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放課後のチャイムが鳴る。
一日が終わった教室は、
昼間より少しだけゆるい空気に包まれていた。
椅子を引く音。
友達同士の雑談。
部活に行く生徒が慌ただしく教室を出ていく。
窓際の席で、朝霧凪はゆっくりと
鞄に教科書をしまっていた。
その時、
教室の前のドアが開く。
「失礼しまーす」
柔らかい声。
一瞬で、教室の空気が変わった。
「え、雪村先輩じゃない!?」
「ほんとだ!」
「え、なんで2年の教室に?」
ざわざわと女子の声が広がる。
ドア付近に立っていたのは、
雪村律だった。
肩に鞄をかけ、
いつもの穏やかな笑みを浮かべている。
女子たちはひそひそと話しながら、
ちらちらと律を見ていた。
「やっぱりかっこいいよね」
「成績も運動神経もいいとか最高すぎるよね」
「てか誰に用?」
「後輩?えーもしかして彼女とかー??」
「羨ましすぎるんだけどー」
そんな声が聞こえる中、
律は教室を軽く見渡して --
窓際の席で鞄を閉じている凪を見つけた。
目が合う。
律は小さく手を振った。
「凪、迎えに来たよ」
それだけの、いつもの言葉。
凪は少しだけ瞬きをしてから、
静かに立ち上がる。
「うん」
短く答える。
それを見た女子たちが、
さらにざわついた。
「え、朝霧くん?」
「知り合いなの?」
「まじ?意外」
「ていうか名前呼び…?」
「迎えに来たとか王子様じゃん」
「いいなー」
凪は特に気にする様子もなく、
律のところまで歩いていく。
「行こ」
「そうだね」
律は少し笑った。
そのとき。
後ろの席から声が飛ぶ。
「空気上がりすぎだろ」
皆が後ろを向く。
その正体は、黒瀬颯だった。
椅子に座ったまま、
こちらを見ている。
「帰んの?」
凪は頷く。
「んじゃオレも」
それを見ていた女子たちは、
完全に小声の盛り上がり状態だった。
「え、なにあれ!?」
「雪村先輩と朝霧くん仲良くない?」
「幼なじみとか?」
「ていうか黒瀬くんも普通に話してるし…」
そんな声を背に、
三人は教室を出る。
廊下に出ると、
少しだけ静かになった。
「ダルすぎだろ」
呆れたように颯は声を零す。
律がふっと笑う。
「人気者だね、凪」
「違うでしょ」
「俺?」
「うん」
凪がそう言うと、
律は困ったように笑った。
「迎えに来るのやめようか?」
「別にいい」
そんな二人の様子を颯は見守る。
(いや、どっちもどっちだろ)
そして三人は並んで歩き出す。
夕日の廊下に、
足音が静かに響いていた。