桃赤
きっと
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この世界は残酷だ。
容姿は不平等で、
親ガチャというものが存在し、
才能がある者は上を行き、
才能がない者は社会の底辺を生きる。
幸せな者は、不幸だと嘘をつき、
本当に不幸な者は、幸せを装って、
子を恵みたいと思った者は流産し、
堕ろせなかった者は毒親となる。
努力ができる者と
努力の土俵にすら立てない者では
天と地ほどの差があり、
成功してきた人間は過程が大事だというが、
その過程を頑張っても結果が出なかった者は
結果が全てだと言う。
裕福な者は、大事なものは愛だと言うが、
貧乏な者は、お金だと言い、
純粋な者は騙され、
ひねくれている者ほど
勝ち上がっていく。
そして、
死にたいと願った者は死ねず、
生きたいと願った者は死ぬ。
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春。
新学期。
1週間後に迫った君の命日。
君が生で見たいって言った、
君がここで死にたいと言った、
海の前に、今、来ている。
海がよく見える、良い町。
地震でも起きたら、
誰かが死んでしまいそうだけど、
そんなこと気にならない。
俺の目の前には、深い青色が広がっている。
まるで、君の瞳みたいな。
『ふぅ…、』
俺の気持ちを落ち着かせるためのため息も、
ちょうどよく吹いた風に流されていく。
社会人2年目に入ったところ。
本当の社会の怖さは、
小さい時からわかっていたはずだったけど、
大人になってからわかる、
社会の優しさだって見えてきた。
あと1ヶ月もしてしまえば21歳になって、
俺の大好きな人が、君が、
俺のことを空から見守るようになった
年齢になる。
本当なら、こんな年齢になるまで
生きる予定はなかったのだが、
どうにも俺の人生は、
どこからか進む道を間違えてしまったらしい。
『…赤?』
『もー、またここ来てるの?』
『えへへっ笑』
俺が綺麗な海を眺めていると、
みるくんを連れた黄くんが後ろに立っていた。
何か待ち合わせをしていたとかそういうわけではなく、本当に偶然で。
黄くん。
俺が人生でいちばん最初に、信じた人。
『桃くんについてっちゃダメだからね』
『わかってる』
『ほんとに赤は目が離せないんだから』
『黄くんからはいつも逃れられないけどね笑』
いつまで経っても桃くんの存在を
忘れられずに苦しめられて、
自らの命を絶とうとする俺を
止めるのが桃くんから
任された黄くんのお仕事。
『カフェ行く?久しぶりに話、聞こうか。』
『じゃあお願いしちゃおうかな…笑』
「じゃあ行こ!」と黄くんは
みるくんのリードを持っている手と
別の方の手で俺の腕をがっしり掴み、
海辺を走り始めた。
まるで小さい頃のように、
にこにこの笑顔で。
カフェに着いた頃には当たり前だが2人とも息が切れていて、額には汗が滲んでいた。
これでも体育会系の部活に入っていた俺たち。
俺は完全なるデスクワークに切り替え、
休日は家でゴロゴロする日々を1年も送っていれば、
体力がなくなるのもうなずける…が、
流石にこれは疲れた。
みるくんにはお店の外で待っててもらい、
2人で涼しいであろう店内に入る。
『あ、黄くん、赤くん!』
『久しぶりー!』
懐かしいガラガラの声が聞こえたと思い、
カウンターの方を見れば、
この店のオーナーとなった青ちゃんがミルクを片手に立っている。
『まさか本当に正社員になってるとは驚きですね…』
『学校の先生になるって張り切って言ってたのはどこの誰さんでちゅかー?((煽』
『うるせえな、お前ら。』
そう言いながらも、
俺たちがいつも頼んでいる
メニューを用意している。
いつの間にかアルバイトから正社員に昇格していた青ちゃん。
ピアスめっちゃ開けてるし、
見た目はいかついけど
中身はしっかりした子なのだ。
『はい、黄くんアイスミルクティーね、』
『ありがとうございまーす』
『はい赤くんアイスカフェラテ』
『やっぱ青ちゃんわかってんね笑』
『毎日来て毎回同じメニュー頼んできたのはどいつだよ💢』
『えへへ笑』
桃くんがいなくなってから、
あまり来ることがなくなったこのカフェ。
思い出したくもないけど、
無くなってほしくない思い出のカフェ。
その場所を今もまだ青ちゃんが守っていてくれていることに感謝しかない。
〈 注文お願いしまーす!
『はーい!』
お客さんに呼ばれた青ちゃんが
この場からいなくなったタイミングで、
黄くんは俺に提案をする。
『赤。』
『犯人、探してみない?笑』
『僕、あの日からこの事件のこと、忘れたことないんだよ?ニコッ』
少し嘲笑うような、
呆れるような、
そんな乾いた笑い。
でも黄くんの目は真剣で、
俺の心をぎゅっと掴む。
今までは俺の心の問題で通ってこなかった道。
正直言って辛い。
けど、
病院に通わなくてよくなった今、
いつでも命を捨てられる決心が着いた今、
やるべきことなのかもしれない。
警察に事故だと判断されたあの事件。
桃くんが必死で追った夢を、
無駄にはしたくない。
『…笑』
『奇遇だね、黄くん。』
『ちょうど俺も、やろうと思ってたところニコッ』
俺も黄くんも笑顔。
その笑顔の裏には、
どこか怒りが含まれている。
さぁ、復讐はここからだ。
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まさかの連載化です…笑
こちらR様からのリクエスト作品となっております。(ありがとうございます✨)
かわいいかわいいアイドル系で行こうと思ったらめっさドロドロになりましたね…
そして低浮上すぎてごめんなさい🙇♀️
テストやらなんやらが重なり、
普通に推し活してたらこんなことに…!
大変申し訳ありませんでした。
今下書きが結構溜まってるので
それも書きつつ連載も進めていけたらなと思います!(これも投稿遅くなるかもしれません…)
リクエスト作品も進めていますので少々お待ちを…
ではまた次の投稿で!
(次はいつになることやら…)
コメント
8件
リクエスト、答えてくれてありがとうございます✨(多分…私?) 続き楽しみにしています🫣
続き楽しみです🥲♡
続きが楽しみすぎます!!!!