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あまりにも無いので…ギリシャ戦に夢見すぎてる
「はぁ……」
「どうしたんだい?ため息なんてついて」
「幸村部長……」
練習の休憩中、切原は頭を冷やそうと水飲み場まで来ていた。
そこに現れたのは部長の幸村だった。
「ため息ついたら幸せが逃げるよ」
「そんな迷信信じないッスよ」
「じゃあどうしてため息なんてついてたんだい?」
「別に……ちょっと考え事してて」
切原は言葉を濁す。
まさか「遠野先輩のことが好きなんですけど、多分嫌われてるからどうしたらいいですか」なんて言えない。
「悩みがあるなら聞くよ?誰かに話せば少しは楽になるかもしれないし」
「それは……」
「テニスの事、じゃないよね?悩む暇があるなら赤也は練習するだろうし」
「はい」
幸村は切原が話し出すのをじっと待ってくれている。
すると勝手に口が動いた。
「あの……俺……」
「うん」
「遠野先輩が、好きで……」
「うん。それで?」
「……でも、多分嫌われてて」
「どうしてそう思うんだい?」
「…だって俺いっつも地雷踏んでばっかで、あの人に1番処刑されてるの俺だし」
「確かに」
切原がそう主張すると幸村は納得したように頷いた。
「やっぱり俺、あの人に嫌われてるんだ……」
「赤也、それは違うと思うよ」
「え……?」
幸村の言葉に切原は顔を上げる。
するとそこには優しい表情の幸村がいた。
「遠野くんは何だかんだ赤也の事を認めてるじゃないか。本人はああ言ってたけど、ギリシャ戦の最後は本当に赤也を守るためだったと思うよ」
「それはそうっすけど……でもやっぱり俺は遠野先輩に嫌われてるんスよ」
「どうして?」
「だって、俺が近づくといつも嫌そうな顔するし……」
切原はまた下を向いてしまった。
すると幸村は切原の肩に手を置いて言った。
「赤也は遠野くんの事好きなんだろう?」
「……はい」
「ならその気持ちを素直にぶつければいいんじゃないかな?遠野くんが直接君の事を嫌いと言ったわけじゃないし、嫌いだって決めつけるのは早いんじゃないかな?」
「そう……かな……」
「そうだよ」
幸村は切原の肩から手を離した。
切原はまだ少し不安そうな顔をしている。
そんな切原に幸村は優しく微笑んだ。
「大丈夫、きっと上手くいくよ」
「そう……ッスかね……」
「うん、だから頑張って」
「……はい!」
幸村の言葉に元気を貰った切原は元気よく返事をした。
そしてそのままの勢いで駆け出す。
「俺!頑張ってみます!ありがとうございました!!」
「うん、頑張れよ」
幸村は手を振って切原を見送った。
「遠野先輩!好きです!付き合って下さい!」
「え……は……?」
「俺、遠野先輩のこと大好きです!」
「あ……えっと……何、急に?」
「好きです!付き合って下さい!」
「だから、なんで急に……」
切原は勢いに任せて遠野に告白していた。
遠野は突然すぎる告白に困惑し、切原から少し距離を取った。
「俺……ずっと前から遠野先輩のこと大好きだったんです」
「えー、あー…知らなかった」
「今まで遠野先輩から嫌われてるって思ってたんですけど、幸村部長に聞いたらそんなことないって言われて…」
「うん……」
「だから俺、遠野先輩にちゃんと気持ち伝えようって思って」
「そう、か…まぁ確かにお前のことは嫌いじゃねぇけど……そういう風に考えた事はない」
遠野は切原から目線を逸らしながらそう言った。
しかし切原は1歩前に踏み出した。
「でも俺、遠野先輩のこと諦めたくないです」
「え……?」
「だって好きなんですもん。遠野先輩が俺のこと嫌いでも、俺は好きっす」
「いや……別に嫌いではねぇって……」
「だから!遠野先輩が俺の気持ちに答えてくれるまで言い続けます!」
「え、いや……それは……」
「俺、絶対諦めません!だから覚悟しといて下さいね!」
切原はそれだけ言うとそのまま走り去ってしまった。
遠野は呆然としてその場に立ち尽くした。
「あー言っちまったよ…」
最初はうだうだ悩んでたのに、伝えると決めたら謎の自信が湧いてきて勢いで告白してしまった。
しかし切原の心は晴れやかだ。
遠野は自分のことを嫌いではないと言った。
それが聞けただけで十分だ。
まぁさっきので嫌われたかもしれないのだけど。
「ま、いっか!」
切原は前向きに考えることにした。
それからというもの、切原は暇さえあれば遠野に告白し続けた。
毎日ではないが、結構な頻度である。
「遠野先輩!好きです!付き合ってください!」
「うるせぇ!」
俺はいつものように電気椅子を喰らう。これはもはや日課になっている。
「ぐぅ、う、ちょっとは手加減してくださいよ!」
「はぁ?俺は処刑に手は抜かねぇ」
「むぅ……」
切原は不服そうな顔をする。
すると遠野が声をかけてきた。
「なぁ……お前いつまでそれ続けるつもりだよ」
「え?」
「だから、その……好きって奴」
「……だって遠野先輩が答えてくれるまで言い続けますって言ったじゃないですか!」
「いや、それはそうだけどよ……でも毎日毎日よく飽きねぇなって思ってさ」
「飽きませんよ!俺、本気で遠野先輩のこと好きですもん!」
切原は胸を張ってそう言った。
遠野は思わずポカンとした顔になる。
「お前……変わってるのな……」
「何がッスか?」
「いや、だって俺なんかのこと好きになっても仕方ねぇだろ」
切原は真剣な顔で答える。
「そんなことありません!俺は本気です!」
「……はいはい」
遠野は呆れたようにため息をついた。
この後、許可なしに篤京って呼び始めて処刑されたり、ダブルスの試合中にも告白してきて処刑されたりしつつ切原の頑張りで結ばれます