本誌のネタバレあり
謎軸
「うーん、アメジストのビー玉もあるのかな?」
「…どうでしょうね…」
ドストエフスキーは困っていた。
学ランと学生帽という格好とは
まるで似合わぬ幼さを見せる少年に、
顔を見つめられてから数刻も経っている。
逃げようと離れれば
「ねぇねぇ、どこ行くの?僕も行っていい?」
と刷り込みという動物の現象学のように
追い掛けられて逃げる事ができない。
まだまだ元気そうに一方的な会話を続ける子供と
貧血気味で虚弱体質のぼくでは
体力面で勝つことなど不可能に近い。
ぼくの方からは諦めて
彼に諦めてもらうように誘導しましょうか?
「君は何方かと逸れたのですか?」
「なんで?君に教える必要ある?」
「そうですね、失礼しました」
「ねぇ、それが人心掌握術ってやつなの?」
「…おや」
この若さにして、この聡明さは、
多くの年月を過ごしてきたぼくでも
目を大きく開いて驚かされてしまった。
「どうして人心掌握術だと思ったのですか?」
「はあ〜?君もなの?
こんなの誰だって分かるでしょ」
「ふむ」
そうか、
この少年は自身の聡明さに気付いていないのだ。少年の言葉と表情だけで分かってしまった事実が
甚く可哀想で笑みが溢れてくる。
「君は周りの大人たちは怖いと思いますか?」
「…僕のこと子供だって馬鹿にしないの?」
「もちろんです。
ふふ、可哀想に…」
帰り道の分からない迷子の子供に
ゆっくりと手を差し出した
「やだ、その手は受け取らないよ」
「何故です?」
「僕が君に手を伸ばすからさ。
君の瞳ってビー玉が入ってるみたいで綺麗だよ」
「…」
「ほら、僕って綺麗なビー玉を集めるのが趣味だからさぁ」
分からない…。僕の手を断る理由と、ビー玉なんてどの様に考えようとも話が結び付いていない…。
「だから次は君のアメジストのビー玉が欲しいなって」
この手を、意味も分からぬ理由で
断られてしまったかと思えば、
次の瞬間に言われた言葉で
ぼくは小さく口を開いたまま呆けてしまっていた
と同時にここで死を与えてしまうのは惜しいと
ぼくの中にある好奇心が揺れた気がしたのだ。
「…ふふ、善い事を思い付きました。
では君が大人になったら、またお会いしましょうか」
「なに?子供扱い?」
「いいえ、これは神が定めた運命ですから」
さて、運命の日はいつ来るのだろうか?
多くの時間を過ごした彼は
どうなっているのだろうか?
期待と想像で、ふふと微笑んでいれば
「まって!」
彼の焦る声と同時に外套を掴まれて、
「ずっと待ってるからね?
それじゃ、またね〜」
あはは!と幼げに笑って手を振る彼を見て
この少年には諦めてもらえないだろうと悟った。
コメント
2件
初めて乱ドス見た やっぱり2人とも可愛いすぎる 確かにドスくんの目って綺麗だよねあと乱歩さんも 僕 瞳フェチなんだけど乱歩さんも?推しと同じなの嬉しい
凄く好きです...小説の書き方が上手くて読みやすいですし...!