の名前を刺繍してあるんだった。



ふと、刺繍に視線を向けると朝までは綺麗だったはずの刺繍も今日の朝に草むらに放り投げられたせいか、少し泥がついて汚くなっていた。


それを見ていると今日のことを思い出してまた涙が出てきそうなので立ちさそうとして歩き出そうとした瞬間、



「……愛優」



彼に不意に名前を呼ばれて不覚にもドキッと胸が高鳴ってしまった。


彼の方に視線を移したら、彼の瞳は切なげに揺れて私を映していた。



何……?

何か言いたいことでもあるの?


それなら、早く言ってくればいいじゃん。

しばらく、待っていたのに何かを言う素振りすら見せない彼に呆れて私は歩き出した。



彼は……私なことを追いかけては来なかった。

全然……期待なんてしてなかったよ。赤の他人だもん。


もう会うことなんてないし。

なのになんでこんなに悲しい気持ちになっているの?



と、思っていたら彼の隣にいた人が私の後を追ってきたのかポンッと後ろから方を叩かれてそちらに視線を向けるとさっき無愛想な人の隣にいた人が立っていた。



「ごめんね、アイツ不器用なの。これアイツの電話番号だから、なんかあったら連絡して? 愛優ちゃんだっけ?なんか悩んでるみたいだし」



そう言って、さっきと同じようにふわりと微笑むとくるりと体の向きを変えて、走って行ってしまった。


なんなの、あの人たち。


もう会うつもりもないし、電話なんてかける機会は一生来ないって。


本当に迷惑なんだよ。 そう思ってるはずなのに寂しいと思ってしまう私はどうかしてる。


帰り道も彼らのことを考えていたら、 あっという間に帰りたくもない家に着いてしまった。



「ただいま」



私の声はしんみりとした玄関に消えていった。


『ただいま』と言っても返事は返ってこない。 これも私の日常の一部である。


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