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あなたとの通学路 夏の西日が足元のアスファルトを赤く照らしている。
そこに長く伸びる二つの影。
隣にいるのは、いつも私のことを笑わせてくれる男友達で、名前は龍斗。
部活帰りの道を、私は小6の頃からの幼馴染と並んで歩いている。
至っていつも通りの光景だ。
それなのに。
私は龍斗といると複雑な気持ちになる。
「ねえ、龍斗」
私は呼びかけた。歩きながら。そっと、丁寧に。
「どうした?」
龍斗がこちらを見る。不思議そうに。
センター分けの前髪が、夕風にそよと揺れた。
こういうところは、あんまり野球部らしくない。
「…なんもない」
私がつぶやくと、龍斗は丸い目のままちょっと首を傾げた。
高校に入って程なく、背丈は私を追い越していったのに、この表情は相変わらずだなぁと思う。
あんまり見つめてくるものだから、笑いながら言った。
「ただ名前、呼びたかっただけ」
ごまかしたくて。
すかさず龍斗は、口をとがらせた。
「何もないんだったら呼ぶなよ。えーー極めてですね、腹が立ちます。」
そんなふうに、いつもの軽い調子で。
「ごめんごめん」
私は思わずクスッと笑う。
「なに笑ってんだよ」
龍斗も笑う。
大きな口を開けてハハハと明るく。
そんなふうに笑う龍斗が誰よりも愛おしくて大好きだ。
もっとあなたのそばにいたい。 by こうれさ