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お久しぶりです、皆様。ほんまフォロ解減らんね。まぁここで書いた意味ないけどね。今回久しぶりの割に短いです。
サンリオコラボsikさんのアクスタ買います
sikさんの新衣装好き杉田玄白
魁星さん3D、リアタイしたります。
血生臭い裏路地に微弱だが風が吹き抜けた。少しだけ、血の臭さがマシになる。赤い前髪が視界の端をチラついた。目の前で黄色ともクリーム色とも言える色の髪をした少年が俺が正気に返る事を、ただ、ひたすら懇願していた。俺は正気…というかいつも通りだから、彼の言っていることは到底理解が出来なかった。
「お前はっ、みんなのスーパーヒーローやろ?!っなぁ!ライ!!」
その少年が叫ぶ。唾が飛び散って汚いなぁ、なんて思った。というか、この子は俺に対して言っているのだろうか。会ったことない人に同情を求められたってなんとも思わないし、なんと答えれば良いのか…考えた結果、最適解は出て来ない。「そうだね、俺はスーパーヒーローだね。」って言ったら、この少年は満足して帰るかな。
「_で?」
俺がスーパーヒーローだったら、何?なんかしてくれるの?してくれないよね?なんたって、俺はこの少年からしたらヴィランなんだからね。
「ッ…」
煽るような失笑を含めた疑問を飛ばすと、その少年はガックリとうなだれた。ぽたぽた、と少年の影に水が落ちた。まるで泣いているようだ。それを一瞥し、少年に背中を見せた。路地の奥へ奥へ進んで行く、さっそく分かれ道が現れた。
後ろから小さな衣擦れの音とジジジ…と耳障りな電子音が細かに鼓膜を震わせた。振り返ると、陽気そうな声が飛んで来た。
「やっほ、ライじゃん」
赤ともピンクとも言える髪が、振られる腕と共にふわりと揺れた。デバイス、武器、重厚な服。この人もヒーローか。この町のヒーローは変な色した人が多いな。さっきの少年といい、この青年も。
「…アンタ、誰?」
「あー…、そーゆー感じぃ?」
青年がブツブツと「洗脳の可能性」「記憶喪失」と微かに聞こえたイヤホンに向かって言っている事の意味が分からなくて首を傾ける。すると、君には関係ないよ、とヘラヘラした顔で宥められた。宥められたというか、隠されたというか。
「一個、聞くね。君はマナに会った?」
「…誰?」
「えっと、黄色の髪で…真っ白い服着てる子」
黄色の髪と言われてさっきの少年を思い出したが、白い服を着ていたか記憶が曖昧でこれと言った明確な人は出てこない。
「あー…、わかんない。忘れちゃった」
その言葉は青年の地雷を踏んだのか、目を鋭くして俺を睨んだ。
「…なるはやで僕のとこ集合」
何者でもなかった一人の少年が、
皆のヒーローを志し。
困難を乗り越え。
夢を叶え。
闇に飲み込まれ。
再びヒーローになる話。
小さい頃コザカシーに俺の風船を取られて、紐の部分を木の高い所にくくりつけられた。小さい俺にとって、高い木の上はどうすることも出来なくてただ立ち尽くしていた。ただの変哲もない風船だった。風船なんてすぐに割れると分かっていたけど、俺にとっては親が買ってくれた大切な物だった。
その時、パトロール中のヒーローが側を通った。俺が住んでいた所は東に近い西にとって珍しい機械を用いたヒーローで、まずヒーローに会うという機械がなく物珍しさに胸が高鳴ったのを今でも覚えている。そして必ず俺を見つければ「ライ!」と、まるで犬のように駆け寄り元気良く名前を呼んだ。その時俺はおませだったから、高鳴る鼓動を隠しながら子供らしくない態度を取っていた。だがまた会うのを楽しみに、密かにいつもパトロールしてる道を見つけ出し、登下校にはその道を通るようにしていた。
相変わらず俺の名前を呼んでいたが、日に日に弱っていくのが幼心ながら分かりやすかった。頬はやつれ、やせ細っていく身体。だけど俺はなんて言い出したら良いのか分からず、言い出せず、そのまま日が過ぎていった。
だが公園のベンチに座りだべっていたある日、ヒーローは俺の頭を撫でて「ライは、僕の事…すき?」と突然問うた。俺と真反対の彼の紫紺の目は不安げに俺と地面をキョロキョロ、と行き来していて。目に涙が留まっていた。今にも溶け出しそうだ。俺は迷うことなく「好き」と答えた。すると安心したように、俺を抱きしめて震える声で「ありがと」と言った。離れたくないと言いたげに細腕で俺の小さな身体を強く抱いた。肩が濡れていく感触がした。冷たくて熱い。押し殺そうと控えめな嗚咽が聞こえ背中がヒクッヒクッ、と微かに震えていた。暫くすると、ヒーローは真っ赤に泣き腫らした顔で再び俺に「ありがとう」と言った。
「さ、五時のチャイムが鳴るよ。良い子は家に帰る時間だ」
「うん、じゃあね」
ベンチから降りて、ヒーローに手を振る。
「_またいつか!」
ヒーローは俺に手を振った。悩みなど吹き飛んだかのようにいつもの笑顔で清々しかった。暖かい風が吹きさらす。涙が夕陽を虹色に反射させた。キラキラと宝石の粒が散らばっているようで綺麗だった。さっきの泣いていた弱々しい姿など、跡形も無かった。これで安心して帰れる。ヒーローの言う通り、帰路に着いた。明日は何を喋ろうと考えながら、スキップと鼻歌も交えた軽い足取りで。
俺はヒーローに憧れて、ヒーローになるために必死に妖術を学んだ。図書館に行って少しでも強い妖術を使えたり制御が出来るように座学もして、時には怪我をしたり失敗もした。
だが簡単な術やおまじないは使えるようになっていった。ちょっとずつでもヒーローに近付けてる事が嬉しくて、それを糧に励んだ。親にヒーローになりたいと伝えると反対されず、なんなら応援してくれた。多少プレッシャーにもなったが、それも糧に更に努力した。
そして周りを見てみると、妖術や座学でも学年の中で上位になっていた。周りには俺を憧れてくれる友達がいた。遊びに誘ってくれる親友がいた。俺を慕ってくれた人がいた。努力が報われたと、ただただ嬉しかった。毎日が楽しかった。
それで浮かれていたんだろう。高校一年生の頃、歩き慣れたいつもの通学路で帰っていた時近くに妖魔が出た。小さい女の子が妖魔の目の前で立ち尽くして動けずにいる。恐怖のあまり声も出ないのか、周りに大人はいなかった。今は俺しかあの子を救えない。「俺なら出来る」「ヒーローになりたいんだろ?」と自分を鼓舞し、震える足を前へ前へと引きずるように前進させる。物陰に隠れ、妖魔が手を振り上げた瞬間一気に走り出した。女の子を抱え少しでも妖魔から離れる。術を出そうと手を前に掲げた。焦点を絞る。
勝利を核心した。掌に力を込める。あの妖魔は本で読んだ事がある、あれは確か火に弱かった。術を持ち前の滑舌で速く正確に唱える。よし、やれる。掌に留まっている炎を放った。
否、予想した未来は訪れなかった。掌から炎は放たれていないし、妖魔は倒れていない。
Q、何が起きた?
_分からない。
ズルリ
_腕と脚が胴体から切り離された。
グシャリ
_四肢という支えが無くなった身体は今、素直に地面に叩き付けられた。
ビチャリ
_道路に赤い彼岸花の絵が四つ描かれた。この趣味の悪い絵に、観覧客は誰も居ない。
Q、どうすればいい?
_俺、死ぬんだ。
あの女の子を最期に助けれて嬉しかった。浮かれてたせいでこの妖魔が倒せない自分が腹立たしかった。もっと友達と話したかった、もっと歌っていたかったのに、未来を消された事に苛立ちを憶える。ヒーローになれないまま死ぬのが悲しかった。まだやりたい事が沢山あるのに出来なくなって悲しかった。短くともこの人生楽しかった。鈍くも鋭い痛みが混み上がってきて、身体中が熱くて痛かった。感情がぐちゃぐちゃに掻き乱された。だが今となっては、全てが過去形になる。
「_ひぃろぉ…」