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ガチャリと、音が聞こえた。
「⋯ないちゃん。」
「…。」
フラフラとただいまも言わずに帰ってきた僕の彼氏。
一瞬でわかった。
極度に、疲れている。
突然下を向いたまま固まってしまったので、
充電が切れたのか、と思い声をかけた。
「⋯も〜、いったんパジャマに着替えて…。」
できるだけ優しい声で、ないちゃんができるだけ癒やされるように、
なんて考えを巡らせながら話していると、
視線を感じた。
僕が顔を上げると、くすんだピンク色の瞳かこちらを見る。
「…?どうかした…」
そういった瞬間。
「ん、」
息が一瞬できなかった。
唇を、塞がれてしまったから。
蝕むような、激しいキスではない。
ただ、長く、長く。
考えることも、ままならないくらいに。
一瞬唇を離して息を吸ったないちゃんが一言。
「…い、む。」
かすれた声が弱々しく聞こえた。
名前は呼ばれてなんかいないようで。
ただ、確認するかのように。
どうした、なんで、なんて言えなかった。
僕の肩を優しく、でも逃さないという風に掴むないちゃんの手が、震々と震えていたから。
「………。」
やけに澄んだ藍色の空が、ないちゃん越しに広がっている。
空調の音が聞こえて。
ネオンライトが、ガラスの向こう側で夜の都会に溶けていくのを見ていた。