「そうなんだ…。実は指輪を抜き取った日の夜なんだけど、気になって中々寝付けなかったんだ。それで夜中に水を飲みにキッチンに行くと、椅子に座った葵の姿があった。話しかけようとしたけど葵の様子がおかしかったし、よく見ると手には指輪のケースがあったから、隠れて見守っていたんだ」
「・・・・・」
「ごめん…。そしてその直後、もの凄い耳鳴りと頭痛に襲われたんだ。僕は立っていられなくなってその場に膝をついて頭を抱え込んでいた。しばらくして耳鳴りと頭痛がなくなったので顔を上げると、先程まで葵の手の中にあった指輪のケースが消えてなくなっていたんだ。未来に送ったんだと直ぐにわかったよ。でも、指輪のケースの中身は空…」
「そうだったんだ。私は何も知らなかったんだね」
「それより指にはめている指輪をよく見てごらんよ」
「えっ!?」
葵は指輪を手から外すと、いろんな角度から見回していた。
「瑛太…」
「気付いた?」
「うん…」
あの頃“E to A”(瑛太から葵へ)と指輪に刻まれていた文字は、
“愛する妻へ”と変わっているはずだ。
「ずっと隠し続けてきたんだけど、葵の指輪はここにあるんだ。葵が疲れ切って眠っている間に、葵の指にしてある指輪と改めて用意し直した指輪を差し替えたんだ」
「どうしてそんな事を?」
「この指輪は本当に大切な記念の指輪なんだ。僕と葵のように2つで1つなんだ。だから…僕の手元に残しておきたかった。今は僕の指輪と一緒に保管してある」
もしすり替えておかなければ、葵とともに消えてしまっていたから。
すると葵を映していた映像が、突然“ガタガタ”という音と共に映像が乱れ、次には天井が映し出されていた。
そして…葵の泣いている声だけが聞こえてきた。
…数年後
遥香は小学校に入学した。
遥香は親の僕が言うのもなんだが、本当に可愛らしく明るく元気で優しい子だった。
だから、何もしなくても遥香の回りには多くの友達が集まってきたし、男女隔てなく友達が沢山いた。
クラスで1人ぼっちの子がいれば、呼んで来ては一緒に遊んだ。
そして何より、遥香が小学生になって1番心配していたのは、遥香の持っている能力の事だった。
僕は遥香に“学校で能力を使っては絶対にダメ”と言い続けてきた。
未だに僕は、遥香がどんな能力を持っているのか把握しきれていなかったのに、遥香の能力を禁じた。
何故なら能力の使い方、コントロールの仕方も知らない半人前以下の遥香が、能力を使って回りの人を危険にさらしてしまう恐れがあったからだ。
それに、その力をクラスの友達に見られでもしたらイジメにあったりするかもしれない。
だから僕は厳しく能力の使用を禁じた。
でも、いつまでもこのままという訳にはいかないだろう。
誰か遥香に能力の使い方を教えてくれる先生のような存在が必要だった。
先生か…‥
あっ…‥
そういえば…‥
【は~ちゃんには、素晴らしい能力者の先生が、能力の使い方を教えてくれるし、全力で守ってくれる。正しい道に導いてくれるから大丈夫だよ】
葵が言った言葉を思い出した。
葵によると、遥香は能力の使い方を教えてくれる先生に出会うという事らしい。
でも、そんな先生何処にいるんだ?
そんな時だった…。
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