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今回の太中も最高でした……🥹︎💕︎綾菓子先生の太中って、見ると本当に心に来る感じの愛情が描かれていて大好きです!🫶
人の温もりを感じたい夜には元相棒と会う。
特別な感情を持っているわけでもなく、お互いがお互いに対してただの『セフレ』だと思っている。それだけの関係だ。
***
4年越しに会ったというのにイタズラを仕掛けられ、気分が悪かった俺は、近くのBARへと向かう事を決めた。
どこでも良かった。本当にどこでも良かった。深酒をしてあんなやつの顔を思い出したくもない、と思っただけだったから。
BARに着くと妙にいけ好かない顔面をしているやつと出会う。
神が仕組んだというものか、余計なことをしてくれた、これでは思い出したくもないと思っていても視界に入ってしまうでは無いか。
だが、店を変える余裕もないほど真っ先に酒が飲みたかったので、仕方なく青鯖の椅子から1番離れている椅子にすとん、と座る。
彼奴も彼奴で俺には何も言ってこない。
いつもならば1言目に身長いじり、からの「小学生がこんな時間に出歩いちゃダメだよ」真面目な大人ぶり、「それに未成年はお酒を飲んじゃいけないんだから」と言う。
珍しく疲れが溜まっているのだろうか
そう思って顔を覗いてみると顔が茹でタコのように赤くなっていた。
嗚呼、そうか…こいつは酔っ払っているのか。瞬時に理解し、いつものお変えしだ。と、スマホを取り出す。
シャッターを着ると、その音に気づいたのかこちらを見る。
酔っ払っていても勘が鋭いものだ…
感心しながらも目を合わせていると、急にこっちに近づいてくる。
「ねぇ、君…私の犬によく似ているね」
私の犬、というのは俺のことなのだろう。
酔っていても腹が立つ言い回し方で拳が出そうだったが、BARを殺人現場にしたくなかったので抑えた。
だけど俺は飲みに来たんだ。こんなクソ酔っぱらい野郎に構ってられるか
「マスター、こいつに水と……あとウイスキー頼む。」
「ねぇ、聞いているの?」
バーテンダーに話している途中だと言うのに、ダル絡みを毎秒のようにしてくる。
酒臭いのも相まってそろそろ限界が来そうだ。とその時に俺のベストの下をいやらしい手つきで撫でる。
いやいやいやいや……
「何すん…っだ!」
落ち着く音楽が流れているが、それもこいつの計画なのではないかと疑うほどに完璧な流れだ。
もしやこいつ…酔っ払っていないのでは?いや、もしそうならば俺を酔わせるはず
嗚呼、神には逆らえない、ということか
◇
地獄が始まると思われたが、意外に身体の相性が良く、何日か経つと路地裏に連れ込まれ、またやってしまった。
それからヤりたくなればヤる
と言う最悪の事態になった。
まぁ、性処理ができて以前よりスッキリしたのは認めるが…いや、認めたくはない。
***
「…あの出来事も5か月前か」
タバコの煙と一緒に吐き捨てる。
ズボンは履かず、シャツと下着とチョーカーだけを身につけていた。
シャツを羽織るだけだが、野郎のそんな姿を見て興奮するほど馬鹿な男じゃない、とわかっているからこそできる行動だ。
腹減ったな…とぼんやり思っていると布団がモゾモゾと動く。
「ねぇ、タバコの匂い臭いんだけど」
今まで布団の中に籠って丸まっていた太宰が布団から顔を出す。
「嗚呼、知ってる」
「中也のくせに…」
『生意気な』とでも言いたかったのだろう。
だが、いまさっきの自分の行動を思い出して口を止める。 生意気はどっちなのか考えてくれ。
「また遅刻すんぞ」
「一応敵組織なのに面倒見てくれるんだ」
国木田からの怒鳴り込み電話や、慌てた声での申し訳ないという言葉はもう聞きたくない。
「馬鹿言え、国木田に同情してんだよ」
「へぇ」
何を考えているのか。
どうせまた嫌がらせなのだろう
太宰治という人物は悪ガキに優れた知性を与えたような人物だ。 それだけではない。
自殺未遂を何度も繰り返し、ナンパも失敗しては、またもや失敗。と言う自殺願望女たらしなのである。
話はズレたが、どんな嫌がらせをされるのか…考えたところで仕方が無いことだろう。
あいつの考えていることは数年一緒にいた俺にもさっぱり分からない
◇
「中也さんのこと好きなんですか?」
急に敦くんがお弁当を食べながら私の目を見て質問をする。
YESと言えば嘘になるし、NOと言っても嘘になる。私はあの蛞蝓が心底嫌いだ。
だが、いつの間にか求めてしまっていた。
「太宰さん?」
「あ、あぁ!なんでもないさ。 それより急にどうしたんだい?そんなことを聞いて…」
慌ててしまったが、バレていないだろう
いつも通り接したつもりだ。
「いや…いつも中也さんの話ばかりしてるし中也さんと話していた芥川のこと凄い形相で睨みつけてたじゃないですか」
気づかないうちにそんなことを……
いや、自分の犬の面倒と言いながらも少し干渉しすぎていたのかも知れない。
これは認めるしかないのだろうか
***
『明日空いてる?』
と、送信ボタンを押す。
中也の仕事が終わるのは早くても日が変わっている。午後に活動するポートマフィアなのだから仕方ないけれど、会える時間があまりなくて少し腹が立つ。
次はどんな嫌がらせをしようか、
そう考えているとスマホがブーっとなる。
『中也からの返信!』そう目をキラキラさせて画面を開いてみるも、国木田くんからのメッセージで一気に気分を落とす。
なぜこんなに喜んでいたのだろうか
自分がバカバカしく思えてくる。
これもきっと、暇でならなかったからだと…そう思い込むことにした。
蛞蝓相手に恋煩いなんて認めたくない。
私の理想の相手はもっと可愛らしくて、綺麗な髪に、守りたくなるような細く、華奢な体を持っている女性だ。
それなのになぜあんな蛞蝓に恋心を動かされてしまうのか…あぁ、中也のくせに”生意気な”
***
後日、返信が来た。
『嗚呼』
いつも通りの文面で、愛情も何も感じなく、冷たかった。
ホテルの中で待っていた中也は、ふかふかのベッドに腰をかけ、部下と話しているよう。
これから他の男と甘い夜を過ごすというのに…いや、誰が好き好んで嫌いな奴と過ごす夜を嗜むというのだ。
「中也」
「遅ぇぞクソ太宰」
今更脱ぐことを恥じらうのは馬鹿げているとでも言うものか。
中也は恋人とするとなれば脱ぐことを恥じらうのだろうか、私が恋人ならそのことを解決するなんて簡単だ。
違う、恋人だったらこんなことを考えたりなんてしない。
手に届かない存在だから、そう思ってしまうのだ。
「…珍しいじゃねぇか、そんなしかめっ面」
「気にしないでいいよ」
すべてはこんなに好きになった私のせいなのだから、嫌いな人に好意を向けられていると知られたらどう思うのだろう。
ベッドが軋む音と共に体を重ねる。
◇
その日はなぜか満たされなかった。
ずっとそばにいて欲しい、一心でキスを落とそうとする。
「ダメだっ、」
頭が回っていないであろう中也の口から掠れた声で息とともに吐かれる。
嗚呼、理性のタネが外れそうだった
いくら共に夜を過ごしているといって、嫌いな人と唇を交わすなんてしたくなんてないだろう。
「ごめん」
目頭が熱くなる。
これは悲しくて泣いている訳ではない
気持ちよくてつい、出てしまったのだ。
そう言い聞かせて1戦を終える。
***
『いつまで言い訳をするつもりなんだ』
と、頭に直接語りかけられているような気がした。
ごもっともだ、この調子じゃいつまでたってもこの関係が進行することはない。
だが、失敗してこれ以上距離が空いてしまうぐらいなら、世界が爆発する方が良いと感じる。
それほど怖いんだ。
でも…もし届いてくれるなら
「ねぇ中也」
ベッドに寝転んでいる中也の背中を見ながら覚悟を決める。
「好きだ」
「…………嫌がらせか?」
「本気だよ」
会話はすぐに終わった。
中也からの甘い言葉は1つもなく、何時間も待っても返事が返ってくることはなかった。
いつの間にか朝になっていて、少し温もりがあるベッドシートを握りしめ、目が赤くなるまで泣いてしまった。
初恋は叶わないとよく聞くが、それは本当なのかもしれない。
◇
眠っている太宰の好きだった銘柄の煙草を手に持って、綺麗な朝焼けの方を見る。
「馬鹿な男だな」
これは、少しの希望を捨てられなかった惨めな男の話だ。
ー
朝焼けと煙草、終
◆アトガキ◆
私事ではありますが、文豪ストレイドッグス公式さんが『教えて!織田教育実習生』というものをしておりましたね。
その時のナカハラが、「無性にイライラする」と言っていて、なぜ?とオタク達は考察を広げており、見ているだけで楽しかったです。
太宰さんは相変わらず、どの軸でも「豆腐自殺法」の話題を出していて笑ってしまいました。
お話はこれぐらいにして、今回はいつもより1000文字長かったのですが、最後まで見て頂きありがとうございます。