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この世界には魔法と能力が存在する。
魔法はだいたい誰でも使えるものであり、日常的に使われている。
炎を出す、水を呼ぶ、風を吹かせる。その種類は様々だ。
それに対して能力。能力は発現する者が少なく、それに何よりも、魔法より強力なものだった。
魔法では起こせないこと、魔法では替えの効かないこと。それを能力ではできた。
魔法を“奇跡”と呼ぶならば、能力は“神業”だ。
それに嫉妬した人間は差別を始めた。
嫉妬ではなく、恐れからかもしれないが。
それは今でも根強く続いている。能力者は迫害を受け、隔離のみで済めば幸運な程だった。
いじめ、偏見から始まり、
医療やその他契約の拒否、
入店お断り、
虐待、
不平等、
冤罪、
……人間として扱われないこともある。
それは無能力者にとって当たり前のことで、能力者にとっても当たり前のことだった。
…………
あれはいつだったか。
吟遊詩人と言う名前を語る蛮勇が、こう歌った。
───それは真に正しいものか
───それの真は何なのか
───それを知ろうとしないのは
───この世界が腐っているからだ…
───異物を消そうと励むのは
───愚者の行いとまだ知らぬ…
それは、誰もが気にも留めない、小さな小さな声だった。
小さな、叫びの声だった。
ただ一人の少女を除いては。
あれはいつだったか。
「能力者」が立ち上がり、この世に反旗を翻したのは。
あれはいつだったか。
「能力者」によって世界が変わったのは。
あぁ、ああ。思い出せない。
ならば、順を追って考えればいい。
そこの人も聞いていくか?
ほら、そこの貴方。
そう。貴方だ。今、これを見る貴方だ。
…興味がないなら聞かなくていい。
そうだな、これは私の独り言とでも思っておいてくれ。
さぁ、始めようか。
これは、諦めた者達の物語───