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私の目の前にチップがばら撒かれる。「え、あの……」私は混乱する。「お前、偏差値低いだろ〜ならちょっとは博打してこいよ〜度胸見せてみろよ」そう言って、その人は私の前から去っていく。

「あの……」私は思わず呼び止めてしまう。

「あ?なんだよ?お前俺に文句でもあんのか?」

「いえ、あの、ありがとうございます」

「別にお前の為じゃねぇよ!お前みたいな奴見てたらむかつくんだよ!」そう言うと今度こそ本当に立ち去って行った。

私は呆気にとられると同時に少し胸が熱くなるのを感じた。同時に自分がどれだけ周りを気にしていたか思い知らされたような気がした。それからの一週間、私は表情を殺し続けた。それでも、相変わらずクラスでは一人ぼっちだったし、友達なんて出来やしなかった。それでも、私は前ほど惨めな気持ちにはならなくなっていた。

そんなある日のこと。いつものように昼休みを一人で過ごしていると、突然声をかけられた。「ねぇ!あなた一人なの?」顔を上げるとそこにいたのは可愛らしい女の子だった。その女の子はニコニコしながらこちらを見つめている。私は戸惑ったものの、恐る恐る応えることにした。「あ、うん……」

すると彼女は目を輝かせながら言った。「それなら一緒に遊ばない?私あなたの事気に入ったわ!」突然の申し出に私は動揺したが、同時に嬉しくもあった。今までこんな風に誘ってくれる人なんていなかったから……。

それからというもの彼女と私は毎日のように一緒にいるようになった。彼女と一緒に過ごしている時間は私にとってかけがえのないものだった。そんなある日のこと、私達はいつものように一緒に昼食を取っていたのだが、突然彼女が口を開いた。「ねぇ、私考えたんだけど」

「何を?」私は首を傾げる。

彼女は微笑みながら続けた。「私達って友達よね?」

「うん……」私は戸惑いながら答える。だって今までそんなこと言われたことなかったからだし、そもそも友達というものがどういうものなのかも分からなかった。

「良かった!それじゃさ、私達親友になろうよ!」

「親友……?」私の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

彼女は少し照れ臭そうにしながら続ける。「うん!一緒にいて楽しいし、それになんだかあなたと一緒にいると安心するの」そう言って私の手をギュッと握ってきた。その手はとても温かかった。私は思わず涙が出そうになるがグッと堪える。

それからというもの彼女と私はいつも一緒にいるようになった。休日もよく二人で出かけたりしたし、お互いの家にも頻繁に出入りするようになった。そんなある日のこと、私達はいつものように一緒に夕食を食べていたのだが、突然彼女が口を開いた。「ねぇ、私達って恋人みたいだよね?」

「え……?」私は思わず戸惑う。

彼女は微笑みながら続けた。「だってさ、一緒にご飯食べたり遊んだりしてるんだもん!」彼女はとても嬉しそうだった。そんな彼女の笑顔を見ていると私も自然と笑顔になってしまう。

「そうだね」私も笑顔で応えた。すると彼女は一つ提案して来た。「ねぇ、私と一緒に賭け事しない?」「賭け事……?」私は首を傾げる。

彼女は目を輝かせながら続けた。「うん!私、良いとこ知ってるんだ!そこねお金じゃ無くて自分の『誰にも言えない思い』を賭け金にして勝負するんだよ!」「え、それってどういう……」私は困惑する。彼女は楽しそうに説明を始めた。「えっとね〜まず最初に自分が大切にしているものを紙に書くの、そしてそれを封筒に入れて封を閉じちゃう」

彼女は続ける。「そしたらその封筒をある場所に持って行って『この封筒の中に入っているものを全て賭ける』って言うだけ!それで相手が受けてくれたなら晴れてゲームスタートだよ!ルールわかったしょ!じゃいこ!」彼女は私の手を引いてかけて行く。「ちょ…待って…」私は戸惑いながらも彼女に引っ張られていく。

そして私達はある場所に到着した。そこは小さなビルのような場所だった。中に入ると受付があり、そこで会員登録をするらしい。「あの……ここってどういう場所なんですか……?」私が恐る恐る尋ねると受付の女性は笑顔で答えた。「ここは『人生』を賭けることが出来る場所ですよ」

「え……?それってどういう意味……」私が言い終わる前に彼女は私の手を取りながら続けた。「ほら!早く行こ!」

私は彼女に手を引かれるまま奥の部屋へと通された。そこはまるでカジノのVIPルームのような場所で、高級そうなソファやテーブルが並んでいた。そしてそこには一人の女性が座っていた。「あら……その子は?」その女性はこちらを見ると微笑んできた。

「うん!この子私の友達でさ!人生賭けられるの!?」彼女は目をキラキラとさせながら聞いた。すると女性は静かに頷きながら答えた。「ええ、勿論ですよ」

私は二人のやり取りをただ聞いていただけだったのだが、何故か不思議と不安は無かった。それどころか不思議な高揚感すら感じていたのだ。「じゃ、まず見ていこうかな」女性が私にトランプを渡した。「それじゃ、この中から好きなカードを選んでね」私は言われるままにカードを選んだ。

そしてゲームが始まった……結果は一応勝てた。「やった…」私は小さく喜んだ。「凄いじゃん!でも油断は禁物だよ?次行ってみよ!」彼女は嬉しそうな顔で言った。しかし私は本当は喜ぶべき場面で笑えなかった。長い間表情の殺したせいで感性が腐ってしまったからだ。私は勝ち続けた。「すごいじゃん!あなた才能あるよ!」彼女は嬉しそうに言ったが私は何も感じなかった。ただ淡々とゲームをこなしていくだけだった。気付くと私の片側には封筒が大量に積まれていた。これには『誰にも言えない思い』が書かれた紙が入っている。つまり『人生』が入ってると考えてくれて良い。「そろそろ終わりにしよっか、これ以上続けると大変な事になっちゃう」彼女は少し心配そうに言った。私は無言で頷くと最後のゲームを始めた。相手は男性だった。彼は私を見るとニヤリと笑った。「君……なかなか良い目をしてるね、気に入ったよ」そう言うと彼もまたトランプを選んだ。結果は私の勝ちだった。しかし彼は全く動じず、むしろ嬉しそうだった。「いやぁ〜本当に強いんだね!君は!」そう言って私に封筒を渡してきた。中には『誰にも言えない思い』が入っていた。「それ、大切にしてね」彼はウインクをしながら言った。私は小さく頭を下げるとその場を後にした。そして私達は帰路についた。「ふぅ……」私は深く息をつく。正直もうクタクタだった。

「お疲れ様!楽しかったね!」彼女はニコニコしながら言う。私も小さく微笑んで応える。「うん、楽しかったよ」「またやろうね!」私達は笑い合った。それからというもの私は彼女と頻繁に会うようになった。彼女と一緒にいる時間は本当に幸せだと感じたし、これからもずっと一緒にいたいと思った。そしてある日のこと、私は無性にあの賭け事をしたくなった。私は駆け出してビルへ入る。「あら、また来たのね!」女性は優しく迎えてくれた。私はソファーに座って対戦相手を待つ。すると私と同じ歳の子が来た。「正論ってつまんないよねぇ〜『人生』なんて一種のジョークみたいなものでしょ?」彼女はそう言い封筒を差し出した。私はトランプを彼女に渡す。そしてカードを1枚引く。今回も私の勝ちだ。その時の私の顔は物凄く引き攣った笑いだったと思う。私は気の向くまま勝ち続ける。30連勝した頃から私の感覚が変わって来た。私は一旦席を離れて一つの水槽の前に来る。中は黒く澱んでいて何がいるか分からなかったが水槽のガラスにあるもの写った。微笑を浮かべた気味の悪い私の顔が。「分かり合えなくても良いんだ」私は自分に言い聞かせた。そして席に戻った。次の勝負相手は男だった。「さぁ君の心の臓のビートを私に聞かせてくれ!」そう言って封筒を差し出す。結果は私の勝ちだ。それからもずっと勝ち続けた。私は正々堂々正面突破でやり続けた。最後のゲームだ。相手はあの時私にチップを投げつけた男だった。「はっ!どうなったものかね」男は笑いながらカードを引いた。男はカードを机に投げ捨てた。「俺の勝ちだ」私は初めて負けた。私は男に封筒を渡す。が、女性が引き止めた。「これはこちらで預かります。」男は少し不満そうだったがそっと店を後にした。女性は私の封筒を開けて『誰にも言えない思い』を見た。「『わかり合いたい』ね、」女性は少し悲しげにその封筒を私に返してこう言った。「貴方はこの思いを隠し続けて勝ち続けなさい。貴方が探し求めたものは必ず貴方の手の中にあるのだから」私は確実に自分の中で何かが切れる音が聞こえた。「もう、自由なんだね…」私は安堵して封筒を握りしめた。


END

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