何事も行動を起こさねば変わらない。
という事で見つからなさそうな山の方を歩きつつこの本丸?とやらを探索してみることにした。
あちらこちらに血痕…だろうか何かが飛び散ったような跡がある。
かなり匂いも独特だ。これが死臭なのだろうか
(足がすくむ…)
ここを平気で歩ける人なんてほとんど居ないだろうと言えるくらい酷い有様だ。常人ならパニックを起こすだろう
少し歩いたところで、池?を発見した。魚は見当たらないが割と綺麗な水に見える。
(水がなくなったらここで補給させてもらおう)
そう思いながら次の場所へ行こうとしたその時だった
「そこで何してる」
「ひっ」
隠す気のない殺意とドスの効いた声に思わず腰が抜けてしまった
じわじわと距離を詰められていく。後ろはほぼ壁、横に行こうにもすぐ追いつかれてしまうだろう
「お前、侵入者か」
「いや、ちがくて…無理やり連れてこられたっていうかなんというか」
綺麗な黒髪に薄紫の瞳の少年…この世のものとは思えない儚さだ
ドンッ
「!?」
音のした方へ顔を向けると鋭い刃がギラギラと光っている。
こんなに恐ろしい壁ドンがあっていいわけない。
「本当に怪しいものではないんです、信じてください」
「なら証明してみろ」
冷静そうに見えて全く冷静じゃないタイプなのだろうか、話が通じる予感がしない。
「証明って…」
証拠…それなら
「このタブレット!見ていただけませんか…」
「たぶれっと?」
「はい…」
鋭い視線を浴びながらも必死にタブレットに届いたメールや事情を説明していく
「私も来たくて来た訳ではないんです。」
「なるほどな」
理解してくれたのか…意外と良い人なのだろうか
「事情は理解した。だが、だからといってここに居座る事は許さん。すぐにここから出ていってくれ」
見逃してやるとでも言うように刀を鞘に収め一歩下がった。
「出ていきたいのは山々なのですが出口も何も見当たらずで」
「……」
気が付けば辺りは更に暗くなっていた。もう夜が来ていたのだろう。山に隠れようにも何がいるか分からない
「こっちへ来い、馬小屋なら隠れるくらいはできるだろう」
警戒はされているのだろうが先程あった殺意はもうほとんど出ていなかった。許された…というよりは疲労で怒る力もないように思える。
「なんてこった」
飼育など到底できそうにない荒れ具合。ここで寝るのか
「寝れる場所があるだけマシだろ。文句言うな」
「はい…」
渋々その荒れた馬小屋に荷物を置いて一晩過ごす事にした
「死にたくなけりゃ外には出るなよ。嬢ちゃん」
「気を付けます」