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物語を文にするという行為が初めです。語彙力や表現力がまだ覚束無い所がありますが、大目に見て下さい。
⚠️腐向けです⚠️
性行為表現はありませんが、接触表現はあります
本人様たちとは一切無関係です。
死の表現があります。
本編 アイスバースになっております。
ハッピーエンドはございません。苦手な方はここで逃げてください。
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絶対的ヒーロー。それは皆んなを守るヒーローで強くてかっこいい戦士。
そんなヒーロー佐伯イッテツは、世間から疎まれていた。
とある任務で敵にかけられた呪い、基21歳から抜け出せなくなった佐伯イッテツ。
今までそれを隠してきた佐伯だったが、とある交戦をテレビ中継していた時だった。生中継されている事に気づかなかった佐伯はいつもの様に1人、敵を相手していた。
だが攻撃を避けきれず敵の刃物が佐伯イッテツの心臓を貫く。
そして呆気なく死んだ、そんな姿を中継越しで見ていた市民たちは絶句した‥。
が、それも束の間。
一度死んで蘇生するところが映ってしまった。
── その日から世間から向けられる目は変わった。
理由は簡単なものだった── 。
「無限を生きる人間が恐ろしい」 「気持ち悪い」
「いつ世界を滅ぼす悪になったら怖い。」
「呪いのかかったヒーローなんてヴィランじゃないか。」
そんな目を向けられるようになってから、
佐伯はヒーロー活動を‥市民を助ける事を心の奥底で抵抗した。
けどヒーローを続けざるを得なかった。ヒーローを辞めてしまえばきっと自分の価値がほんとになくなってしまうから。
そして人々に叩かれる日々を涙と一緒に呑み込んで
見ないフリをした。
「もう出会いの季節か。時間が経つのは早いな。」
そう呟きながら暖かい日差しが、スポットライトのように指す桜が言葉通りに舞いながら散る姿を眺め、手に持った煙草の灰を落とすように振るう。
ぼーっと家の窓から眺める桜は美しく、でもどこか儚げに見え佐伯はそっと目を閉じて考える。
〈 逃げたいな。 〉
“ピンポーン
と玄関の方から音が鳴る。
なんだよ、もう。人が心を沈めてたのによぉっと思いながらも、暗い気持ちを吹き飛ばしてくれたチャイム音に少々感謝しながらも。手に持った煙草の火を消せば重い腰を起こして玄関まで向かい「はいはーい」と扉を開ける。
「よーテツ。」
扉を開けた先には、見慣れた男が立っていた。
「リト君!? 」
見慣れた男というのは、イッテツの所属しているヒーローグループ”Oriens”の1人宇佐美リトだった。
突如として目の前に飛び込んだ宇佐美は、扉を開けるなり驚いている佐伯をみて口角を上げながらあの独特な笑い声を上げ、「驚きすぎだろ」と述べる。
「元はと言えばリト君のせいだろう!
………で、そんな君は何しに来たんだよ。」
笑いをあげる宇佐美を見ては、眉を寄せ不貞腐れたかのように声を上げれば、はぁ っと小さくため息をついた後にアポ無しで来た彼に向かって要件はなんだと首を小さく傾げて問うと。
先程までの愉快に笑っていた彼の顔がゆっくりと真面目な顔になりこう述べた ── 。
「 一緒に逃げようぜ テツ。 」
前に見えるオレンジ色の髪が揺れるのを、静かに見詰めている僕は‥今、リト君に手を引かれて街を駆けている。
手には、財布とスマホだけ。デバイスは置いてきた。
─いや、置いてきたと言うより捨ててきたが正しいのかな。
デバイスを手放すのは、不思議と躊躇いを感じなかった。
だって今の僕には僕だけのヒーローが着いているから。
僕の手を引いて宛もなく走るリト君が、ちらっとこちらに顔を少し向けて
「テツの行きたいところいこーぜ」
と無邪気な笑みを浮かべながら言ってくるもんだから、僕は‥
「君と2人きりになれる所がいい。」
と少し大きめな声で答えてみた。
すると君は、嬉しそうに顔を緩ませて「任せろ」と再び前を向いて先程と同じようにオレンジ色の髪が揺れるのを見詰める。
‥さっきと違うところがあると言えば、リト君の耳がほんのり赤いところかな。
それから僕たちは人気のない海にやってきた。
リト君は随分とロマンチストなんだな なんて思いながら、潮風を浴びる。
引っ張られていた手をお互い強く握り、手放さないように指を絡める。
沈黙が続く中、僕は夕日を見ながら口を開く。
「リト君‥どうして君は僕と逃げ出したの?」
夕日から、太陽の様な男に目線を移せばそう聞いてみた。
そんな僕の言葉を聞いたリト君は、小さく微笑みながら僕に言った。
「テツと一緒に居たかったから。」
あのままじゃお前、すっと消えそうだったから。お前と一緒に逃げた。
そう続けて話をするリト君。そんな君を見ていたら徐々に目尻が熱くなってくるのがわかる。
あ、やばい‥このままじゃ僕‥
と喉を締めて下唇を強く噛む。今まで抑え込んで呑み込んできたはずの溢れ出そうな思いを身を震わせながら堪える。
しかし、その抑え込む力を解くような暖かさが僕の身体を包み込む。
「リト‥君‥?」
か細く震えた声で君の名前を呼ぶ。
リト君はそれら全部を受け止めるように僕を抱き締めた。
「お前は頑張った。だからもう全部吐き出せ。」
その言葉を聞いた瞬間、僕は今まで押し込めていた感情が涙と共に溢れ出す。
ボロボロと大粒の涙を流しながら君の胸に顔を埋める。
苦しかった、辛かった、誰も僕をヒーローとしてみてくれなかった。
そんな想いを口から溢れるように吐き出す。
君は優しく背中を一定のリズムで叩きながら何も言わず僕の弱音を聞いてくれる。
「僕は命を懸けて皆んなを守っていたのに‥なのにっ‥
怪物扱いなんだ‥! ! 」
僕なんて僕なんて と自分を卑下する言葉を吐こうとしたその瞬間、僕の冷えて固くなった唇は柔らかく生暖かい何かに閉じられる。
「‥お前はかっこいい最高のヒーローだ。」
口を閉じてきたその唇で僕にそういう君は、僕よりもずっと苦しそうな顔をしていた。
なんで君がそんな苦しい顔をしているんだよ‥なんでキスしたんだよ‥とか色々言いたいことはあるけど、
僕はその言葉を受けて、「ありがとうリト君」と君の頬を撫でながら言葉を紡いだ。
それからは、海の良く見える浜辺の上にあるアスファルトに2人並んで座りながら思い出話を沢山した。
今まであったこと、楽しかったこと、マナ君ウェン君の事。
そしてこれからしたい事。
夕日が沈む程僕たちは語り尽くした。
夕日が水平線を照らしたのを背景にリト君が立ち上がり、アスファルトから降りて砂浜に足を踏み入れた。
手を僕に差し伸べながらこう言った
「せっかくの海だし入ろーぜ」
そう誘われては、僕は今までの暗い気持ちが嘘かのように満面の笑みを浮かべて頷いた。
“ザパーン
波の音を聴きながら、海水に足首を浸からせて、「冷た!」
なんて言いながらしばらく騒いで遊んでいると、
ふと先程まで一緒に海ではしゃいでいたリト君が、僕の名前を呼ぶ。
「テツ」
そう呼ばれて、「何ー?どうしたのリト君!」と少しだけ距離のある所から応答すると、
「 ‥ 好きだテツ。」
優しい声が波の音と共に聞こえる。
好きだと述べる彼の表情はとても友愛に向けてへの言葉じゃなかった。
愛おしい人へ向ける。‥そう僕が君へ向けている表情だ。
僕の心臓はドクンっと脈を大きく打ち、顔に熱が集まる‥
なんだ‥なんだよ、両思いじゃないか。そう思うと嬉しさのあまり、君の言葉に強く頷いて
「僕も、僕も好きだよ。リト君!」
その瞬間──
“ドロ‥‥
っと僕の頬が溶ける感覚がした───。
「テツ‥?」
俺の相棒は、猫みたいなやつだった。
弱みを見せようとしないし、気分屋で、でも甘え上手で。
最高のバディでヒーローだった。
俺はそんな奴が、愛おしくて好きだった。
だから 、許せなかった。
テツの笑顔を奪った市民を、この世界を死ぬほど恨んだ。
だから俺は、テツと一緒に全てを投げ出して逃げる事を決意した。
マナもウェンにも悪い事をしたのは分かっている。
だが、俺にはテツただ1人だけ。
テツだけは‥手放したくなかった。
── 「僕も、僕も好きだよ。リト君!」
そうテツの言葉に俺は胸を躍らせて顔を大きくあげた。
そこには‥何故か、頬を溶かして立っているソイツがいた。
俺はそれが理解できなくて衝動的に、身体が動きテツを強く抱き締めた。
その抱き締めた身体は、先程抱き締めていた身体とは打って変わって違いアイスのように冷えていた。
ドロドロと溶けるテツは、冷や汗を垂らして真っ青になっているであろう俺の背中に手を回してこう言った。
「っ‥はは‥ほんと僕ってば‥最後まで締まらないね。」
ごめんねリト君、ごめんっと優しくでも掠れた声で述べた。
違う。お前は何も悪くない。俺が‥俺がこいつを溶かした‥。
「なんでだよ!!!ふざけんなよ!!溶けんなっ‥!!溶けんな!!!」
─── 。
そんな君の声を無視して、ドロドロと溶ける僕の身体。
溶けないように必死に強く抱き締めてくれる君。
「溶けるな!!!!テツ!!!!」
君の太陽の様な瞳から溢れ出す雫を、冷えた指先で受け止める。
「泣かないでよ‥リト君。」
そして震える君の口を奪う様に口付ける。
ああ‥リト君ってこんな暖かかったけ。
「好きだよリト君‥愛してる。」
この世界で誰より愛してる。僕を受け入れてくれたリト君。
傍で支えてくれたリト君。
僕をすきだと言ってくれたリト君─── 。
「っっ……テツ。テツ…。俺も…、
愛してる」
おかしいな、僕今から消えるはずなのに凄く幸せだ。
俺の中でドロドロと形を崩すように、太陽に当てられたアイスのように溶けるテツを抱き締める。
さっきまでたわえも無い話をしていたお前が、ゆっくりと海に解けていく。
お前に負けずと顔を涙でいっぱいにした俺に、
口付けをしたテツが愛していると 呟いたその瞬間。
テツは、
幸せそうに微笑んで俺の前から衣服だけを残して消えた 。
“ザプン‥‥
溶けた愛おしい人は海に呑まれていく。それをただひたすら呆然と眺める。
最後のキスは‥
── バニラの味がした。