ゲストの方の呼び方が迷子です……
Gelosiaはイタリア語で「独占欲」
今日は、僕たちMrs. GREEN APPLEにとって初めての冠番組の収録日。スタジオには、今まで感じたことのない高揚感と、ちょっぴり緊張感が漂っていた。
進行役の陣内さんが場を和ませてくれて、トークも滑らかに進む。元貴がアイドルグループの子との匂わせ疑惑の真相を明るく話して盛り上げたり、ゲストの曲でコラボしたりと、まだ慣れない冠番組という空気の中で、戸惑いながらもすごく楽しかった。
今日のゲストの一人で、こっちのけんとさんとのトーク中に彼が近々結婚式を控えていて、入場曲選びに悩んでいるという話題になった。
話の流れで僕たちの曲で入場シーンを試してみることになって、相手役にはなぜか僕が選ばれちゃって。
「俺が一番カワイイかぁ」なんて、半分冗談で言いながら、けんとさんとセットの前に出てお互い自然と腕を組む。
「それでは、新郎新婦の入場です」
陣さんのフリで曲が流れだし、一歩また一歩とバージンロードを本当に歩いているかのようにゆっくり歩いていく。
共演者のみんなから「かわいい!」って歓声が上がって、もっとそれらしくしなきゃと幸せそうな顔を作ってけんとさんに向けた。
「ドキドキする、けんと」「やっと結婚式できるね」なんて二人で微笑みあって、現場の空気は最高潮に盛り上がった。
やってみると思ったより楽しくて、僕は若井の反応を見るのを忘れていた。やがて曲が止まり、僕たちは同時に立ち止まる。
ふう、ちょっと緊張したけど、楽しかった!
でもバラエティだし、もうちょっと盛り上げたほうがいいのかな?
そう思った僕はくるりと体の向きを変えて、けんとさんに顔を近づけた。
これは、完全にアドリブだ。視聴者には見えないようにキス顔を作り、けんとさんとの間に少しだけ角度をつけて、キスを迫るような動作をして見せた。
みんながさらに盛り上がってくれたことに満足して席に戻る。
まさかこの行動があんなことになるなんて、この時は思いもしなかったんだ。
全ての収録が終わり楽屋に戻った瞬間、スタッフさんたちににこやかに挨拶していた若井の顔から完全に笑顔が消えた。
「いっ……」
若井が急に僕の手首を掴み、痛いくらいの力で自分の元へと強く引き寄せたことに驚く。こんなに乱暴にされたこと、今までなかったから。
「涼ちゃん。今日、俺の家に直行ね」
若井は僕に顔を向けず、低い、抑揚のない声でそう告げた。
僕が「え…?」と若井を横顔を見上げると、眉を寄せて険しい顔をしている。手首を掴んだまま、マネージャーに聞こえないように、けれど有無を言わせぬトーンで囁かれた。
「俺の車で連れて帰るから、早く荷物まとめて」
何だろうこの雰囲気。何か怒ってる?どうして若井が怒っているのか分からないけど、これ以上拗らせないようにしたほうがいいよね。
そう考えた僕は「……わかった」とおとなしく帰る準備を始めた。
若井はマネージャーに「一緒に買い物に行くから」と僕の送迎を断り、元貴には「またな」と短く挨拶をする。
僕が半ば引っ張られる形で楽屋を出ていく直前、僕たちの関係を知っている元貴が何かを察したような顔で、「りょうちゃん、頑張って」とエールを送ってくれたのが聞こえた。
若井の愛車の中は、僕にとって地獄のような静寂に包まれていた。
エンジン音とウィンカーの音だけが、重苦しい空気を切り裂いている。
僕は、隣に座る彼の横顔を、何度もそっと盗み見たけれど、彼は無言でハンドルを握りしめ、前だけを見つめている。
怒っているのは分かっているけど、何に対して怒っているのか、本当にさっぱりわからなくて。
これまでも軽い言い合いくらいはあったけど、こんなに不機嫌な若井を見るのは、付き合って初めてかもしれない。
僕は不安で胸がいっぱいになりながらも、ひたすら車内の重い沈黙に耐えるしかなかった。
マンションに着き、エレベーターで部屋まで上がっても、言葉はない。
玄関で靴を脱ぐとき、「ただいま」と小さく呟く。いつもなら「おかえり」と言ってくれるのに、今日は返事をくれない。
無言のまま順番に手洗いとうがいを済ませてリビングに入り、若井が何も言わずにソファに腰を下ろすと、僕は意を決して彼の隣にそっと座った。
「あの…若井。ねぇ、どうしたの?僕何かした?」
僕が震える声で尋ねると、若井は僕から目をそらしたまましばらく答えなかった。やがてため息をつき、やっと僕の方を向いてくれる。
「何かあった、じゃないよね。涼ちゃん、あれ何?」
「え…?あれって?」僕は戸惑った。
「収録で、けんとさんと、ずいぶん楽しそうだったよね」
僕はきょとんとして彼を見た。
「だって、あれは僕が選ばれたから…仕事なんだから、ちゃんと嬉しそうにしなきゃって…」
「分かってる。仕事なのはちゃんと分かってる!」
若井の声がだんだん荒くなっていく。
「俺だって、仕事だからその後も笑顔でちゃんとやったよ。でもね、涼ちゃん」
彼は僕の肩を強く掴み、真っ直ぐに僕の瞳を見つめた。
「俺の目の前で、他の男と腕を組んであんなに幸せそうな顔、しないで」
僕は、若井の言葉に息を呑んだ。
「若井、だからあれは仕事…」
「分かってるって!!」
僕の言葉をさえぎって怒鳴った若井の大声に、無意識に僕の肩がびくっと震えた。すっと体から血の気が引いて、目にじわっと涙が浮かぶ。
こんな風に怒鳴る若井見たことない……怖い。
こらえきれなくなった涙が頬を伝う。
僕の涙を見た若井は、すぐにハッとした顔をして、大きく息を吐いた。
そして手を伸ばして僕の涙を指で拭い、絞り出すような声で言った。
「怒鳴ってごめん、怖かったよね」
「……うん、怖かっ、たぁ…」
若井が優しく僕の頭を撫でてくれる。ああ、よかった。いつもの若井だ。
安心したことで涙が止まらなくなってしまったけれど、そんな僕を若井はあやすように背中をぽんぽん、と叩きながら泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
「落ち着いた?」
「ん、もう大丈夫。ごめんね……」
僕から体を話した若井は、本当に泣き止んだか確かめるように僕の顔を覗き込んで、大きな両手で僕の頬を包み込む。
血の気が引いて冷え切った体に、少しずつ体温が戻って来た。
若井の手は温かくて、この手に包まれているだけで安心する。
「あのね、俺、涼ちゃんがけんとさんと楽しそうに腕組んで歩いてるのすごく悔しかった。でも、それまではまだよかったんだよ。俺が本当に怒ってるのはその後」
「後……?あっ」
僕は、あの時のアドリブでけんとさんにキスを迫ったことを思い出した。
「あれは…その、なんか、雰囲気で、つい…盛り上がるかなって…」
「雰囲気で、つい…?」
僕の頬を包んだ若井の手にわずかに力がこもる。
あ、まずい。また怒り出しちゃったらどうしよう。
さっきの恐怖を思い出して体がこわばる。
それに気づいたのか若井が「ごめん」と頬から手を放し、今度は僕の両手を握った。
「涼ちゃんさ、キスおねだりするとき自分がどんな顔するかわかってる?ほっぺたピンクに染めてさ、上目遣いで、きゅって唇尖らせて。めちゃくちゃかわいいの!あれ、絶対俺にしか見せちゃダメなやつだからね!?」
若井の言葉に顔がカーッと熱くなった。
僕がいつも若井にどんな顔してるのか具体的に指摘されて、恥ずかしさで頭が真っ白になる。
「お願いだから…俺以外のやつにそんな顔見せないでよ」
若井の顔が泣き出しそうに歪んだ。
僕が軽い気持ちでやったことが、こんなにも若井を苦しめてたなんて……
若井はいつも僕が元貴とそれこそキスしそうな距離でくっついてても、他の人と仲良くお話してても、にこにこして見守ってくれている。
今まで嫉妬してる様子なんて見せたことないし、僕のことそんなに好きじゃないのかも、と不安になることもあるくらい。
だから今回は若井に嫌な思いをさせてしまったけれど、こんなにも強い感情を僕に抱いていてくれたことが分かって、じわりとうれしさがこみ上げる。
うれしいけど、嫌な思いをさせたことはちゃんと謝らなきゃいけないよね。
「ごめんね…若井。若井が嫌な気持ちになってたこと、僕全然気づけなかった…」
泣くつもりはなかったのに、また自然と目から涙がこぼれ落ちる。
「若井にそんな思いをさせたかったわけじゃないの…本当にごめんなさいっ…」
僕が本格的に泣き出すと、若井は慌てて僕を抱き寄せた。
「泣かないで、涼ちゃん。さっきも言ったけど、頭ではちゃんと分かってたんだよ。涼ちゃんは俺のだって、気にするようなことじゃないって。でも、目の前の涼ちゃんがあまりにも綺麗で、幸せそうで、おまけにキス顔まで見せて。それが俺とじゃないって思ったら…感情をコントロールできなくなった」
「ううん…僕が悪かったの。若井の気持ちを考えられなくて…」
僕は彼の胸に顔を埋め、声を震わせた。
「もう二度と、他の人には見せない。絶対に見せないから…」
「ん、そうだね、約束。あの顔を見られるのは、俺だけの特権だから」
彼は僕を少し離し、涙で濡れた頬に優しくキスをしてくれた。
「俺は涼ちゃんの最高の笑顔も、かわいいキス顔も、泣き顔も全部俺のものにしたいんだよ。誰にも渡したくない。涼ちゃんは、俺の世界一大切な宝物なんだから」
若井のストレートな言葉がすごくうれしくて。
僕も自分の気持ちを伝えたかったけど、若井みたいにうまく言葉にできないから。
だから、言葉の代わりに少しでも気持ちが伝わるように、僕は彼の首に腕を回した。
「ありがとう、うれしい。本当にごめんね…若井、愛してる」
「俺もだよ、涼ちゃん。心から愛してる」
優しく微笑んだ若井は、僕の涙を拭った後、そっと僕の唇に自分の唇を重ねた。
「今夜は寝かせないから、覚悟して?」
彼は僕の耳元で囁いた。
若井の囁きに顔が一気に熱くなった僕は、ただ恥ずかしさをごまかすように、彼の肩にぎゅっと顔を押し付けた。
「ふふっ……かわいいね、涼ちゃん」
「……もう、若井のばかッ」
初めての喧嘩を通してお互いの愛を確かめ合った僕たちの夜は、まだ始まったばかりだった。
📺×🍏の第1弾を改めて見返しました。
二人が腕を組んで歩いてるとき、💙さんの顔が心なしかひきつって、目が泳いでるように見えるのは私だけでしょうか。
本当はR-18にしようと思ったのですが、無駄に長くなりそうなのでやめました。
📺×🍏第2弾楽しみですね😊
コメント
6件
私もあのシーンの💙の顔、おんなじように見てたので、このお話、めっちゃ嬉しいです🤝 なんせ好きなボブも💛ちゃんですもんね😘 明日、楽しみですね~💕
初めてコメントさせていただきます✨やきもちでちょっと乱暴な若様、ドキドキしました〜🥰‼️ わたしも第一弾の時にはまだこちらに目覚めてなくて👀今改めて見返すと引きっつってますよね!いちゃつかない!とか言ってましたよね🤭💙💛 続きの🔞も気が向かれたら是非〜笑