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「何言ってんだよ? 俺の話聞いてたか?」

「聞いていました。だけど私には……全てを納得しているようには……思えない」

「そんな事ねぇよ。俺はきちんと考えて答えを出した」

「例えそうだったとしても……私は……伊織さんにHUNTERを続けて欲しいと思っているんです」

「何でそんな事言うんだよ? 抜ければ危険な目に遭う事はねぇんだぜ?」

「そうかもしれません! でも伊織さんがHUNTERを抜けたからって危険の無い世界なんて私は無いと思います。だって人間どんな事で死ぬか分かりません。誰に恨まれているかも分かりません。運命なんて、誰にも分からない……」

「それは…………」

「伊織さんはHUNTERとして沢山の人を手に掛けたかもしれないけど、その数だけ、いえ、それ以上の数の人を救ってもいるんですよ? 法で裁けない悪人を相手にしている訳ですから」

「…………」

「私は、心を犠牲にしてまで人の為に動いているHUNTERの皆さんの事を素晴らしい人だと思います。生半可な覚悟では出来ない事ですもの。私はそんなHUNTERに身を置いている伊織さんだから、好きになったんだと思います」

「何だよ、それ……」

「伊織さんが危険な目に遭うのは嫌ですし、またあの時みたいに怪我をしていつまでも目覚めなかったらと思うと怖い。でも私は……伊織さんが一番やりたいと思う事をして欲しい。あの日一緒に生きて欲しいと言った時の伊織さんはすごく輝いて見えました。私は、そんな伊織さんが好き。だからお願いです、HUNTERを続けてください。辞めるだなんて、言わないで」


円香の言葉は、伊織には予想外過ぎた。


折角覚悟を決めたはずなのに、伊織の決意が揺らいでいく。


「……本当に、後悔しねぇのかよ?」

「はい」

「親御さんに何て話すつもりだ? HUNTERの事は言えねぇんだ、これから先も一生騙す事になるんだぞ?」

「覚悟をしています」

「子供が出来た時どうする? 子供にまで危険が及ぶ事になるかもしれねぇんだぞ?」

「その時は、私が命を懸けて守ります。伊織さんが私を守ってくれるように。私は伊織さんの奥さんになるんですから、ただ守られるだけじゃなくて強くなります。そう決めてるんです」


そして、伊織が思っている以上に、円香の方が余程覚悟を決めていた。


そんな彼女を前にした伊織は自分が楽な方へ逃げようとしていた事に気付き、恥ずかしくなる。


(俺は、間違ってたのかもしれないな)


「ありがとう、円香。俺、決めたよ」


その言葉に円香の表情は明るくなる。


「俺は、これからもHUNTERを続ける。お前には、そんな俺に付いてきて欲しい」

「はい! 勿論です! どこまでもついて行きますから、覚悟してくださいね!」

「ああ、頼りにしてるぜ」


迷った末、伊織は雪城の姓を名乗らずにいく事、そしてこれまで通りHUNTERを続けていく事を決めたのだった。

愛を教えて、キミ色に染めて【完】

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