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ユリスバ

エイプリルフールネタ学パロ

3500文字以上







今は時計の短針が床と垂直になった時間帯で殆どの生徒が下校をした、もしくはする時間だ。

そんな夕焼けが照らされた学校の中は静かさの中にチャイムの音が校舎中に響き渡る。

机もチョークも掃除箱も物音すら立たず、ただ時間が過ぎていくのみ。

そんな静寂に包まれた校舎の中、生徒会室は話し声と筆記音が微かに聞こえた。

生徒会室に誰かいると言うことは、一般生徒もしくは確認の為にくる先生。

そこをいざ覗いて見ると生徒会長のスバルと会計のユリウスが何か難しい顔で話し合っていた。

どうやら近々開催される文化祭の予算についてらしい。


「あ”〜!もう下校時間だし明日にしよーぜ。ラインハルトも明日は残れるらしいからよ、人がいた方が違う意見も聞けて良いんじゃね? 」

「確かに、君の言う通り今日はここまでにしとくのも有りだね。そろそろ帰るとしようか。 」

今日は諦めたのか、学校鞄に文化祭についての紙や筆記用具を詰めて肩にかけた。

静かな廊下に二人の足音がカツカツと鳴り、下駄箱まで少し喋りながら向かっていた。


「ユリウス明日も残れる?」


「ああ、大丈夫だよ。 」

「じゃー明日は緊急会議だ!フェリスも呼んでみて今日のやつについて聞いてみるっきゃない!」


「ふふ、そうだね。

そうだスバル。」


「ん?」


「もうすぐテストだけれど、勉強は進んでいるだろうか。」


「ヴッッ!!」


嫌なところを突かれたのか、スバルはあからさまな反応をしては顔を逸らす。

態度的にしていないのだろう、見てわかるほどに彼は汗を出していた。

ユリウスはそれを見ては頭を悩ませ溜息を一つ吐き、革靴を出す。


「そろそろしとかないと駄目だよ。君、前回のテストの点数を覚えていないのかい?」


「あー!!一々言わなくて良いですよー!!俺はちょー天才だから一週間前でも大丈夫だっつーの!」


「失礼だが、君は言うほど天才という名のものではないよ。

…スバル、この後暇かな?」


「…暇だけどなんだよ、説教は聞かねーぞ。」


「説教は後で。君が良かったらだけど私の家で勉強会をするのはどうだい?」


「説教はすんのかよ!…まー、勉強会は別に良いけど、俺今日は全部置き勉してきちまったよ。」


「君って奴は…安心したまえ、全て私が持っているから貸してあげるよ。」


「お前、毎日全部持って帰ってるわけ…?」


少々引いたような顔をしながら二人はユリウスの家に向かった。

向かってる途中でスバルは親に勉強会をする事を連絡しては返事を待つ。


暫く生徒会の事や文化祭、ちょっとしたいつもの言い合いをしているとユリウスの家の前まで着いた。

そこはあまりにもスバルの家とは比べられないほどの大きさで、所謂「豪邸」という名前に相応しい場所だった。

そんな家を見たスバルは唖然としていて、口をポカンとなっていた。


「開いた口が塞がっていないぞスバル。そう緊張しないでくれ、ただの勉強会なのだから。」


「流石にこんな豪邸目の前にしたら勉強会どころじゃねーっつーの!」


スバルのそんな表情を見てはクスッと一つ笑い、いざ敷地内に。

庭は綺麗に手入れされており、スバルにとって立派な盆栽は毎日見れるものではないし、ましてや家に池なんて夢のようなものだ。

両手で鞄の持ち手を持っては周りをキョロキョロとしていたら、ユリウスは玄関を開けた。

埃なんてここには存在しないのではないかという程の綺麗な内装で、思わずスバルは小さな声で「お邪魔しまーす……」と引き攣った笑みで言った。


「私の部屋に案内するよ、ついてきてくれたまえ。」


「お、おー…」


スバルはユリウスの後ろにただついていった。

人の気配はなく、親は不在なのだなと予想したのでスバルは勝手に安堵した。

扉の前で止まるとユリウスは扉を開け紳士にスバルを部屋に招き入れた。

部屋の中はこれまでの立派なものを見てきたものだから予想通りユリウスらしくきちっとしていて無駄のない部屋だった。

布団も綺麗に整えられていて、机の上も傷一つない新品のような綺麗さでスバルは少し溜息をついた。


「お前マジの坊ちゃんだったんだな…予想はしてたけど目の前にすると疲れるわ」


「君はまだ勉強をしていないのにどうして疲れるんだい?」


「心の緊張的にだよ!!」


ユリウスとスバルはそんな会話をしながら鞄を置いて、机の前に座った。

他人の家だからかスバルはソワソワしており、やはり落ち着きがない。

そんな様子を見たユリウスは「そんな緊張されると勉強出来ないよ?」と少し困った顔で述べる。

鞄から教科書と筆記用具、ノートを取り出し机の上に置いては今回のテスト範囲を確認し、範囲であるページを開く。

スバルにとって現代国語の文はあまりにも理解できなく、自分のことを一瞬日本人なのかどうか疑ってる日があった。

文字の量と難解な単語、漢字がズラッと容赦なく並んでおり、まだシャーペンを持っていないはずなのにスバルの頭は嫌と拒んでいる。


「マジで無理、終わったわ今回。筆者の気持ちとかエスパーじゃねぇんだから俺らがわかるわけねぇっつーの!!」


「ごもっともだが…教科書に論破してもテストは回避できないよ。ほら、私のノートを見せるからシャーペンを待ってくれたまえ。」



それからユリウス先生の勉強会は始まった。

時々スバルの唸り声やユリウスの溜息が聞こえる部屋はいつもよりも賑やかである。








「おや、もうこんな時間か。そろそろ帰ろうとしよう。スバル、家の前まで送るよ。」


「おわっだー!!!!不服だけどさんきゅユリウス…」


机の上で腕を伸ばしては漸くしっかりとしたリラックスをした。

ノートにはシャーペンの黒文字と赤ペンの重要な部分の文字が書かれており、スバルはしっかりと勉強できたのだ。

帰る準備をしては「お邪魔しました」と一つ挨拶をして家を出ると、 空は既に暗く、街灯が足元の助けだった。


「いやー俺国語だけ莫大に理解出来た気がするわ!」


「そうだね、思っていたよりも君は理解力は少なくとも集中力は高くて驚いたよ。」


「褒められてんのか馬鹿にしてんのかわかんねーな…。」


「褒めてるつもりだよ。」


ユリウスはクスッと笑っては眼鏡を外し、眼鏡拭きでレンズを綺麗にしていた。

そんな横顔を見たスバルはポツリと一つユリウスに問いかけた。


「…お前彼女とかつくんねーの?」


スバルはユリウスの彼女について聞いたのだ。

そんな質問に対してユリウスは少し止まり、スバルの方に顔を向ける。

その顔は目を少し開いて、まるでバレたくないような、勘付かれたような顔をしていた。


「…急だね、それはどうしてそう思ったんだい? 」


「いや、お前顔は良いし、性格も紳士で悪くはないと思うし…あと頭も良いから彼女とかいねーのかなって。もしくは好きな人とかいんじゃねーのかなってふと思っただけ。 」


さりげなくスバルは彼を褒めながら疑問の意味を答えた。

そんな問いかけにユリウスはやはり声が詰まり、中々声が出せない。

それは何故か。


(好きな人がスバルだと言ったら君はどう思うのだろうか…。)


そう、彼は好きな人がおり、その対象が今目の前にいる本人、スバルが好きだからだ。

彼は以前からスバルに恋愛的な意味合いの好意をもっていたが、やはり男同士なもので彼の気持ちの表明にはやや詰まってしまうものがあった。

それが思っていたよりも詰まりに詰まり、やがて二年の月日が経ってしまい結果今ここにいる。

そして、好きな人に好意を持つ女性がいるかどうか聞かれたのだ。

それはあまりにもユリウスにとって焦りと嫌な気持ちでいっぱいになる行動で思わず目を逸らしてしまう。


「え、なんだよ、やっぱいる感じ?」


「………そうだな、私には想い人がいるよ。」


いつもよりも声が出ず、苦しそうな声でユリウスは言った。

そんな言葉と表情を見たスバルは元気な声ではなく、ただ沈黙していたのだ。

そんな気まずい空気になってしまったら午後8時の中、ユリウスは勇気を出し震えた声を出す。


「…私の想い人が君にはわかるかい?」


「……悪いけど俺にはわかんねぇ。」


正直、ユリウスはホッとしてしまった。

気づいて欲しかったのかもしれないが、やはり怖いものはあるもので心の裏では気づいてほしくないという心が大きく広がっていたのだろう。


「そうか……ほら、君の家だよ。

また明日、生徒会で話し合おう。」


「お、おう…!

またなユリウス!」


そう言って彼はユリウスに手を振り、家の中に入っていった。

そんな後ろ姿を見ていた彼は数分、彼の家の前に止まっていた。

心臓の鼓動が鳴り止まず、指先は僅かに震えている。


「私は想いを伝えるべきだろうか…。」


星空の下、ユリウスはポツリとそう呟いた。










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