怖い、まただ…………
※※※
あれは多分、東京での夏合宿が終わった頃ぐらいだった。東京では色々あったけど、音駒のトサカヘッドとリエーフと強豪校の梟谷の人達とかと3対3のゲームもしたし、すごく楽しかったことを覚えてる。夏合宿が終わってから数日後、俺の携帯に知らないアドレスからメッセージが何個も送られてくることが多くなった。最初の方はちゃんと見てたけど(誰だか知らないから返さなかった)次第に内容が怖くなってって、メッセージを見るのさえ怖くなって…メッセージを無視してからは電話が来るようになったもちろん知らない人から。何回か電話に出たことがあったけど、雑音がするだけであと他は何も聞こえない。それもあのメッセージのやつの仕業だってすぐわかった。メッセージと電話に怯えてたら今度は手紙が届くようになった。手紙にはハートのシールが貼っていて、中身は、鳥肌が立つほどの内容だった。
「日向翔陽さんへ、なんで最近電話やメールを無視するの??俺はこんなにも日向のことを愛しているのに、メールでも伝えたよね??俺が日向のこと愛してるってこと。でも大丈夫だよ、俺はこの先もずっと日向のことだけ見てるからね、」
ゾワッて背中が痒くなって、視界がボヤけたのがわかった。
「ひぃっ…や、な、んで……俺の名前…とか、家…知ってんだよ…」
こんなこと誰かに言えるはずもなくて、ただただメッセージと電話と手紙に怯えるだけだった。みんなに
「最近日向大丈夫か?元気なくね?」
みたいなことを言われることも増えた。それでもみんなをあいつのことで巻き込みたくないから何も言わないでおいた。だって何しでかすか分からないじゃんもしかしたら俺のせいでみんながあいつに殺されるかもしれない、俺も殺されるかもしれない…けど、みんなを巻き込むぐらいなら……俺が我慢すればいいんだ
そう思ってずっとずっと怯えながら我慢してきた
そんで今日気分転換に研磨に遊びに誘われて東京まで一人で(先輩たちに色々教えて貰った)来た。が、運悪く俺が東京に着いた頃ぐらいに研磨からメッセージが届いた
「えっ、風邪引いた??えぇっ!まじか!じゃあ遊べないのか………お見舞い、も行きたいけど研磨に来るなって言われてるし…どうしよう、もう東京ついちゃったよ…」
研磨からのメッセージの内容は研磨が風邪を引いたって事だった。お見舞いに行こうと考えたがその考えは相手には読まれており「絶対にお見舞い来ないでね、翔陽にうつしたくないから」と言われてしまった。心配になりながらも迷惑もかけたくないからその言葉に従うことにした。
「って言っても…ホントどうしよ、俺東京わからねーしなぁ…」
頭を悩ませてると後ろからある人に声をかけられて振り向いた。後ろにいたのは黒髪で背は180はあるつり目の先輩、赤葦さんだった。赤葦さんは夏合宿で仲良くして沢山トスもくれたいい人。赤葦さんも俺が振り向いたのを見たら嬉しそうに微笑んでくれた。
「日向、だよね?なんでここにいるの?」
「あっ赤葦さん!それが…研磨のとこに遊びに行こうと思ったら研磨風邪ひいちゃって…お見舞いにも来るなって言われたから今からどーしようかな…って」
「それなら俺も暇だから、俺の家来ない?ここから近いし」
赤葦さんに理由を聞かれ、俺なりにわかりやすく説明すると器のデカい赤葦さんは俺の事を家に招いてくれた
「えっいいんですか?!」
俺があからさまに興奮を示すと赤葦さんも嬉しそうに
「夏合宿以来話してなかったし、さっきも言った通り俺も暇だからさ。全然いいよ」
とそう言ってくれた。赤葦さんはやっぱり優しい人なんだなーと思いつつもそれに遠慮せず甘えることに。
赤葦さんの後ろでついて行こうと思ったら赤葦さんが手招きするのでそちらに向かう。そしたら、赤葦さんが俺の左手を取り手を繋いできた。
「うへぁ?!?!えっ、えっあ、あかあしさっ?!」
「後ろに居たらはぐれちゃうだろ?人も多いし、迷子にならないように。……嫌だった?」
俺がつい手を振り解こうとすると赤葦さんがまた手をギュッと握ってきて俺の方を見てくる。首を少し傾げながらこっちの様子を伺うような赤葦さんはなんだか可愛くて胸がキュッとした。赤葦さんそれはずるいですっ!なんだか子供扱いされてる気がしたけど、はぐれるのも嫌だし迷子も嫌だから仕方なく!!仕方なくだかんな!!手を繋いだまま赤葦さんの家に向かうことにした。
赤葦さんの家に向かう途中に、嫌な視線がしてまさかあいつがここまで着いてきたのか?と不安になった俺は、視線がする方向を震えながらも見ることにしたするとそこに居たのは、嬉しそうに俺を見つめる赤葦さんだけだった。
あぁ…なんだ赤葦さんか、さっきのは気の所為だったんだな。最近怖いことが起きすぎて俺敏感になりすぎちゃってるのかも…じいしきかじょう?って奴だよな、気をつけなきゃ……
なんだかちょっとモヤモヤしたまま、気の所為だと考え、また足を進めた。
「おっおおっ、お邪魔しましゅっっ!!!」
「ふふっそんな固くならなくていいよ。今親いないし、ゆっくりしていいからね」
赤葦さんのお家に入ると急に緊張してきてつい噛んでしまった。やべ、すげぇ恥ずかしい。しかも赤葦さんに笑われちゃった。もう生きていけない
そんなことぐるぐる考えてたら、赤葦さんが
「……なんか日向元気ないよね、どうした?なんか嫌なことでもあった?」
と俺の嫌なところをついてくるさっき会ったばっかなのに?!?!赤葦さんすげぇ!!って思ってる場合じゃなくて、どうにか抜け出さなくちゃ
「い、いや?別に…な、な…なんでもないっすよ!!」
同級生にでも嘘をつくことに罪悪感を感じるのに、先輩に、しかも今からお世話になる優しい先輩に嘘をつくとなると罪悪感が半端なくて辿々しく答えてしまった。それをセッターの赤葦さんが見逃すわけなくて
「……なんかあるね?なんでも出来るって訳じゃないけど俺が出来ることなら何でもするよ。言ってごらん」
「えっ、あっ…あああっ…あのぉっ!べ、別に!!」
「……なに??言ってみて??」
ぐいっと言わんばかりに赤葦さんの顔が俺の顔に近付いてきてあと少し近づいたらキスできるような距離になった。これは、言わないと離れてくれないやつだ顔中に熱が高まっていくのを合図に俺は限界を感じ全てを話すことにした
「は、話します!話しますから!!一旦離れてくださっ!!」
「……………わかった」
なんだか悲しそうにしながら赤葦さんが俺から離れる。それを見兼ねて俺は全てを話す
全てを話終わったあと俺がちらっと赤葦さんを見れば、赤葦さんが俺を抱きしめてきた
「……へぁっ?!?!?!」
「…怖かったよね、大丈夫だった??こんなに健気で可愛くて優しい日向に誰がこんなこと…もう大丈夫だからね、日向」
「えっあっ、えっ、えぇっ?!」
突然のことに頭が追いつかなかった。今にも倒れそうだ苦しさと恥ずかしさで。
「……今日は俺の家に泊まったら?もうそんなことがないように、俺が見張っててあげるよ、安心して。親なら明後日の昼まで帰ってこないから」
淡々と話をする赤葦さんにやっと俺の意識が戻ってきて、自分の家に帰ることも怖いので赤葦さんの言葉に甘えることにした
「先に俺の部屋行ってていいよ。俺の部屋なら二階上がって右手にあるから」
「わかりました!!!」
赤葦さんはホント優しいな……今度ちゃんと恩を返さなきゃ
俺が背を向ける瞬間赤葦さんがいつもと違う笑みを浮かべていたのはきっと気のせいだろう
※※※※-???side-
夏合宿でであったあの天使に俺は一目で惹かれた。キラキラと輝く笑顔に丸い大きな橙色の目。それを見つめた瞬間があれは絶対手に入れてやる、そう決めた一瞬だった。
夏合宿の間は第3体育館で日向と同じチームになれることが出来た。そのチームに木兎さんがいたのと相手に3人も他の野郎がいたのは気に食わなかったが。俺が日向にトスをあげる度に嬉しそうに笑う日向をみてそんな心が浄化されていく
だが、日向はいつも前だけを見ている人間だ。日向がみているのは俺じゃなく、同じスパイカーの日向の憧れのエースでもある木兎さんや、同じMBの長身な月島、灰羽、レシーブがしなやかでブロックも上手い黒尾さんのことばっか見ている。あの輝いた目で。俺以外の男を
あぁ、早くあの子に俺だけを見てもらわなくちゃ。
夏合宿では特に行動を起こせずそのまま烏野とはお別れになってしまった。だが一ついい点としては日向の連絡先をGETしたことだった。本人から聞けなかったことが残念だが、まぁいいだろう。これさえあれば、なんでも出来る。
烏野と別れてからたった1時間、それだけ経っただけで俺は極度の日向不足に襲われた。合宿の間、就寝する時も日向に会えずにそんなことがあったが、明日また会えるという気持ちで乗り越えれた。でも今となると明日日向には会えない。そう思うと、どんどん会いたい衝動に襲われる。
それならすぐ行動に移せばよいのだが東京と宮城だ、距離があるしお金もかかる高校生にとっては結構な大金だし、そんな頻繁には払えない。なら、日向にメールを送ろう。
何通ものメールを送っても日向からの返信は一切なかった。日向に会えないという最悪な状態でイラついていた俺は、メールに今の思いをふんだんに詰めた。それでも返信をしない日向に痺れを切らした俺は、日向に電話をした
やっと出てくれたことに俺は興奮してしまい声を出すことが出来なかった。
「間違い電話かなー?」そう日向の声が聞こえたあと電話はプツリと名残惜しさの欠片もなく切れてしまった。あぁ、日向の声だ。日向の声が俺の耳に届いてる。もう一度聞きたい。もう1回喋ってくれ
その後何度かけても俺は喋ることが出来ず、次第には電話に出てもらうことすらできなくなってしまった
こうなれば手紙だ。手紙なら読んでくれるだろう
調べに調べた日向の住所に手紙を送り付ける手紙の内容は、一般のラブレターとそう変わらない内容だ。
これを見たら日向はどんな反応をするかな、顔を赤くするかな??あぁ早く会って愛らしい君の顔を見たい。
手紙の返事も一切なく、俺はただ呆然に部屋の中で寝転んでいた。
「……日向の写真、印刷するか」
寂しさに耐えられなくなった俺は、合宿中に盗撮した日向の写真を印刷することコンビニへと足を運んだ
最寄りのコンビニへもうすぐ着きそうだと言う時に、俺の視界にある人が写った。それは俺が今まで何度も会いたいと嘆いてきた最愛の相手だった
なんだか不安そうな顔をしている。何かあったのだろうか、いやなにかなくとも俺は君に話しかける。
声をかけたら、俺の名前を笑いながら呼んでくれた。俺のこと覚えたてくれたんだ
よかった。
すると日向は孤爪と遊ぶ約束をしてたが遊べなくなってしまったことを話した。俺はこんなチャンス逃す訳にも行かないと思い、日向を俺の家へと誘う。
日向は嬉しそうにそして少し照れくさそうにありがとうございます!と言ってきた。
可愛い、俺の日向はなんでこんなに可愛いんだろうか。
俺の家へ向かう前に俺は日向の左手を取り手を繋いだ。日向に何かあった時に俺が守れるようにともし何かあった場合日向が俺のそばから逃げないように。
すると日向は顔をりんごのように真っ赤にさせてあたふたしながら理由に納得し手をぎゅっと柔らかく握ってきた。
俺に対して照れてる君を見て俺の心は浄化されるどころか薄黒く染まるような、そんな気がした。この柔らかい手だけじゃなくもっと日向に触れたい、日向の全てを知り尽くしたい、そんなことを日向を見ながら思っていると日向が震えながら俺の顔を覗いてきた。
何かあったのだろうか?いつもの日向じゃない日向の太陽のような元気がないこれは後で聞くしかないなもしかしたら、どっかの馬の骨が日向を困らせているのかもしれない
日向が家に入るなりに日向は噛みながらお邪魔しますと言う。それに対してまた顔を真っ赤にして俯く。そんな姿も愛らしくて堪らないこのままずっと日向を見ていたいが、さっきのことを思い出し日向に問い詰めると、俺の予想していた通り日向はストーカー行為をされているようだった
俺の日向になんてことを
宛名不明のメールや電話や手紙そんなの怯えて当然だ。いくら日向が可愛いからって許せない
大丈夫、安心して日向俺が君を守るからそんなやつ俺が吹っ飛ばしてあげるからね大丈夫だよ
そう言えば日向は酷く安心したように、俺の事を見て感謝する
あぁやっとこれで日向が俺のものになる俺の可愛い日向。君のそんな困った顔も焦った顔も泣き顔も笑顔も真っ赤な顔も全てが俺のものになる
明日中いや、今日中に、きっと。
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