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「じゃあここの答えを、、、、天音。言ってみろ。」
私は少し緊張しながら、おずおずと言った。
「えっと、、、、173分の52、、、、です」
「正解だ。」
おおというざわめきが聞こえる。
今は、数学の授業中。
担当の先生は相澤先生だ。
そして、この問題は、結構難しかったらしい。
よ、よかった、、、、無事正解できて、、、、!
私がこっそりガッツポーズをすると、梅雨ちゃんとお茶子ちゃんがグッとマークをしているのが見えた。
わあ、、、、!うれしいな、、、、
私はそれに笑顔を返した。
そして、もう一度前を見る。
よかったなあ、、、、あのとき二人と話せて、、、、
お昼休み。食堂で食事を一緒にした私達は、いろんなことを話した。
全部たわいない話題だったけど、すごく楽しかった。それに、仲良くなれたと思う。
ともだち、、、、になったのかな!
私はちょっとご機嫌になりながら、次の問題に取り掛かっていった。
〜〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン〜
チャイムが流れた。
五時間目の終わりの合図だ。
「これで数学は終わりだ。」
相澤先生がそういうと、クラスが一気に騒がしくなった。
友達と雑談する声が聞こえる。
ふう、、よし!無事にこの授業ものりこえた!
私が一息ついていると、梅雨ちゃんとお茶子ちゃんが私の席にやってきた。
「すごいよ〜!あの問題正解するなんて✨」
「あれは難しかったわ、、、、さすがね。」
二人からベタ褒めされて、私は顔を真っ赤ににした。
「いや、、、、そんな、、、、っ!」
「でも、あれはすごいと思うぞ」
にゅっと会話に飛び込んできたのは、轟くんだ。
「と、轟くんまで、、、、!」
「やっぱ、そう思うよね!」
「ああ。」
「本当に尊敬するわ。」
「そ、そんな、、、、!」
私たちがそんな話をしていると、相澤先生が声をかけてきた。
「天音。ちょっといいか。」
「はい、、、、なんでしょう?」
たしか、次の授業は相澤先生じゃないはずだけど?、、、、
「六時間目に、個性把握テストをやる。だから、体育着に着替えておいてくれ。」
「、、、、え?」
思わず間抜けな声が出た。
もちろん個性、にも驚いたけど、、、、個性把握テスト、、、、ってなに?
私が首をかしげていると、クラスのみんなは歓声を上げた。
「おお!天音もやるのか!」 「楽しみですわ。」 「お手なみ拝見だな!」
ど、どういうこと?
混乱していると、相澤先生が説明してくれた。
「学校でやる体力テストに、個性を使っていいっていうやつだ。国は平均を求めたがるからな。」
な、なるほど、、、、!
ーー個性か、、、、
少し、抵抗はあるけど、、、、やらなくちゃ、、、、!
私はぎゅっと手を握りしめて、返事をした。
「分かりました!着替えてきます!」
「校庭集合な。」
「はい!」
やってやる、、、、!
私は更衣室ヘかけていった。
ガラッ!タッタッターー
相澤先生はそれを見届けるとみんなに言った。
「お前らも見学していい。六時間目はそれだ。」
クラスから大きく歓声が上がった。
「やった〜」「授業ないぞ!」「しっかりと学習しなければ!」
相澤先生はそんな生徒の様子をちらりと見て、つぶやいた。
「さあ、、、、どこまでこいつらは学べるか。」
しかし、そのつぶやきに気づくものはいなかった。
ーー
「じゃあいいか。」
「は、はい!」
ここは校庭。
無事、着替えられたんだけど、、、、
私はちらりと横を見た。
そこには、興味津々の目を向ける1年A組のみんながいた。
み、みんなが来るとは思ってなかった、、、、
緊張、、、、する、、、、!
「頑張れー 」「いけるぞー!」「詩歌ちゃん、がんばれー!」
うれしいけど、、、、ドキドキする、、、、!
「じゃあ最初はソフトボール投げだ」
相澤先生が続ける。
「分かりました!」
私は深呼吸した。
だいじょうぶ、、、、!できる、、、、!
そう言いきかせると、私はソフトボールを握った。
、、、、遠くに、投げる!
ーーーー
「そういえば、なんで見学にしたんだ?」
切島鋭治郎が口を開いた。
それに反応したのは、芦戸三奈だ。
「えー何が?」
「だっていつもなら、無駄なことに時間をかけるなとか言いそうだけどな?」
「んーたしかに、、、、」
二人が考え込んでいると、相澤先生が会話に入ってきた。
「いい質問だ。答えてやろう。」
「「相澤先生!?」」
驚く二人をよそに、相澤先生は淡々と言った。
天音詩歌が、いままさにボールを投げようとしている。
「『速』、『遠』」
天音詩歌がつぶやくと、その漢字がボールに張り付いた。
周囲がざわめく。
二人もそれを見て、目を見開いた。
ビュンッ!
そして投げた瞬間、風を切る音がした。
1年A組の面々が呆気にとられてそれを見ている。
ボールはものすごい勢いで飛び、見えなくなった。
「天音詩歌。あいつはおそらくこのクラスで一番強い。」
天音詩歌は、ボールを投げた方向を眺め、おずおずと振り返った。
「で、できました、、、、」
そんなことを言われているとも、つゆ知らずに。
天音詩歌のヒーローへの物語が、一つ、進んだ音がした。