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「貞子~ぉ大丈夫かぁ~?」
アイスノンを額にのせ衝立で囲んでいる、授乳室のソファーに横になっている貞子を、ジンがウチワで一生懸命仰いでいる
「なな・・・せん・・まん・・・」
ブツブツ独り言をいい、さらに琴子が持ってきたビックネームの有権者のリストを見ると、貞子は再びひっくり返った
ソファーで貞子の隣で転がされている、百子が母親の顔に這い上がってきて、ほっぺたをもちゅもちゅ食べている、お腹が空いているのだろう、そろそろ授乳の時間だ
じっと貞子が天井を見上げ、何やら決心した顔で言った
「オッケー・・・なかなかドラマティックじゃない・・・」
ガバッと貞子は起き上がり、思わず落ちそうになる百子をジンが上手にキャッチする、ママが面白いのか百子は遊んでもらっていると思ってキャッキャとジンの腕の中で笑う
気を失ってなんかいられないとばかりに、家から持ってきたステンレスのボトルを、取り出しアリスから出産前にもらった、ノンカフェインのお茶をガバガバ飲んで、バンッと机に叩きつけた
「この際ITOMOTO総裁伊藤琴子パワーを、ふんだんに使わせていただくわよ!集会を開きましょう!」
貞子が気を失ってる間に出勤してきた、信夫がデスクトップを睨みながら言う
「言うと思った!今日から一週間後の日曜日、3ブロック区の久保谷スタジアムはどう?あそこなら3000人収容できるよ!」
「3000人?そんなに集まるわけないだろ?」
これまた先ほど事務所に来た直哉が、テレビ画面の後ろの配線をいじりながらひょこっと顔を出す
「集まると思うよ、今やこの選挙は全国レベルの注目の的になっている、あの新聞のおかげで妙な注目を集めているからね」
そういう信夫の傍に二人がやって来た
テレビモニターには1人10万円支給の政策案を、テレビで話す鬼龍院の街宣映像が映っていた、音声は消してあるものの、画面の下に流れる文字を読む
―鬼龍院の斬新な政策案(半年ごとに1人10万円支給)38パーセントの住民が支持―
信夫、直哉、貞子がじっとその画面を睨みながら、彼の表情などの粗を探す
斜めにかかった前髪をファサッと、厭味ったらしく揺らしてる、不自然に真っ白な歯、そしていけしゃぁしゃぁと政策について嘘をつく、どうしてみんなコイツの正体を暴けないのか
三人はテレビ画面を叩き割りたくなるが、テレビには罪はないと考え直す
デスクトップで常に4~5ページほど開いている窓から、信夫のモニターの陣営もこちらを伺いながら、別の枠でチャットコメントが滝のように流れて行っている
信夫がスマートフォンに鼻を突っ込んで、高速でチャットテキストで誰かに打った後、満足そうに言った
「スタジアムをおさえたそうだ」
「よし!面白くなってきたな!」
ジンが百子を揺らしながら微笑む、貞子が吠えた
「集会よ!!成宮北斗を政界に送り出す、大規模集会を開くわよ!!」
「お久しぶりです!報道田法堂です!周防町の皆さんの代表として、本日は周防町の町議会選で成宮候補陣営にお邪魔しています!」
選挙事務所の直哉が設置した薄型モニターの中で「報道田法堂」が、唾を飛ばして喋っているのをみんなで見守る
「今回の久保谷スタジアムの成宮北斗候補者の、大規模集会で私が最も注目しているのは、若者の政治参加を後押ししていることです!この腐敗した日本のどうしても変えられない、政治党団体から国民の幸福になる権利を取り戻すには、次世代の人々が立ち上がり戦いに加わる必要がありますっっ!!」
報道田の瞳に炎が燃え上がる、テレビの左上の見出しには「2024年周防町の選挙区が熱い」と出ている
「なんか・・・報道田いつにも増して熱いな」
「そうだね~ 」
直哉と信夫がモニターを見ながら言う、ライブ映像の中で、報道田が今回のメインの、メンバーを紹介した
「こちらにどうぞ成宮陣営、学生ボランティアの皆さんで~す」
「おっ!」
パチパチパチッ「出た~~~!!」
信夫達選挙事務所にいる人達が拍手喝采する、後ろで学生ボランティアの子達が照れながらも、直哉達の隣に来て一緒にニュースを見る
大きなテロップを持った北斗陣営の青のポロシャツを着た、学生ボランティアの男の子達三名と、なんと真ん中に明が立っている、そして明も子供用の~淡路の風~ポロシャツを着ている
「僕達~成宮北斗候補者のボランティアボーイズでぇ~す」
「えっとぉ~〇月〇日に久保谷スタジアムで大規模集会を開きまぁ~す」
「その時に僕達が受付でお迎えしまぁ~す♪」
「しまぁ~す(はぁと)」
最後明がオウム返しに可愛く言う
「JR浜田駅から久保谷スタジアムまでの、シャトルバスが出るよぉ~」
「きてねぇ~」
「きてねぇ~」
「きてねぇ~」
三人ですかさず猫耳のヘアバンドを付けて、両手をヒラヒラ振りながら右へ左へ傾く、何とも可愛い
「明も映ってるけどいいのか?」
「なんで猫耳を付けさせてるんだ?」
「永原さんの指示だよ見映えがするらしい 」
みんなでうんうんと頷きながらモニターを観賞する、さらに報道田が熱く語る
「なんと感動的なんでしょう!この国の未来に希望を与えてくれるのは、彼らのような若者です!だからこそ今回の集会は彼らの考案した若者向けの、催しが沢山組み込まれているそうです、有名なあのミュージシャンのプチフェスもあるそうですよ!!」
「あ・・・永原さんが動いた!」
信夫がスマートフォンを見てそう言った
永原さんがすかさず、この学生選挙ボランティアボーイズの、切り抜きファンアカウントを制作すると、すぐに話題となり、たちまち動画サイトで今日新たな一番人気の投稿になる
さらにそれは数時間であらゆる所に拡散し、たちまち今日のトレンドワードで「#猫耳選挙ボーイズ」とスレットが立てられる
ほぉ~・・・「いつもながら彼女のお手並みは見事だよなぁ~ 」
信夫がスマホを見ながらため息をついて、感心したように首を振る
「そうか?SNSを極めているZ世代こえ~よ・・・彼女達にどんな未来が待ってるんだろうな?」
直哉がぞっとしたような顔つきで肩をすくめる
「ただいま~~」
「6時の放送間に合った?これお土産よ~ 」
そこにハーゲンダッツを手土産に持った、貞子と北斗が帰って来た、わぁ~いと学生ボランティアの子達が、アイスクリームに集まる
決起集会まで残り数日たった、貞子は今回のスタジアムのスポンサーにあの有名な、乳酸飲料の総務に話を付け、約2000本のドリンクを無料配布してもらるようになった
これもすべて琴子パワーだ、この数日間貞子は琴子のリストの人物に、せっせと支持を求めてアポイントを取っている
琴子リストに上がっている代表達は表立ってはいないものの、某観光大手バス会社などは使っていない、街宣カーや北斗のラッピングバスを心地よく貸してくれた
しかし鬼龍院も頑張っているみたいで、彼のオンライン版の(サロン)には、登録者が1万人を超えたという情報も入ってきている
そのオンラインサロンに入ると様々な、特典が付いてくるらしく、鬼龍院が当選した暁には何か特別な施しが、あるのではないかと様々な憶測が飛んでいた
それにしても時々貞子と信夫の方が、政治家の脳をしていると思えることが北斗はあった、特に信夫は高速かつ一度に多方面のことを処理できる
しかし二人に言わせてみれば、政治家は「人柄」が命だそうだ
そしてその良い人柄を政治家脳がブレーンとして支える、それがベストだと言い張る信夫を見て北斗が笑う
どっちみち自分は人材に恵まれていると、北斗は多くの人に感謝せずにはいられなかった