ー20xx年12月24日。
(….もうクリスマスか……。)
はぁっ とため息を着いた。
会社のオフィスから町を見下ろす。
町はすっかりクリスマスムードで、鮮やかなイルミネーションで彩られていた。
イルミネーション、、、か、、。
昔よくお父さんと二人で見に行ったっけ。
懐かしいなぁ、、。
あの頃は大きなクリスマスツリーではしゃいで、
少し降っただけの雪でも目をキラキラさせてたっけ、、。
まぁ、お父さんと二人でお出かけなんて、10歳でめっきり無くなったけど。
変に恥ずかしがって、お父さんと二人なんて無理無理、、とか思ってたなぁ、、
はぁっ、、ともう一度ため息を着く。
煙草の匂いがすっかり染み付いた服。
山積みの資料や書類。
無表情の顔。
あの頃の面影なんてすっかり無いな なんて思いながら残りの仕事を終わらせにかかる。
午前零時。
独りきりの仕事帰り。
よし、今日はあそこに行ってみよう、、!!
カランと音を立てて重い扉を押す。
風に乗って漂う珈琲の薫り。
古いレコードから流れるレトロな音楽。
何故開いてるんだ と思いながらもカウンター席に腰を下ろす。
町外れの裏路地にある古い喫茶店。
ここは幼い頃から知っている。、、、って来たのは十数年ぶりだけど。
とか思いながらメニューに目を通す。
む、、、これ、、
[メロウクリームソーダ]
め、メロウクリームソーダ、、?
変な名前だな、、、でも写真はめちゃくちゃ美味しそう。
んむむ、、、こんな時間に甘い物なんて罪深い、、けど、、
く、クリスマスだし良いよね。
「すみません。このメロウクリームソーダ、一つ。」
コクッとマスターが無言で頷く。
そういえば毎年お父さんと二人でイルミネーション見に行った帰りに食べてたっけ、この喫茶店で。
好みって案外変わらない物なのかもな、、
しみじみと思い出に浸っているうちに目の前にはグラスとスプーン、ストローが置かれた。
グラスにたっぷりと入ったメロンソーダ。
その上に乗った真っ白なバニラアイス。
さらにその上の真っ赤なさくらんぼ。
ゴロゴロと入った大きな氷の透明感とグラスの周りについた水滴。
たまらない、、、!! すぐにスプーンに手を伸ばした。
まずはアイスをゆっくりとすくって、
ほんのり白くにごったメロンソーダに浸けた。
今にも溶けてしまいそうなそれをゆっくりと口に運ぶ。
「、、っ、!!」
なんだこれは。美味し過ぎる。
とろりとした柔らかい舌触り。
バニラアイスの甘い香りとふわふわした口どけ。
少し甘過ぎるところが、メロンソーダのお陰で上手く中和されている。
しゅわっとした炭酸も合わさって更に美味しい。
今度は私が今にも溶けてしまいそう。
もう一口、もう一口。
あっという間にさくらんぼまで完食。
「ご馳走様でした。」
長居しすぎてもいけないなと思い、喫茶店を後にする。
やっぱり独りきりの帰り道。
イチャつくカップルとカラフルなイルミネーションを横目に駅に向かう。
すっからかんの電車に独り揺られながら喫茶店でのことを思い出す。
ああ、美味しかったなぁ、、、。
メロウクリームソーダを食べている刻だけ、小学生に戻ったみたい。
ふふふと笑いながらいつもの駅で電車を降りる。
アパートまでの帰り道。
いつもよりちょっとだけ足が軽い。
明日が、少しだけ嫌じゃ無くなった”かもね”。
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