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「うわぁん〜‼︎お姉さまぁがぁっ〜‼︎」
ヴィレームとヨハンが睨み合っていると、何処からか泣き喚く声が聞こえて来た。ヴィレームが眉根を寄せた時、ヨハンか駆け出した。少し遅れてヴィレームも後を追う。
少し走ると、扉が微妙に開いた部屋が視界に入る。ヨハンは迷う事なくその扉を開けると、中へと入って行った。
「酷いのぉ〜、私に意地悪するの〜‼︎」
ヨハンに遅れる事数秒、ヴィレームが部屋の中に入るとそこには、フィオナの妹のミラベルが幼児の様に床に座り込み、声を上げて泣き噦っていた。よく見ると左手から血が流れている。
「ミラベル姉さん……どうしたの?」
ヨハンがしゃがみ込み、ミラベルを覗き込む。
「ぐすんっ、お姉様が、お姉様がぁ……私の事、気に入らないって言って、突然私を突き飛ばして、そこにいるペットに私の手を噛ませたのよ⁉︎ほら見て、血が……痛いのぉ」
向かい側で、立ち尽くしているフィオナは黙り込み何も言わない。何も言わないと言う事は、肯定している事と同義になってしまう。
「フィオナ姉さん、ミラベル姉さんが言ってる事って本当なの?」
ヨハンが訊ねると、フィオナは首を横に振る。
「違う、私は」
「私が!お姉様の婚約者、素敵な方ねって言ったから、怒らせてしまったの!きっと、可愛い私に取られちゃうかもって、思ったのよ!私、そんなつもりで言ったんじゃないのに……。昔からお姉様って、被害妄想激しい所あるし……。でも、お姉様は悪くないわ。勘違いさせてしまって、お姉様の気分を害した私が全部悪の!だから、お姉様を責めないであげて⁉︎」
何だか、ヴィレームは笑いたい気分になってきた。今自分は、一体何を見せられているだろうか……。
何なんだ、この下手くそな芝居は……。
呆れるを通り越して笑いが込み上げてくる。本人は悲劇を演じているのかも知れないが、ヴィレームからしたら喜劇にしか思えない。まさか、こんな安芝居にも満たない演技に周囲は騙されているのか……いくら何でも阿呆過ぎるだろう。
「ヴィレーム様‼︎」
不意に火の粉が飛んで来た。ミラベルはヴィレームに向き直り、嘆願する様な目で見てくる。上目遣いで、瞬きを繰り返す……本人は可愛いと思っているのだろう……だが、ヴィレームは吐気がする。
「お姉様は、本当は優しい人なんです‼︎だから、ヴィレーム様もどうか、どうかお姉様を責めないで下さいっ、私が悪いんです……」
「……」
ミラベルがそこまで言い終わった時、廊下が騒がしくなり、バタバタとフィオナの両親が部屋の中へと入って来た。
「まあ、ミラベル!貴女、それは一体どうしたの⁉︎」
「ぐすん、お母様あぁ〜‼︎」
ミラベルは両親等に先程同様、恐らく本人曰く迫真の演技で説明をした。すると、母は物凄い剣幕になる。
「フィオナっ‼︎貴女、可愛い妹になんて事してるの⁉︎今直ぐに謝りなさいっ!あぁ……可哀想なミラベル。嫁入り前だと言うのに、こんな酷い事をするなんて。痕でも残ったらどうするの⁉︎……でもまあ、起こってしまった事はどうにもなりませんから、仕方ありません」
ヴィレームは、母親の潔い良い物言いに眉を上げた。意外だった。だが……。
「こうなれば、ヴィレームさん。貴方に責任をとってミラベルと結婚して頂きます」
また、下らない事を言い出した。