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イタリア。
波紋も、柱の男たちもいない、普通の世界。
ジョセフは転校生で、問題児で落ち着きがなさすぎる学生。 でも成績は優秀な方らしい。
一方シーザーは、地元の名家の子で、品があって頭が良い優等生。端正な顔をしており、無駄に女子人気が高いらしい。
そんなふたりの出会いは最悪。
ジョセフが転校初日、校内を迷ってしまい、フラフラ廊下を歩いていたら、シーザーにぶつかってしまった。
シーザーが尻もちをつき、「君は目が見えないのか?ぶつかってしまった。」と、ジョセフの方を見て言う。
ジョセフは、「は!廊下で突っ立ってるてめぇが悪いんじゃねーの!?」と逆ギレ。
周囲は静まり返り、ため息をつく人もいた。
__絶対こいつとは仲良くなれないな、と2人の思いは一致した。
授業では、ジョセフが適当な答えを言って周りの笑いを取る。
それに比べ、シーザーは完ぺきな答えを、静かに出す。
「ちょっとは間違えろよなー、優等生サン」
「君こそしっかり考えて授業を受けたらどうだい?問題児クン」
ほら、また険悪ムード。周りの生徒はやれやれまたか、という感じだ。
こんなに仲が悪いのに、なぜかいつもグループ分けが同じ。
レポートなどをまとめるときは、ジョセフが雑な案を出し、それをシーザーがまとめる。
でも、だいたいそのレポートが優秀だ、と先生に褒められる。
「ほらな!俺の発想力のおかげだよーん」
「発想は悪くないが、そのあとが雑すぎるんだ、君は。」
「にゃにを〜!?」
これもいつもの光景。もうクラスメイトたちも見慣れてきてしまった。
仲が悪い2人だが、結局いつも一緒にいる。
放課後、街をぶらつくのも一緒だ。
ジェラート屋で味を選べずに揉めるのも、もういつもの事になってしまった。
「レモン味に決まってんだろッ!!」
「いや、ジェラートと言えばチョコレートだろう!」
「はー!?シーザーちゃんは子供舌ですね〜」
「君のその態度よりかは大人だッ!」
結局、全く決まらなくて半分半分になる。
夕方、橋の上で並んで食べていると、ジョセフが言った。
「なぁ、俺、この街結構好きだぜ。」
シーザーは少し驚いてから、空を見上げる。
「……そうか、なら良かった」
心なしかシーザーの声が、少し嬉しそうだった。
戦いはない。別れもない。命をかける理由もない。
ただ、張り合って、言い合って、笑い合う。
気づいたらいつも隣にいる存在。
歳をとっても、きっとそれは変わらないだろう。
ジョセフが言った。
「なぁ、シーザー、俺たち、じいさんになってもこのままかな。」
シーザーは、少し微笑みながら、
「……その可能性は高いな。」
と言った。
__世界が違っても、2人は出会い、肩を並べ合う。