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第4話:「記憶の扉」
《202X年、深夜2時》
田中蒼は、自宅のベッドに横たわっていた。眠れなかった。
胸の奥に、冷たい違和感がこびりついていた。
山本蓮の言葉が耳の奥で何度も繰り返される。
「君は“ある選択”をしたんだ。
でもそれを、君の脳は“なかったこと”にしている」
(……俺は、なにかを――消した?)
すると、スマホが震えた。
──📩【狐火】より:
蒼さん、準備は整いましたか?
“記憶リトリーバル”開始のため、以下の手順に従ってください。
表示されたリンクを開くと、そこには“記憶誘導再生プログラム”と名付けられた仮想空間アプリがあった。
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《仮想記憶空間》
蒼は、記憶再現プログラムの中で、3年前のあの日に戻っていた。
雨が降っている。場所はあのビルの屋上。
翔が、最後に姿を消した場所――。
しかし、すぐに蒼は“違和感”に気づく。
(……この場面は見覚えがある。でも、こんな人、いたか?)
そこにもう一人いた。
翔の横で、誰かと話している――小林悠斗だった。
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【記憶再生:3年前の夜】
翔:「……お前、本当にやるのか?」
悠斗:「ああ。蒼には知らせない。あいつには関係ない」
翔:「お前が“やった”とき、俺は……」
悠斗:「お前は、“事故”にするしかない。悪いな」
翔:「……はは、やっぱりそうか。
俺が“道化”でい続けてやったのに。
あいつの親友面して、裏でこれかよ……」
蒼の心臓が、止まりそうになった。
翔:「なあ蒼、お前、こんなやつのこと、今でも信じてんのか?」
記憶の中で翔が振り返る。
その瞬間――蒼の頭に、鋭い痛みが走った。
「やめろ、やめろ、やめろ……っ!!」
目の前が真っ白になる。
――目覚めたとき、蒼は汗まみれだった。
現実に戻っていた。
「悠斗……お前だったのか」
蒼の声は、どこか擦れていた。
思い出した。
あの夜、蒼は翔から“録音データ”を渡された。
悠斗が“仕組んでいた”ことを告発する内容。
しかし蒼は、その録音を――破棄したのだ。
(悠斗だけは、信じたかった。
それが“翔を見殺しにした”理由だった)
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翌日。
蒼は“狐火”に会いに行く。
狐面の男はうなずいた。
「あなたの“鍵”は、開かれましたね」
蒼:「もう逃げない。……俺が、次のスピーカーだ」
狐火:「よろしい。“The End Talk”、最後の告白へようこそ」