テラーノベル
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県道734号線を北上、ロープウェイ早雲山駅に同じ色をしたN VANとハンターカブが止まった。雨は止んでいた。少し霧がかった箱根の山の麓の冷たさに、私は思わずパーカーを羽織る。
「寒いねぇ。」
『そうだねぇ、、、飲みたくなるね。』
「お酒とか。」
ゆっくりと歩幅を合わせる。シューズのインソールの反発が足を軽くさせる一方、それを抑えるような足取りで駅に入る。
少々値が張るが、乗ってみた欲には変えられない。
「この支柱でガタンってなるの苦手。」
『分かる。』
霧でかすみ、絶景とは決していえなかった。
「凄いねこれ、、、」
大涌谷。白と薄茶の大地が足元に顔を見せた。蒸気が辺りから噴き出していた。霧との判別がつきずらいが、凄いものが見える。それは紛れもなく確かに感じ取れた。
そのまま桃原台まで乗り、バスに乗り換える。
「すごかったね。」
『わぁ、って感じだった。』
「アホ。」
バスの座席でともにポケットに手を突っ込む。
県道75号線を北上する。
仙台高原駅。雪が降車ボタンを押した。
まばらな観光客。外国人も多数、インバウンドを少し感じる人足。
大箱根通りを東に少し、会話はなく、それでも確かな高揚感。
常磐商店。ここでなにに巡り会えるだろうか。
「いっぱいあるね、ビールとか。」
私は冷蔵ショーケースを舐めるように眺める。
『ビールもいいけど、折角なら、、、』
雪は扉を開け、ひとつ瓶を取り出す。
『日本酒じゃない?』
酒名、箱根街道。
同じ道順を辿る。あの白い大地で写真をひとつ。再び辿る。
「いい買い物したね。」
『今夜はほどほどにね。』
湿度のある声色だった。私も同じであったかも知れない。
温泉が溶かす、体を。
『最高だこりゃ』
「あ゛ぁぁ、生きてる。」
油断すれば寝てしまいそうな程であった。バイカーにとっても、ドライバーにとっても、運転によって蓄えられた疲労が抜けるこの瞬間は、同じくかえられないものであった。
初日の夜は、安いビジネスホテルに泊まった。寝れて、休めれば、それでよかった。
お昼に道の駅で買った弁当を中心に、少なめの盃を交わした。
コメント
1件
第4話、読み終えました。箱根の霧と蒸気のなか、二人の足並みがゆっくりと揃っていく感じがとても好きです。大涌谷の「凄いねこれ」と『わぁ、って感じだった』の温度差に思わず笑みがこぼれました。温泉で「生きてる」と声が漏れる瞬間、旅の疲れがとける感覚が本当に伝わってきます。同じ道を辿り直すリフレインも、心に残る演出でした。次の夜がどうなるのか、気になります。
衛生つーしん
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榎葉
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