「好きにさせる」
そんなの簡単なことじゃない。
でもこれは任務であり、失敗することなんざ許されない。
まだ…そこはまだいいんだ。
だけど、これだけはどうしても気に食わない。
…何故私が好きでもない男を堕とさなければいけないんだ。
私にだって好みというものがある。
まだ人の良さそうな人なら良かった。
なのに、何故こんなバカでアホそうなガキを堕とさなければいけないんだ?
凛とした海と青春のある道。
彼と出会って数秒、私は思った。
(あれ?こいつ思ったよりもアホなんじゃないか?)
彼女に振られ、殴られ、何をしたらそうなるんだよ。
とりあえず彼が落とした落とし物を拾った。
まあ、わざと落としたのだけど。
そして自分の家にも休ませた。
これも任務の為だ。
普通の人ならここまでくれば少しは気を持つはず…なのにどうしてこいつは
自分の話ばかりしてるんだ…?
「やっぱり自分のどこがいけなかったんだろか。」
そういう所だろ!?
「魅力的すぎたのだろうか…?」
だからそういう所だろ!
「…まあ別に次を探せばいいだけだが」
正直こいつを堕とせる気がしない。
でも任務だから仕方がない。
「ん?君聞いてるのか?」
その声に今までの思っていたことから我に返る。
「ええ。聞いてますよ」
はぁ…
手強い相手だな。